見出し画像

20230114 読書メモ 小泉武夫『灰と日本人』・・・読み初めの段階での記録

土曜日の朝。
クリニックへ出かけないときは、電車1本で行くことのできるジュンク堂へ出かけることにしている。
今日も、書棚をぶらぶらと歩いていると、中公文庫の希少本コーナーを見つける。
どうやら、中公文庫でも廃版になり、最後の配本として並んでいるものらしい。
その中から何冊か購入することにしたのだが、そのうちの1冊が小泉武夫著『灰と日本人』なのである。

いやはや、まだ全部読んでいない。
でも、つぶやきでnoteに投稿したのだが、それだけではなんだか考えていることがどんどんとこぼれ落ちそうなので、普通に投稿しておこうと記し始めた。

著者が記した1984年初版の『灰の文化史』という本の内容を改訂し、1998年に出版されたのがこの本。
中公文庫として出版されたのが2019年。
これが、初版になっている。

本にも書かれているが、人類がここまで発達したのは、火を活用できるようになったところが大きいのは間違いない。
現状、便利な世の中を維持するためのライフラインとして、火から得られるエネルギーは欠かせないものなのは間違いない。
「オール電化で電気を使っているから」という家庭があったとしても、その電気を発電するのに、日本の場合は原子力が止まっているところが多い以上、化石燃料を燃やして水を沸かし、タービンで発電しているのだから、火の世話になっていないわけではない。
直接火を用いるか、間接的に用いるかの違いだけ。

そして、火を使う場合に使われる物質といえば炭素。
炭素が酸素と化合して得られるエネルギーは、

C+O2→CO2+97.2kcal

である(ということが一章の最初に書かれている)。

昭和世代の人間は、中学校の理科で熱量を学習する場合は、今のジュールではなく、calで学習したはず。
「1ccの水を1℃上昇させるのに必要な熱量が1cal」と定義されている。
つまり、炭素原子1個と酸素分子1個が化合して、二酸化炭素が作られる際に放出されるエネルギーは、もしそのエネルギーをすべて熱として水を加熱するのに使うことができたと仮定するならば、1Lの水を97.2℃上昇させることができるだけの熱量を得ることができるわけだ。

こんな導入を書かれた日にゃ、理系的思考をくすぐられる。
初めの数ページのうちに、人類がいつぐらいから火を利用し始めたのか、そこから出てくる灰との付き合い、特に日本人はどのように使ってきたのかということが、本当に読みやすく、しかし圧倒的な内容の濃さで書かれている。

こんな本が、希少本で廃版になりそうだなんて、勿体無くて仕方ない。
科学と文化の歴史が融合されているこの本は、もう私的名著決定である。

ページを捲るのが楽しみで仕方ない。
こんな本に出会ったのは、久しぶりだ。
自分の知的好奇心をものすごく満たしてくれる。
ちょっとすごい本に出会ってしまった感がある。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?