本の思い出② 〜本のおじさんがくれたもの〜
子供の頃「本のおじさん」が時おり本をくれた。
母の知人で、よく本をプレゼントしてくれるから
「本のおじさん」と呼んでいた。
会った事はないのでどんな人かは知らない。
最初にもらったのは
ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」だった。
これが面白くて面白くて。
ぐんぐんストーリーに引き込まれて
文字通り寝る間を惜しんで夜明けまでぶっ通しで読んだ。
この本は装丁も素晴らしく、
物語の中で主人公が読んでいる本の装丁とまったく同じ
赤い、艶のある布張りで中央に蛇が型取られていた。
まるで自分が主人公と一冊の本を分け合っている感覚だった。
読了後、興奮しながら「本のおじさん」に
お礼のお手紙を書いたのを覚えている。
そこからどっぷりと本の世界にのめり込んだ。
エンデのモモやゲド戦記、トムソーヤ…
手当たり次第読みあさった。
特に好きだったのは岩波少年文庫。
当時のラインナップはほとんど制覇していると思う。
不思議の国のアリス、ドリトル先生、ふたごのロッテ、飛ぶ教室…。
岩波少年文庫は挿絵も素敵で本の世界に没入できた。
本のおじさんにもらった本は数冊だったけど、
おじさんが本当にくれたのは本の世界への案内状だった。
本のおじさん、まだご存命だろうか。
あなたのおかげで私の世界は広がりました。