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青春の後ろ姿#14 〜20代は、清志郎と、バイクと、文学以外に何もありませんでした〜白秋全集つづき
『思ひ出』の中で、一番好きな詩があります。
それは「曼珠沙華(ひがんばな)」という詩です。これを初めて読んだときは、こんな詩があることに衝撃でした。何て怪しくて、猥雑で、淫靡で、神聖で、不安で、懐かしく、怖いのだろうと思いました。
地には七本血のやうに 血のやうに
ちやうど、あの児の年の数
というくだりなんかはもう、いろんな意味で震えました。
黙読を許さない。詩が、読む者の口をついて出さずにはいられない、そんな力があるように思います。白秋の詩に触れたとき、詩は朗読なしには成り立たないのではないかと思いました。
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白秋の詩の中で、もうひとつ、好きというか、読んで酔い痴れた詩があります。
それは『東京景物詩及其他』という詩集に所収の「物理学校裏」という詩です。うまく言えませんが、その静謐さ、佇まい。目の前に、物理学校裏の情景が広がります。
詩の起源って、呪文ではないかと思います。
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