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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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2021年10月の記事一覧

第92話:夜空ノムコウ

第92話:夜空ノムコウ

愚話でしかない。

この2月、僕は38歳を迎えた。
間もなく40歳に手が届こうとしていると思うと何か非常に微妙な思いになる。昔、若かりしころは自分が40歳になることなど思ってみたこともなかったし、40歳と言えば全くのオジサンで、自分がその全くのオジサンであるところの40歳になろうとしていることなどおよそ信じることができない。
高校生を相手にしているせいもあって、精神年齢は20歳くらいでストップして

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第207話:セーターの破れが紡ぐ恋

第207話:セーターの破れが紡ぐ恋

僕は男三人兄弟の中に育ち、高校もほとんど男子高のようなところに通ったので、女性とは無縁に育って来てしまった。

子供の頃、淡い異性への憧れがなかったとは言えないが、いわゆる「恋」とかいうものとは無縁で、交際とかデートとかとも縁がなかった。苦手だったとも言えるし、臆病だったとも言える。

大学は国文科だったので100人の中に80人の女子がいて、そういう僕には一種のカルチャーショックだったのだが、女性

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第148話:田舎者

第148話:田舎者

僕は田舎に育ち、全くの田舎者であった。田舎にいるときは自分が田舎者であるという自覚はなかったのだが、東京に出たとき「ああ俺は田舎者であった」と思い知らされたのである。

だいたいそういう場合、まず「ことば」が壁として立ちはだかるのだが、僕の場合もやはり例外ではなく、友達との会話で至って自然に「そうだら」と伊豆弁を丸出しにして、その「だら」を延々とバカにされ続けた。

それだけではない。思えば大学に

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第194話:湯たんぽと猫

第194話:湯たんぽと猫

ここ数年、寄る年波に、夜はカミさんが湯たんぽを入れてくれるようになり、それに頼って寝ている。若い頃はどんなに冷たい布団に入ってもすぐに体温で温まったのに、いつしか靴下を履いて寝なければ寝られないようになり、もはや今は、湯たんぽがなければ眠れない状態にある。

湯たんぽは温かくていい。
が、酒を飲んで正体なく眠る僕は、湯たんぽにずっと足を置いていてもその熱さに体が反応せず、低温火傷になって病院通いを

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第198話:のんびり進路相談

第198話:のんびり進路相談

相談に来たの?
共通テストが志望校のラインに及ばなかった?

そうか、頑張ったのに残念だったね。
それで?二次試験を第一志望でそのまま出願するか変更するかを迷っているから相談に乗って欲しい?

なるほど。

この大学のこの教授の研究室でこれを学びたいっていう思いがあればそのまま行けばいいんじゃない。
それってあるの?
特にはない?
HPは見た?大学は行った?

物理的なことは言ってあげられるんだ。

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第115話:Missing Piece

第115話:Missing Piece

古代ギリシャの喜劇作家にアリストファネスという人がいて、彼は、人がなぜ恋をするのかを考えた。

それによると、かつて人間は手と足が四本ずつあり顔も前後に二つあった。要するに今の人間が二人一緒になった合体人間であったわけである。

その人間のパターンには、男男、男女、女女の三種類があったということなのだが、能力は今の人間の倍、360度見え、八本の手足ですばやく動き、いたずらばかりして困らせていた。

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第132話:宝くじ

第132話:宝くじ

人間には「意志の力では克服できない」ことがある。
そんなことを言うと、カミさんはすぐに「また何かの言い訳?」と嫌な顔をするわけだが、そんな下劣な勘ぐりに走らずに、崇高で哲学的な思いを持って読み進めていただきたい。

例えばこんな問を発してみたい。
あなたは嘗め始めたアメを最後まで噛まずに嘗め切ることができるか?

また、これはどうか。
擦りむいたあとにできたカサブタをいじらすに、自然と治るまでじっ

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第85話:採点

第85話:採点

教員になったばかりのころ、テストの採点は先生というものになった証のようにも思え、ちょっとばかりウキウキした。
思えば長きに渡ってテストというものに苦しめられて来たのであって、自分が逆の立場になったことを自覚し、我ながら意地汚い「うれしさ」を感じていたのかもしれない。

ところが回を追うごとに、億劫になり、年を追うごとに重荷となり、今や完全な苦痛となるに至っている。
年10回の大きなテスト、その他、

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第36話:仁和寺にある法師

第36話:仁和寺にある法師

徒然草に「仁和寺にある法師」という有名な話があるが、これは石清水八幡宮への参拝を年来の夢としていたある法師が、ある時思い立って四里の道を一人で歩いて参拝に出掛けたという話である。

それ自体は別にたいしたことはないのであるが、この法師、実は八幡宮の位置も知らなかったために付属の社だけを拝み、肝腎の八幡宮は拝まずに帰って来てしまう。しかも帰って来て拝んだつもりの八幡宮の様子をあわれがって仲間に披露す

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愛すること

愛すること

こんなメッセージを毎日書いて、教室の後ろの黒板に貼っています。誰も読んでいないかもしれませんが・・。これは、明日用です。よろしければ、目を通してみてください。

第153話:助詞と女子に注意

第153話:助詞と女子に注意

日本語の助詞はたった一字であるのにそれこそ微妙なニュアンスを見事に表すものである。例えば俳句をやる人は17音しかない中で助詞ひとつにも相当に気を使うと言う。

先日、嵐の櫻井君と相葉君が結婚というニュースがあって、
「えっそれって櫻井君と相葉君、二人が結婚したの?」
と、一瞬思った方がいるかもしれない。・・思うはずがない?

部活の練習中に雨が降り出したため、最後に風邪をひかないよう、頭を良く拭く

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第196話:ある日の黒板

第196話:ある日の黒板

12月頃になると授業が問題演習になり、生徒が解答している間は暇なので、黒板にメッセージを書いていました。これはそんなメッセージの一つですが、黒板に書くので次の時間には自動消滅するのですが、生徒が偶然写メして持っていたので残ったものです。

ある日の理数科の授業で、ふと、なぜ国語を学ぶのかという生徒の質問に答えてみようと黒板に書きつけてみました。理系の生徒は、国語に苦手意識を持っている生徒が多く、な

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