「祖父が語る人生の苦悩、そして生き抜く責務を教えられる~『ナゲキバト』~」【YA㊳】
タイトル画像: edbo23によるPixabayから
『ナゲキバト』 ラリー・バークダル 作 片岡 しのぶ 訳 (あすなろ書房)
2005.9.16読了
主人公が9歳の少年のお話ですが、すごく深く考えさせられる本でした。
時は1959年、両親を交通事故でなくした少年ハニバルは、やはり連れ合いを先になくした祖父ポップといっしょにアメリカ・アイダホ州のボイジで暮らすことになりました。
まだ9歳という幼い年齢で両親をなくしたハニバルの心の寂しさを埋めるかのように、ポップはいつでもやさしく、おもしろい話をたくさん聞かせてくれました。
ハニバルが何か失敗をしても、それをむやみに叱り飛ばしたりせず自ら悟るように言い聞かせたり、体験で学ばせるのが上手でした。
嘘をつくようなことをハニバルが覚えても、それがどんなに人を愚かにするかを、ずしりと重みのある説得力のある言葉で話をしてくれ、少年の小さな心にも感じ取れるほどでした。
だから、こんなに大きな心で自分を暖かく包んでくれるポップを、悲しませたりがっかりさせたりするようなことはしたくなかったハニバルでした。
しかし隣に越してきた父子と関わりあううちに、ちょっとした好奇心から大変な事件に巻き込まれてしまったハニバル。
なんとか事件の被害は最小限におさまりましたが、そのことを引き起こした自分が情けなく、怖く、不安で仕方ないと嘆くハニバルに祖父は一つのお話を語って聞かせるのでした。
それは、祖父ポップが広い穏やかな心の持ち主であり続ける、いやそういう風に人生を歩き続けなければならない彼の原点ともいえるお話だったのです・・・。
ナゲキバト(英語名”The Mourning Dove”)とは、この物語にも出てくる鳥の名前で、由来はその鳴き声がまるで嘆くような哀しげな声を出すことからきているといいます。
自分の過ちで、ある二つのもののうち、一つだけしか死から助けることができない時、どちらか選ばなければならないという苦しい選択を強いられた時、人は見捨てなければならなかった方にどういう心を投げかけてあげられるか。その先自分はどういう生き方をすべきか、生きる意味を静かに訴えるような物語です。
この本を読んだ当時私の上の子どもも9歳。
何か9歳という年齢は大人ではないけれど、もう大人と真剣に対等に話をすることができる年齢で、これから先の正しい生き方を、教える側がきちんと教えてあげれば自分の判断で間違えずに歩んでいける年齢なんですね。
人は失敗から様々なことを学んでいきます。
ハニバルの祖父のように果たして、なすべきことをやれる親でいられたのかどうか不安ですが、やるだけのことを誠意をもって子どもと歩いていけたのかなと思っています。
とても静かな感動が味わえる本です。
主人公は9歳ですが、中高生向きだと思います。
感じやすい年頃の子たちにぜひとも読んで欲しいですね。
いつも私の拙い読書感想文を読んでいただきありがとうございます。
さて、こんな私にも事務局から賞状が届きました。
ありがとうございます!
先日アップした『ミッシング~森に消えたジョナ』の読書レビューがどうやらスキをたくさんいただけたようです。
もちろん、全体的に見て他に読書レビューを書かれている方たちの多くが、ものすごく掘り下げて書かれているので、浅~い内容を書いている私がこういうものを披露するだけでも恥ずかしいのですが…。
これからもぼちぼちペースでヤングアダルト(YA)作品を海外に限らず紹介していきますので、みなさまぜひお立ち寄りください。
また開設当初から数えて合計してくださった結果、どうやら先週末にスキをこんなに頂いていたようです。
こんなマイナーなページに来ていただいたみなさんから頂いた“スキ”が、ものすごく尊いです。
いつもありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?