「都内」で最高のみかん狩りをするたった一つの冴えたやり方
断言する。これからの時代は「東京で果物狩り」。これに限る。都会で消耗している場合ではない。都会でこそ潤ってなんぼなんだ。
実は東京の立川でみかん狩りができると知ったのは大学生の頃。それからはなるべく毎年この季節に訪れては、大量のみかんを摂取して爪を黄色くし、季節を力一杯堪能している。
目的地は「小林農園」さん。立川駅からバスで行ける最高の農園で、みかんだけでなくブドウも栽培しているらしい。同じくみかん目的で乗り込んだであろうおばさま方の談笑を横耳に挟みつつバスに乗り込む。
次第に景色が住宅街になっていき、川や山っぽいものも見えてくる。コンビニに広めの駐車場もつき始めた。本当に東京かと思う景色が車窓に映っては消えていく。みかんのために朝ごはんを抜いたので、目に付くご飯屋さんすべてが気になって止まらない。温野菜行きたすぎる。
40分ほど揺られて小林農園さんの最寄りバス停である「中藤」に到着(「なかとう」と読むらしい)。一緒に降りたおばあさんが道すがらに、今年のみかんは甘くてかなりに賑わっていることを教えてくれた。もしや関係者か?
そのまま一緒に畑に向かうと思いきや、うどん屋さんに吸い込まれて消えた。朝ごはん食べにきてたのね。
みかん狩りシーズンということもあって、すでに狩り終えた人ともすれ違う。パンッパンに袋に詰めているじゃん。これもしかして乗り遅れたじゃ……? 一抹の不安を感じつつも農園に向かう坂道をゆったり登った。
見栄を張らずにいえば、ゆったりというか牛歩に近い。のしのし。運動不足がここにきて出ている。僅かな坂道でさえ息が荒くなってしまうとは……。これまた別のおばさま方と坂道大変ですね〜あんたまだ早いわよ〜など話しながら到着。
着いたらまず受付へ。みかん狩りの代金として700円を支払ったら、カゴとハサミと皮を捨てる用の袋をもらう。この際に初心者さんはみかん狩りの仕方を教えてもらうこともできるが、こちとら経験者なのでチュートリアルはスキップ。強くてニューゲーム状態だ。
受付を進んだらいよいよみかん畑へ。そわそわしてきた。坂の上にある畑からはテンションMAXの子どもの叫び声も聞こえる。先日秩父の実家で聞いた猿の声と一緒だ。27歳、自分も叫んで良いですか?
前日雨が降ったので道はややぬかるんでおり、えっちらおっちら坂を登っていく。湿る道とは反対に、闘志はメラメラとみなぎってきた。この畑のみかんは僕がすべて食い尽くす。そう決めた。
到着! 絶景! 見渡す限り全部みかん。ここに見えるみかんを全部食べていいって本当? 700円で買える最大の喜びは間違いなくこれだ。
最初の一個を吟味しすぎてなかなか選べなかったが、一際輝いて見えたみかんをゲット。取った木はどれも通常のみかんよりも大きいタイプの品種で、はっさくとみかんの中間くらいのサイズだ。
ちゃっと剥いて口に放り込む。すっぱあまみずみずし!! 3つの味センサーが振り切った。これなんですよ、これ。みかん狩りに来たものだけが味わえる幸福。みんなも来るべきだね。
その後は小粒のみかんなども収穫して回る。かなり食べたけど、実感として小粒の方が味がぎゅっとしていて好みだ。あといっぱい食べられるからお得感もある。
剥いて比べてみると品種の違いによるサイズ差は歴然で、この違いまでも楽しめるのがみかん狩りなんだよな〜と改めてニコニコ。
鼻息荒くみかんを収穫していると、ほかの収穫者とすれ違うことが多々ある。木に隠れて見えなかったりするのでちょっと驚くことも(相手も驚いていると思う)。
その際すれ違ったおじさんたちの会話を盗み聞くと、上の方になっているみかんが美味しいらしい。推察するに、太陽の光をかなり浴びているからかも。
見上げるとわさわさと実っており大チャンスなのだが、まったく届かない。180センチの自分でも届かないということは、脚立で取ることを想定したみかんたちなのかな。あんなにはっきりと見えるのに手が届かないなんて。夢と一緒だ。
ひとしきり食べ終えて、厳選みかんも相当数確保もできたので計量に向かう。持ち上げてみるとかなりの重さで推定2.4kgと判断。果たして重さはどれくらいか。
計量は入場時に料金を支払った受付で対応してくれる。めちゃくちゃ手際がよく、みかんシーズンを乗り切る連携プレーが垣間見えた。受付の人の「取りましたね〜」の一言が嬉しい。
今回は2.7kgだった。いや〜惜しい! それにしても収穫しすぎた。食べ切れるだろうか。半分くらいは近くに住む友人たちにお裾分けしようかな。
そのあとは袋に詰めて持ち帰るだけだが、その際ヘタが尖っているとみかん同士が傷ついてしまうとのことで、農園の方にヘタ取りを手伝っていただいた。
しかしこれがまあ早い。ニコニコ話しながら僕の5倍のスピードでヘタを削っていく。見事な手際すぎて写真を撮らせてもらったが、常にブレてしまう速さ。まさしく匠だ。
結果的に通常サイズのレジ袋2つが満杯になるくらいの量になった。今年のみかんはこれで十分かな。赤子のように大切に抱えてバスに乗り込んで帰宅した。
帰る途中で友人に連絡をしみかんをお裾分け。家がそこそこ近いとこういったことができて嬉しい。田舎だとよくあることも、東京で実践すると非日常イベントのようで面白いな。
「対面してお裾分け」という行為は、東京に住む若者こそより楽しめるイベントになってきているのかもしれない。