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書籍『女性たちの声は、ヒットチャートの外に ~音楽と生きる女性30名の“今”と“姿勢”を探るインタビュー集』

出版社:ソウ・スウィート・パブリッシング
発売日:2023/11/2
単行本:256ページ



内容解説

『ビルボードジャパン』の連載を書籍化
 本著は、アメリカの『Billboard』が、音楽業界に多大な貢献をし、活動を通じて女性たちをエンパワーメントした女性アーティストを表彰する企画『Women In Music』(過去にはビヨンセやマドンナなどが受賞)の日本版の一環として、2022年秋にWebメディア『ビルボードジャパン』でスタートした連載『わたしたちと音楽』を書籍化したものです。
 同連載は「ヒットチャートトップ100の中に女性アーティストが27組しかいないという偏ったジェンダーバランスはなぜ生まれるのか?」という疑問を起点に、その事実をどう捉えるか、どう対応していくべきかなどを、女性アーティスト、音楽業界・エンタメ業界の女性リーダー、世界で活躍する女性クリエイターなど共に考える内容で、今回リリースする書籍版では、連載が開始された2022年9月から2023年9月までの約1年間に登場した方々の中から計30名へのインタビューを書籍用に再編集して掲載しています。

YouTubeやSpotifyのリーダーからトップアーティストまで、30名の女性たちが登場
 登場するのは、ラッパー、バンド、シンガーソングライター、トラックメイカー、YouTuber、アメリカのショウビズシーンを主戦場するダンサーなどさまざまな分野で活躍するアーティストに加え、YouTube(Google)、Spotify、ハヤシインターナショナルプロモーションズといった日本のエンタメビジネス界をリードする企業のマネジメント層の女性、音楽ライターなどを含めた計30名。それぞれの立場からの率直な声を1冊の書籍の中に並べることで、2022〜23年におけるエンタメ界の女性たちの“見えている景色”や“感覚”を浮き彫りにします。

公式サイトより


インタビュー記載アーティスト等(記載順)


 芦澤紀子(Spotify Japan音楽企画推進統括)
 あっこゴリラ
 UA
 eill
 ermhoi
 きゃりーぱみゅぱみゅ
 Sakura Tsuruta
 佐々木舞(YouTube アーティストリレーションズ)
 SCANDAL
 Chelmico
 マナ、ユウキ(CHAI)
 CHARA
 ちゃんみな
 TOMOO
 中島美嘉
 仲條亮子(YouTube日本代表)
 にしな
 林香里(ハヤシインターナショナルプロモーションズ代表取締役)
 ハラミちゃん
 春ねむり
 Maasa Ishihara
 長屋晴子、peppe(緑黄色社会)
 渡辺志保(音楽ライター)
 高嶋直子(Billboard JAPAN編集長)

公式サイトより


レビュー

 着眼点が面白く、手に取りました。
 内容はインタビュー記事が主なため、文字の量は少なめ。
 しかし、音楽業界にて働く女性の今の、そして生の声(それもジェンダーギャップ等に関する見解)を知ることが出来るというのは、とても貴重なのではないでしょうか。
 また個人的には、知らなかったアーティストを複数知る機会にもなり、視野を広げていただきました。
 ※私は邦楽は普段ほぼ聴かない人間なので、本当に学びとなりました

 この10年程の間にジェンダーに関する問題は、次の段階へ向けて大きな一歩を踏み出した感触がありますから、この動きを鈍らせることなく、どんどん前へと進めてゆきたいものです。

 兎に角、読んでいて元気をもらえる一冊でした。


印象に残った言葉たちと、そのアーティストの楽曲紹介

あっこゴリラ
 
真面目な人なのだと思う。歌詞を聴くたびに好感が湧く。
 服のセンスも素敵で、Liveも熱い。
 今日も生きてっぞ~っ!っていうパワーを太陽のように発している人。
 異色のセラピスト。
 っていうか、下に貼った2つ目の動画のトーク部分、めっちゃ笑う🤣
 こういう人がヒットチャートに上がるなら、ヒットチャートを確認するようになるのにな。

 マイノリティがマイノリティでなくなるために大切なのは、当事者じゃない人たちがどう動くかということだと思います。
 (中略)
 当事者ではない人が「これは間違っている」と発言すると、いきなりうるさい学級委員的な扱いになるみたいな、当事者しか発言しちゃいけないというムードが蔓延しているけれど、そんなことない。当事者じゃない人が頑張らないと、世界って変わらないですよ。

本文より

『余裕』

やりきった2月+Live映像



eill
 
本書にて知ったばかりにつき、まだ何も書けないけれど、素敵な曲と歌詞、そして歌声だなぁと。

 自分と向き合い歌詞を書くことで、自分を救ってきた
 (中略)
 自分を削って生まれた歌詞や楽曲はそのときにしか生まれないし、そっと抱きしめたくなるようなリアルな物に仕上がっていたりするんです。今思えば、そうして苦しんでいた頃の自分に、今の私から「そのままでいいんだよ」って言ってあげたいです。

本文より

『フィナーレ』

『片っぽ』


Sakura Tsuruta
 美しく広がりのあるカッコいい音楽を創る人。
 アメリカのバークリー音楽院ではElectronic musicと共に音楽療法も学び、首席で卒業。その後(音楽療法の)臨床経験を積み、その過程にて思うことがあり再びバークリー音楽院に入学しプロダクションとデザインの学科を専攻し……という経歴の持ち主。
 Electronic musicは日本ではイマイチ一般に浸透していませんけれども、世界では大人気のジャンル。
 ビシッと20世紀クラシックを学んでらっしゃったらしく、楽曲はそのどれもが聴き心地良く(音楽療法を学んだ経験も影響しているのではないかと思います)、Electronic musicを普段余り聴かないという方にも、安心しておすすめ出来ます。

 今ラディカルだと捉えられているものが、当たり前になっていく未来のために
 (中略)
 日本では摩擦を生む発言を避けることが良しとされていて、ソーシャルハーモニーを崩さないように、「わきまえて」行動する美徳がありますよね。その場では何も言わなくても、よくよく話を聞いてみると「本当はこう思っているんだよね」と本音が出てきたりする。それに気が付いていろいろな人に話を聞いていくうちに、今の日本の多様性のゴールは最初から全て平等を目指すのではなく、同じ目線から見られるようにマイノリティ側がエキストラで何かをしたり、サポートしてもらうことでもあるかもしれないと思うようになったんです。

本文より

Tsuruta Push 2 Performance

MUSIC SHARE #084 @Red Bull Music Studios Tokyo (インタビュー付き)


春ねむり
 現時点では日本よりも海外での知名度が高い。
 言いたいこと、思っていることを「叫ぶ」、そして「表現する」ことが出来るって、それだけで本当に凄くて、素晴らしいこと。
 しかし考えてみればそれって本来は「当たり前に出来る(してもよい)世界」であるはずなのに、人間社会の多くの場所では、言いたいことも思っていることも内に秘め続けながら生活し、苦しまねばならぬ状況に満ちている。
 しかしインターネットの普及と無料動画サイトの隆盛により、そんな状況を軽やかにスルーし、思いを作品へと昇華して「叫ぶ」アーティストたちが日増しに増えており、それは観ていて本当にワクワクする。
 春ねむりは、この世の不条理の根元の部分にしっかりと気づいていて、その原因を調べ、学んで、考え、表現して、戦って、伝え、時間はかかっても変えてゆこうという本気の意思でもって呼びかけており、そのメッセージを聴く者の心に純度100%で届けるべく歌っている。
 その真っ直ぐでピュアな、本気マジな歌詞と歌唱に、シビれる。

 私にとって春ねむりは、14歳くらいのときに「こういう人が存在して欲しかった」と思っていた人物なんです。だからその人が放棄していたら嫌な責任は何か……それを逆説的に考えて春ねむりの役割を見出し、自分がその仕事を全うするようにしています。

本文より

 歌詞を書き始めたのは、自分がどう感じているのか、何が悲しいのかを言語化して自覚し、把握するためだったと思いますね。最初は言語化できたことがすごく嬉しくて自由になった気がしたのですが、それを続けていくと、「その悲しみや怒りの原因は、私が死ぬまでにはどうにもならないな」と突き付けられることも多くて、「この行為に意味はないけど、それでもやるしかない」という感じになってきています。ただ、大学で哲学を専攻して、人の考えと行為は切り離していいのだと考えるようになり、互いに影響し合うことを知ったので、続けられています。

本文より

 曲を作って発表するのは聞き手に殴りかかるような暴力的な行為だとも思っています。
 「こんなこと知らないほうがいいかもしれないのに」と思いながら、また私も痛い思いをしながら曲を作り、歌詞を書いているんです。痛みを持って、生を実感しているということに近いですね。

本文より

「愛よりたしかなものなんてない / Trust Nothing but Love」


「生きる / Ikiru」


『Riot』


愛と反抗を叫ぶ、日本の音楽の世界的代表 (インタビュー)



本書 公式サイト


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