あの奇人変人コンビを思い出す
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仮想儀礼(上・下)
篠田節子
新潮社(新潮文庫)
この「仮想儀礼」は、何度読んでも面白い。勝手ながら個人的「無人島に持っていきたいベスト10」を決めるなら、この2冊は、必ずランクインさせてやる、とまで思ってしまう魅力的な2冊。
●あの前野・井沢を彷彿とさせる
簡潔に言えば、ニセ教団の設立から終焉までを歩んだ2人の大人のおっさんを描いている。頭の中に浮かぶイメージは、テレビアニメ化もされた漫画「行け!稲中卓球部」の奇人変人コンビの、前野・井沢のコンビ。
●そこで、前野・井沢の基礎知識
この漫画で、この二人は、豪華な家庭の養子になって一攫千金を目指したり、ただ女子生徒のおっぱいを観たいが為に校内の健康診断にヤブ医者として潜入したり、アウトレイジな事をする中学2年生の二人組。
●とにかく腐れ縁な2人なんです。
私の脳内で勝手にこの2人を彷彿とさせる。
公務員を辞してゲーム作家に転身したが矢先騙されて全てを失う鈴木、と、良い奴なんだけれどもオンナで結局失敗する矢口。
が、ニセ教団つくってみた。そんな悲壮感溢れる二人の夢物語。
●宗教モノの作品のココが 面白い
宗教モノは、私も信教があるので、他の宗教に触れることはあまり好ましくはないことなのだが、ここででてくる全くでたらめな教団「聖心真法会」をビジネスにするその設定だけで、それをおかずにメシが食べられるほどに興味をそそらせる物語。
しかも、この教団は、数千人規模まで信者を獲得していったのだが、その背景には、9.11事件があり、若者の心の拠り所を求めるニーズがあったのだろう。それだけ、作中の時代は、宗教が求められていた時代だったのである。宗教という、ただでさえアンタッチャブル的なテーマに、偽物の創作。面白くないに決まってる。
●奇しくもこのタイミングでした
奇しくもこの本を再読した、2018年。平成最後の年。オウム真理教の麻原彰晃こと、松本智津夫死刑囚の刑が執行された年。それも含めて、宗教について考えさせられるタイミングだったが、こちらは、リラックスして、ニセ教団の栄枯盛衰を楽しんで欲しい。