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「星か獣になる季節」(最果タヒ) 感想
「ぼく」の視点で描かれる、青春の夏。殺人の容疑をかけられたアイドルを救うため、信じがたい行動に出る森下を、じっと近くで眺めている。明らかに異常な彼らの夏に、何故か共感できてしまうのは、丁寧な筆致は勿論のこと、そこに描かれる青春の姿が、現実のそれをあまりに美しく切り取っているからに他ならない。
誰もが正しさと誤りを持ち、時にそれは両立する。誰かが悪になれば、その行いは全て悪行と解釈されるし、どんな仕打ちを受けても当然だと考える。常に誰かを軽蔑して、自分を肯定して生きている。彼らは純粋で、歪だ。いとも簡単に掌を返し、その思考は利己的という他ないだろう。
彼らは正しいし、正しくない。露骨で、醜く、けれど青春のひと時を、美しく輝き生きている。
「星と獣」。そこに込められているのは、青春の抱える美と醜に他ならない。
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