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ワンナイト男からストーカーされて引っ越した話

久々に、以前住んでいた場所に行く機会があった。
懐かしくてふらっと散歩していたら、ふと、思い出した。
2年前、都内に程近い場所で一人暮らしをしていたときのこと。


夏のある日、働いてたガールズバーから終電で帰っていたとき。
家までの大通り沿いを歩いていたら、同年代の男の人に声を掛けられた。
「ドンキの場所、わかりますか?」
近くにはドンキがある。
「携帯の充電切れちゃって、調べられなくて」
と彼は言った。
家は近いからすぐに帰れるし、特に急いでるわけでもなかったので、ドンキまで案内することにした。

悪い人ではなさそうだった。
話しやすく感じのいい人で、色々話している中で、彼は2つ年上の大学院生だと知った。
ドンキに着いて別れようとしたら、彼は言った。
「よかったら、一緒にドンキ回らない?」
こんなダサいナンパ文句は初めてだ、と思ったけど、別に先を急いでるわけでもなかったので、何を思ったのか、私は一緒にドンキに入ることに決めた。

彼はムラシャンを買いたいと言うので整髪コーナーに行ったのだけど、結局お目当ての物はなくて買わなかった。
そのあと、色々話しながらふらーっと全体を回って、
「お酒買って軽く飲まない?」と彼が言うので、じゃあちょっと飲むか〜、という感じでお酒を買って店を出た。

近くの川沿いの土手に座り、色んな話をした。
そして辺りが明るくなり始めた頃、
「LINE交換したいんだけど」と彼が言い出した。
お互いに色んな話をしたし、特に違和感もなかったので、いいよ、と言ったけど、そういえばこの人、携帯の充電切れてたじゃん、って。
すると彼が「ちょっとだけ充電したいから、うち近いんだけど、一緒に来てくれない?」と。
まあ、充電し始めて電源つくまでってそんなに時間かかんないよな、と考えて、仕方なく着いていくことにした。

家まで着いていくと、なんと自分ちと川を挟んで目と鼻の先だったことが発覚。
家の場所は教えていないけど、思わず「ちかっ」と言ってしまった。
そういえば、こんなに家近いのにどうしてドンキの場所を知らなかったのか?と思い聞いてみると、引っ越してきたばかりだから、とのこと。

私は充電できるまでの間だけね、と釘を刺して彼の家に上がり込んだ。
そして本当にそのつもりだったのだけど、うまーく流されて身体を許してしまったのだ。


それっきり、自ら連絡を取ることも家に行くこともなかったが、なぜだか駅周辺で偶然に会うことが増えた。

最初は、本当に偶然だと思っていた。
家が近いわけだし、当然最寄りが一緒なので会うのもおかしくはない、と。
しかしそれが偶然じゃなかった、ということに暫くして気付くことになる。


はじめに出会った日から1ヶ月ほど経ったある日。
いつも通りガールズバーに出勤し、その日も終電で帰ってきていた。
駅から徒歩10分ほどの家まで歩いていたら、いつも通る道の途中にある、大きなマンションの前に、見覚えのある顔が立っていた。
なんと、彼だったのだ。
思い返せば彼のことは、この1ヶ月の間に5.6回ほど見掛けていた。明らかに多すぎた。

逃げようかと思ったけど、もう引き返すと不自然な場所まで来てしまっていた。
仕方なく、少し俯きながら気付いていないふりをして、足早に前を通り過ぎた。
すると、彼が後ろから付けてくる気配がした。
そしてなぜか彼は、一度私を通り過ぎて、あたかもたまたますれ違ったかのように、戻って声を掛けてきたのだ。
「え、偶然だね。今日もガルバ帰り?」

平然を装って話した。
するとこの人、なかなか帰ろうとしない。どこまでも着いてくる。
何も買うものなんて無かったけど、「買うものあるから」じゃあね、と言うようにコンビニに向かった。そこにもついてきた。
完全に巻く口実が尽きて、どうしようかと考えてる間にもどこまでも付いてくる。
最終的に、友達から電話が来たフリをして、じゃあここで、と、家とは少し遠い場所で別れた。

そして後日、彼からLINEが届いた。
「大阪のお土産あげるね」
家に帰ると、なんとポストにお土産が入っていた。きっとあのとき、別れたあとも家まで付けてきていたのだ。
さすがにゾッとした。
マンションがわかったとしても、部屋番号までバレるなんて。
それまで、彼との遭遇はたまたまだと思って軽く見ていたのが間違いだった。完全に私が甘かった。


元々、もうそろそろ引っ越そうかと考えていた矢先だった。
もう少しお金が貯まってからと思っていたけど、これを機に、もう引っ越しちゃえ!と決意した。


あの時は気づかなかったけど、今思い返して考えてみれば、不自然な点は初めからいくつかあった。
初めの出会った日。
彼はドンキの場所を聞いて声を掛けてきたけど、よく考えたら、自分で調べられるはずだし、充電がなかったのなら家が近いのだから一度帰ればいい。
というかそもそも、ドンキと同じ通りに彼の家はあった。引っ越してきたばかりだとしても、ドンキの場所を知らないはずがないのだ。

それに気付いて流石に怖くなった。
普段そこまで深く考えずに他人と接している自分にゾッとした。
かといって、人を疑って見るのも嫌だけど。

人を信用しすぎないようにしよう、と心から思った体験だった。

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