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ゆっくりと息をはく

ザボン!!


怖い


溺れる


死ぬ


息できない・・・



すうううううううううううううう



はあああああああああああああああああああああ




すうううううううううううううううう


はああああああ・・・・・・・・



・・・・・・・・







・・・。





よし、だいじょぶだ。



溺れない、死なない、


息できる。



ダイビングでエントリー(水中に入ること)するとき、私はいつもパニックになってしまう。


海に入ってすぐは、慌てて、焦って、呼吸が乱れてしまう。
「やばい息できない死ぬどうしよ助けて!!」って。
慌てれば慌てるほど呼吸が乱れ、余計にパニクってしまう。


でも少しずつ呼吸を整えると、いつしか心まで落ち着いてくる。

深呼吸、深呼吸、と自分に言い聞かせ、
吸って、吐いて、と心の中で言いながら(酸素マスクを口に咥えているから、実際に声に出すことはできない)、

息を吸って、吐く。



水の中ほど、呼吸が大事だと思う場所はない。


ダイビングをしていると、「深呼吸」がいかに大事か思い知らされる。


パニクった時に大事なのは、呼吸じゃなくて「深」呼吸だ。

(だってどんなにパニクってる時も、「呼吸」自体はしてるのだから)

中でも、吸うより「吐く」ほうが大事だ。
意識的に長く吐くと、自然と吸えるようになる。


吸って、吐いて、吸って、吐いて、・・・を意識的に繰り返していると、
いつの間にか心まで落ち着いてくるのだ。


「吸うよりも吐く方を長く。ゆっくり吐いてみて」

インストラクターがそうアドバイスしてくれた。


「長〜く、ゆっくりと吐いてみよう」


ゆっくりと息を吐く。
ゆっくりと。



日常生活で、「呼吸」を意識することは多くない。
だって無意識に「吸ってる」し、無意識に「吐いてる」から。


でも水中だとどうだろう?
地上にいるとき以上に「呼吸」の存在が際立つ。
何も装備をつけていなけりゃ、水の中じゃ呼吸ができない。
ふだん「ある」ものがなくなると、強烈に「ない」と感じるものだ。


「ありがたさ」("有る"ことの"難しさ")を痛感する。


だからこそ、ふだん感じられない、呼吸の「役割」も際立ってくる。


ただ息を吸う、息を吐くというそれだけのことなのに。
1日に何千回としていることなのに。

その「なんでもない」ように思える呼吸が。
少しでも乱れただけで、水中では「死」に直結するのだ。


逆に言うと、少しでも呼吸を整えただけで、
見違えるくらいに精神を落ち着けることができる。


ダイビングをするまで気づかなかった。
呼吸がこんなに大事なんて。



ゆっくりと息を吐く。
この経験をしてから、地上でも意識するようになった。


仕事でパニクった時。
イライラしてしょうがない時。
本当に疲れてどうしようもない時。


私は自分に言い聞かせる。
吸って、吐いて、吸って、吐いて・・・。


ゆっくりと息を吐く。
大丈夫、死なない。

これでまた息が吸えるから。



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