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「いつの時代でも大切なものは変わらない~『君たちはどう生きるか』~」【YA63】

『君たちはどう生きるか』 吉野源三郎 著 (ポプラ社)
(漫画版 羽賀翔一 漫画  漫画版&改訂版 出版社:マガジンハウス)
                2018.2.21記録  2023.4.15加筆
 
 
宮崎駿監督の長編アニメの最新作が7月に公開されると聞きました。
アニメ『風立ちぬ』を製作後、もう長編は作らないと豪語されていたはずです。
短編アニメなどは、ジブリ美術館での上映用に作られていたようですが、本格的長編アニメに再び手を付けられるに至った心境の変化は、いったいどういうものだったのでしょうか。

監督にそこまでの思いを引き出させてしまった本書。
しかし映画のタイトルはそのまま『君たちはどう生きるか』とのことですが、数年前に改訂版と漫画版が出版されてかなり話題になった本書とはどうやら内容が違うそうで、吉野源三郎さんの文章にインスパイアされた宮崎監督が独自のストーリーで描かれるものだそうです。その他には全く情報がなく、公開まで期待が膨らみます。


私が読んだのがポプラポケット文庫のもので(かつては岩波文庫から出たらしい)、いまだロングセラー本として名を連ねる名作です。


実は私が読んだのは2017年の秋頃。話題になり始めた頃でした。
当時図書館にはすでにポプラポケット文庫のものが置いてあったのでこれを読みましたが、やはり一番話題になったのはその後2018年に出た漫画版。
もちろん読みやすさもあるのでしょうが、この表紙のコペル君のアップの顔が相当印象に残りますね。
漫画版が非常に秀逸らしく、今更ですが読みたいと感じました。


ポプラポケット文庫版を読んだ限りは、戦前の1937年に書かれたものゆえ表現などがやや古い感じを受けるので、改訂版は現代風に書き換えられているのかもしれません。(そっちは読んでないからわからないのです^^;)
 
きちんと読み比べた殊勝な方によると、あまり内容に違いはなく仮名遣いなどが読みやすくなっているだけとのこと。


とにかく、私が読んで感じたことを書かないことには読書感想文にはなりませんね。
小学校高学年が適齢の対象の児童書ではありますが、それ以上の年齢の子どもたちにも読んで欲しい内容ですので、YA(ヤングアダルト)本に入れました。

“コペル君”というのは、叔父さんが主人公につけてくれたニックネームです。
 
ある日叔父さんと出かけた街のデパートの屋上で眺めた風景から様々なことを考えていくうちに、世の中の仕組みについて気づいたことがでてきたコペル君。
そのことをコペル君が話すと叔父さんは、何事も疑問を持ちそのことについてよく知ろうという気持ちが大事だと言ってくれるのです。
 
昔の偉大な科学者コペルニクスも、誰も気づかなかったことに注目して真実を探り当てたところから、叔父さんはそれをもじって彼のことを“コペル君”と呼ぶようになったのでした。
 
まだ小さかった頃、コペル君のお父さんが亡くなるときにコペル君のことを、りっぱなおとなになるように見守ってほしいと頼まれた叔父さんは、コペル君が疑問に思ったことや、悩みなどに的確な答えを与えてくれ、正しい方向に導いてくれるのです。
(この叔父さんが、そもそもとても素敵な人ですね)
 
友達の家庭環境を知ることによって、社会の多様性、誰もが一生懸命に生きていること、その平等に生きる権利が誰にもあること、人への思いやりの大事さなどを理解していくコペル君。
 
しかし事件は突然やってきました。
校庭で友人らみんなとやっていた雪合戦で、コペル君はある重大な過ちを犯してしまいます。
 
後悔し悩むコペル君に叔父さんは丁寧に、過ちを犯したあと人はどういう行動をとるべきかを教えてくれるのでした。
 
 
 
時代は変わっても、普遍的な人としての生き方を教えてくれる内容の本です。
生きていくうえで人として何が大事なのか。
哲学的なモノの考え方を、丁寧にやさしく教えてくれます。

コペル君のように、様々なことで悩む人たちの指針となってくれるのかもしれません。
 
不朽の名作であり、子どもたちにはぜひ思春期のうちに読んで欲しいと思います。
 
それから宮崎監督がどういう描き方でこのテーマを料理してくれるのか、とても期待大です。
 
7月が待ち遠しいですね。
 

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