失敗したっていい。言葉を選んだ私がいるから
僕はいつも、言葉を選んでいる。
一言、一言。
慎重に、そっと心の中で転がしながら。
「これで伝わるかな？」
「嫌な気持ちにさせないかな？」
そうやって選んだ言葉たちが、必ずしも正解になるわけじゃない。
失敗は、数え切れないほどあった。
伝えたいことが伝わらなかったり。
言い過ぎて、誰かを傷つけたり。
だから、怖くなる。
また間違えるんじゃないかって。
でも、それでも僕は言葉を選び続ける。
失敗したっていい。
僕は、僕なりに言葉を選んでいるのだから。
ある日、友達とケンカをした。
何気なく言った一言が、相手を傷つけてしまったらしい。
「そんなつもりじゃなかったんだ」と言い訳してみても、もう遅かった。
その夜、何度も考えた。
「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」
「どうしたら伝わったんだろう」
頭の中で、言葉を何度も繰り返す。
言い直せるなら、こう言いたかった。
「ごめん」
たった二文字。
でも、それが言えなかった。
僕は、自分の不器用さが嫌になった。
それから数日後。
「ごめん、あのときのこと……」
話し終わると、友達は少し笑って、こう言った。
「気にしてないよ。でも、ちゃんと言ってくれてありがとう」
心の中が、少し軽くなった気がした。
そして思った。
失敗しても、また選び直せばいいんだって。
僕たちは、みんな不完全だ。
完璧な言葉なんて、どこにもない。
それでも選び続けること。
それが、誰かと向き合うということなのかもしれない。
時には間違える。
伝えたつもりでも、届かないことがある。
だけど、それで終わりじゃない。
僕が言葉を選んだという事実は、どこかで小さな力を持つ。
すぐにではなくても、いつかきっと誰かの心に触れる。
そう信じてみたい。
失敗するたびに、僕は少しずつ学んでいく。
どう伝えたらよかったのか。
どうしたらもっと相手の気持ちを汲めたのか。
その積み重ねが、僕の中に何かを作り上げていく気がするんだ。
それは、心の柔らかさかもしれないし、優しさかもしれない。
あるいは、ただの意地かもしれないけれど。
失敗を恐れずに、言葉を選ぶこと。
それが、僕なりの生き方だと思う。
だから、今日も僕は言葉を探す。
慎重に、そっと転がしながら。
何度も間違えながら。
それでも、誰かとつながりたいと願いながら。
失敗したっていいじゃない。
僕は、僕なりに言葉を選び続けているのだから。
＊
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