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意識高い系女子、意識高い系男子
064-069/130
ソロモンの偽証
宮部みゆき
新潮社/新潮文庫
●とにかく超大作です
2018年から2019年の年末年始に読んだのですが、今年の2020年への年またぎにはうってつけの超大作と今から伝えておきます。
古本屋で安値で販売をされていたので購入し再読。もうかれこれ3回目で内容はほぼ頭に入っているのだが、これだけボリューミーな作品を読むだけで、「年末年始によく頑張ったね」と自分で自分を褒めてあげたいと言う気持ちになる。それは、宮部作品としては「模倣犯」に関しても通じるモノがある。
●劇場版はね…残念でした
映画化もされ(興行的には散々な模様であったが)、劇場に前編・後編も通ったほど、映像としての記憶が残っているため、改めて文章を読むことでより鮮明にこの作品の内容が吸収されてきた。
●意識高い系女子
このストーリー全体を通して、主人公・藤野諒子の優等生振りが(個人的には)良い意味で非常に腹が立つ。だって、全て持ってるんだもの、この女の子。人望・美貌・学力・運動神経・両親のステータス・経済的状態の良さ、挙げ出したらキリが無い。こういう全て持ってる意識高い系女子ってどの世界にも必ずんだような。こんな女の子が発起人なら、まずこの作品通してのプロジェクトが失敗することはない。
●意識高い系男子も
はたまた、その彼女がいる上での学校内の大プロジェクトに、この学校の生徒では無い、こちらも意識高い系男子・神原和彦。2019年の今じゃ、プライバシーや防犯上の理由から他校のイベントに参加するなんて、コンプライアンス的にナシなんじゃね、と感じてしまう、大プロジェクトの大ドキュメント。
●そもそもの話は端的に言うと
このプロジェクトを端的に説明すると、城東第3中学校にてとある生徒の自殺、と思われる事件が発生する。けれども、実は、当校の生徒が彼を殺害したのではないかと嫌疑をかけられる。その判断を、学生のみで学校内裁判を行い真相を明らかにする。一見無理なんじゃねーのって思う。
●闇は深いですよ
今回再読して分かったことは、そんな死亡事故が起き、関連して多数の事件が発生し、ついには関連死に至る生徒も生むことになる。そんな構内の彼らが抱えていた闇はとてつもなく深く、暗くてどろどろなものであった。そんな中でアクションを起こした学校内裁判に関連した生徒達に拍手を送りたい。仮に自分なら、そんなの関係ない、高校受験に向けて塾に行き自習室へ向かおう、と他人のふりをしていたであろう。
●この点も醍醐味です
そして、一見暗い物語なのだが、面白い影キャラが沢山出てくる。隠れミッキーを探す感覚も有して、全6冊を読んでみて欲しい。きっと新たな発見がある。