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「過去と家族に振り回されながらも友人たちとともに成長する~『さよならクリームソーダ』~」【YA69】

『さよならクリームソーダ』 額賀 澪 作 (文藝春秋)
                           2017.8.7読了
 
今回の“夏”テーマにBGMとして選んだ曲は、ジュリア・フォーダムの「ハッピーエヴァーアフター」です。

 

かつてバブルのころにトレンディドラマの挿入歌として使用され、日本でも大ヒットしました。
浅野ゆう子さんがドラマの中で恋に人間関係に悩んだりするバックで、いい感じで流れていたように思います。
でもこの曲、実は当時の南アフリカでのアパルトヘイト政策に抗議する内容になっているとのことです。  (ブログ「まいにちポップス」さん参考)
 
まさかドラマを観てこの曲を聴きながら恋愛感情に揺さぶられているのに、実は人権問題をはらんでいたとは考えも及びませんでした。
しかしそもそもこの曲を書き始めた頃の彼女も、恋愛の歌として構想を練っていたらしいです。
そうするとドラマに採用されたのも、当たらずとも遠からず、というところでしょうか。
 
ドラマは春から夏への期間で放映されたようで、気分が“夏”というわけで今回の夏ソングとして選びました。
曲調としてけだるい感じのリズムテンポと当時の浅野ゆう子さんの美しさが脳裏によみがえります。

今回紹介する本の内容は、曲ともドラマとも全く関係ありません。

美大1年の友親と先輩の若菜(男性)は同じボロアパートに住んでいます。

同じアパートのよしみでと、友親の人間性を買ってお金を貸してくれた若菜は、イケメンで油絵も上手く料理上手でみんなから慕われているという完璧人間です。
しかし、そういう若菜に対して友親はどこか影を感じてしまっていました。
 
若菜には、高校生のときに運命的に出会いそして別れた女の子ヨシキの存在がいつまでも大きく影響しており、その先には実家の新しい家族を“受け入れられない”という問題がその“影”の中に潜んでいたのです。
 
そして、似たような境遇を持つ友親。
若葉とは逆に新しい家族を“受け入れよう”として必死の友親は、そんな友親に抗う義姉によって、大きな過去を引きずらざるを得なくなっていました…。

思春期に起きた大きな出来事で、その後の生き方を模索するふたりの主人公。
 
楽しい大学生活の中で知り合う新しい人々とともに成長していく友親と、友親と出会ったことで新たな人生を見つける若菜。
 
 
浮足立っていてでも将来の自分ををどうにかして見出そうとする、大人でも子どもでもないほろ苦い時期。
 
ここに描かれているような家族像には、自分としては経験がないだけにあまり理解することができないにしても、青春時代の一場面としては、悩み迷い若いゆえの葛藤などが共感できるお話になっています。
優れたヤングアダルト小説ではないでしょうか。
 


 

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