ソニーで働く外国籍社員の本音座談会 | International Employees' Experiences at Sony, Japan
(English follows Japanese)
ソニー株式会社では、外国籍の社員がさまざまな職場で活躍しています。本記事では、広報部で社内コミュニケーションを担当しているアメリカ国籍の私、オリビアが、ソニーで働く3人の外国籍社員に、日々の仕事や日本での生活についてどう感じているのか、生の声を聞きました。
今回の記事は、ソニーの広報note初の日・英両方でお届けします。また社内公開時に国内外の社員から寄せられた声や、私自身の気づきについても記事末尾で紹介しています。ぜひ最後までお読みください。
■ 座談会参加メンバーの自己紹介
リー オリビア(広報)
アメリカのシアトル近郊出身で、約5年間日本に住んでいます。日本の地方自治体でJETプログラムの国際交流員として働いた後、現在はソニー広報部で翻訳業務やインターナルコミュニケーションに携わっています。
ドゥブラヴィナ イリーナさん(マーケティングとビジネス)
私の出身はウクライナで、12年間ソニー・ドイツ(ソニーヨーロッパの一拠点)で働いていました。日本で働きたい思いが強く、様々な方法を模索して、1年半前に修士号(MBA)を取得するために来日し、卒業後にソニーに就職しました。2023年の9月よりメタバースのマーケティングとビジネスを担当しています。
周 峻さん(品質保証)
中国出身で、2003年にソニーに入社しました。ソニーにいる20年のうち、日本には12年ほど住んでおり、8年は海外赴任をしていました。現在は、ディスプレイ製品の品質保証のシニアマネジャーとして働いています。
スリ ソラブさん(技術開発研究)
インド出身です。約1年半前に来日してソニーに入社しました。ソニーのシステムエンジニアとして、作業を高速化するためのアルゴリズムの作成やプロトタイプのリスト化を担当しています。
※所属・役職は2023年取材当時
■ 私たちが働くソニーの好きなところ
オリビア:私はET&S(エンタテインメント・テクノロジー&サービス)全領域に関わる広報部門で働いているので、医療からエンタテインメントまで、さまざまなカテゴリーに携わっています。ソニーのテクノロジーが人びとの生活にどう貢献しているかを知ることができ、とても興味深いです。また、グローバル企業なので、さまざまな国籍の人びとと働ける点も魅力です。
イリーナ:私はウクライナで生まれ、テレビも何もない寂しい時代に突然Walkman®とPlayStation®が現れて、両方とも奇跡の商品だと思いました!ソニーで働くのが夢でしたが、住んでいた国には関連会社がなく、販社のあるドイツに引っ越し、大学卒業後すぐにソニー・ドイツに応募しました。
製品に加えて、社内の風通しが良いのも好きな点です。立場関係なくフラットに話し、アイデアを共有できますし、それを非難されることもないオープンな社風をとても気に入っています。
周:私もソニーはとてもオープンで個人の自由が尊重されている会社だと思います。たとえば、服装も日本の職場ではスーツ着用が多いですが、私がソニーでスーツを着たのは1、2回だけです。もう体型が変わって着られなくなってしまいました(笑)。
また、ソニーはグローバル企業なので、世界中の関係者とコミュニケーションを取り、世界で何が起こっているのか、現地の方々が何を考えているのかを知ることができます。
スリ:才能のある方々と一緒に、とても楽しく働いています。インドの先輩から「日本では決まったルールを守らないといけない」と忠告されましたが、実際入社してみると自由に働けると感じました。やりたいことに何でもチャレンジできますし、職場の先輩たちも後押ししてくれます。自分のペースとクリエイティブなビジョンにしたがって働ける柔軟性があり、そうした環境で仕事をするのはエンジニアとして本当に楽しいです。
ソニー(日本)でエンジニアとして働くやりがい(27秒、英語音声、日本語字幕あり)
■ 異なる視点で貢献できた例
オリビア:私は社員向けの英語イントラサイトの運営を行っており、課で唯一の外国籍社員です。たとえば、海外の社員にも伝わるように、記事内で出てくる日本の地理や文化について説明を補う提案を行うなど、コンテンツを工夫しています。
イリーナ:コミュニケーション観点で、海外販社の方々によりわかりやすくストレートにメッセージを伝えられるかなと思います。もちろん、社内に英語を話せる方は多くいますが、日本人は丁寧にあいまいな表現にしてコミュニケーションする傾向があります。ウクライナもドイツもストレートに伝える文化なので、ものごとをありのままに伝えられる点で貢献できていると思います。
周:中国に20年以上住んでいたので、商品企画のアイデアや中国におけるリスクについて意見を求められることが多くあり、自分の意見を共有しています。また、緊急の場合は中国語のネイティブチェックをサポートすることもあります。
スリ:一例としてヘッドマウントディスプレイに関する取り組みでは、顔や目の形、肌の色など日本人とは異なるため、機械学習の被験者として研究開発の初期段階で協力しました。人種問わず、すべての人に向けたモノづくりに貢献できたらいいなと思います。
■ 日本での生活の苦労や楽しみ
オリビア:私は外国籍だからという理由で賃貸契約を断られるなど、物件を探すのが大変でした。また、在留資格の更新も延長期間が担当者によって異なり、苦労したことがあります。
一方、日本で好きな点の1つは豊かな自然です。ソニー入社後、登山部に入部しましたが、活動が活発で、友達を作るのに役立ちました。
周:私も在留資格は5 年間で申請しても、 3 年間しか延長されなかったことがあり、その判断基準がわかりませんでした。
私は日本人のやさしさが印象的です。一例ですが、家族旅行でホテル到着が大幅に遅れた時も、スタッフの方が待っていて夕食を用意してくださるなど、とても親切にしてもらいました。
スリ:異文化に触れ、その文化の人々の考え方を学ぶのも大好きなので、社内外問わずさまざまなコミュニティに参加して、日本人との交流を楽しんでいます。
イリーナ:私が日本を好きになった主な理由はその印象的な美しさです。また、夜一人で外出しても安全だと感じる世界で唯一の場所でもあります。
■ 実は気になる・・・こんな言動
オリビア:ソニーでは、マイクロアグレッション*につながるアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見や思い込み)について、社員の意識を高めようとしています。これには本人が意図していなくても、日本にいる外国人に対する発言が攻撃的に伝わってしまう点も含まれます。たとえば、私は「すごい!箸を使えるの?」、「フォーク持ってきますね」と言われると、アメリカにいた時も箸を使っていたし、日本に5年も住んでいるのに…と、少し嫌だなと思うことがあります。
*アンコンシャス・バイアスが言葉や態度に現れ、否定的なメッセージとなって伝わり、意図せず誰かを傷つけてしまうこと。
イリーナ:お箸の件もそうですが、日本語を話すたびに周囲は好意で褒めてくれますが、間違っているときは遠慮なく指摘してほしいと感じます。日本には社交辞令で褒める文化もあるので、褒めてもらっているのに自信につながらないことが時々あります。
オリビア:外国人は日本語を話せないというイメージがあるので、少しでも話すと皆さん褒めてくれるのかと思います。ただ普通に会話していても、特に初対面の方から「どうやって日本語を勉強したの?」「英語を教えて」と、何度も言語についてばかり聞かれることがあると、普通に趣味の話などもしたいなと思います。
■ 特別扱いせずに接してほしい
オリビア:皆さんは、日本でどのように接してもらえると嬉しいですか?私は「外国人」として注目されたり、特別扱いされるのではなく、同じように公平に扱ってほしいと思っています。
イリーナ:国籍を気にせずに接してもらいたいです。たとえ上司からの厳しいフィードバックであっても、すべての議論に参加したいです。
周:扱いではありませんが、同僚やマネジメントから「ありがとう」と感謝の言葉をかけられるとうれしいです。
スリ:私も努力が認められたり、感謝されたりするとうれしいです。長い一日を終え、上司に報告した時の「頑張ってくれてありがとう」、「お疲れさまでした」という言葉はとてもステキだと思います。
「お疲れさまでした」や「よろしく」~英語にない日本語のすてきな言葉(36秒、英語音声、日本語字幕あり)
■ 多様な文化背景のメンバーと働くうえで重要なこと
周:相手が異なる文化背景を持っているか以上に、相手の立場ややり方で考え、理解しようと努めることが重要だと思います。どの国籍かではなく、一人の人間として向き合い、お互いを理解する姿勢が大切だと思います。
イリーナ:同感です。新しいアイデアを生み出すにはコミュニケーションが鍵となるので、ソニーが革新的であるにはオープンな社風を維持するのがとても大切だと思います。従来のやり方や考え方にこだわらず、ものごとの本質にフォーカスすることで先入観なく前に進むことができると思います。
■ 社員からの声
社内公開時、記事のアンケートでは、国内外の社員からさまざまな感想が寄せられました。その一部をご紹介します。マイクロアグレッションや異文化のメンバーとのコミュニケーションに関する理解にも役立ったという声が多く寄せられました。
また、海外の社員からも、日本で働くことに興味関心を持った、もっと知りたいなどのコメントが多数ありました。
■編集後記
今回のインタビューを通じて、クリエイティブなテクノロジー企業であるソニーにとって、ダイバシティー(多様性)がいかにかけがえのないものであるかを改めて思い知らされました。異国で生活し、働く苦労もありますが、このオープンな文化は、ソニーで外国籍社員として働くことのやりがいのひとつであります。
自分と似た経験をうかがって共感した一方で、新しい気付きも数多くありました。読者の皆さんにとっても、この記事が異文化コミュニケーションや、多様性のある職場の強みについて考えるきっかけになれば幸いです。
(English Version)
International Employees' Experiences at Sony Corporation
Have you ever wondered what it's like to work as an international employee at Sony in Japan? I'm Olivia from Sony Corporation, Corporate Communications, and for this article I interviewed three international employees about working at Sony and the ups and downs of living in Japan, as an American employee myself. The discussion participants' home countries range from China and India to Ukraine and Germany, making for a lively discussion with diverse viewpoints.
■ Self-introductions
Olivia Lee (Corporate Communications)
I'm originally from the U.S. nearby Seattle, but I've been living in Japan for the past 6 years. I initially worked for local government in rural Japan as a Coordinator for International Relations via the JET Programme, but now I've been working at Sony for the past 3 years, where I oversee translation and internal communications.
Iryna Dubravina (Marketing and Business Management)
I'm Ukrainian but I worked at Sony Germany (Sony Europe) for 12 years. While I was working there, I always wanted to work in Japan. After searching for a way to come, I came to Japan for my MBA 2 years ago and reapplied to Sony after graduating. As of September, I rejoined Sony and oversee metaverse marketing and business management.
Jun Zhou (Quality Assurance)
I'm from China, and I joined Sony in 2003, about 20 years ago. I had expatriate experience of about 8 years, so I've lived in Japan for about 12 years. My current job is working as a senior manager in quality assurance for display products.
Suri Sourabh (Research & Development)
I'm from India. I joined Sony around 2 years ago, and I came to Japan at the same time. Currently I'm a systems engineer at Sony and I'm in charge of writing algorithms and listing prototypes to make things work faster.
*This interview was conducted in 2023, and details such as department affiliations/roles may have changed.
■ What we like about working at Sony
Olivia: For me, because I work in the PR department overseeing the whole ET&S (Entertainment, Technology & Services) segment, I enjoy being able to work with multiple categories spanning from medical to entertainment, and so on. I find it intriguing to learn about these technologies and how they contribute to people's lives. I also enjoy working with people from different countries, as it's a very international company.
Iryna: I originally come from Ukraine, and when I was born, we didn't have TV or anything. Then suddenly, the Walkman® and the PlayStation® appeared, and they were such miracle models! It was my dream to work at Sony, but there were no Sony affiliates where I lived. From there, I moved to Germany and applied right away after university.
Besides the products, I also like that the hierarchy is quite flat. I can talk to high-up people, and I feel that Sony has a very open culture, which I really appreciate.
Zhou: It's the same for me; I think Sony is a very open company. For example, everyone wears suits to work in Japan. In Sony, however, I've only needed to wear a suit one or two times. Now I can't even put it on because my body shape changed (laughs). Also, because Sony is a very international company, we have many chances to communicate with worldwide colleagues to know what's happening there and what they think.
Suri: I enjoy working with the genius people around me and feel really lucky to be here. In India, I was warned by my seniors that Japan has a system that you have to follow. But after coming to Sony, I realized there is no standard system I need to follow here. I can be creative and innovative and do what I want by whatever means I want to.
My seniors all encourage this, and it's really nice as an engineer to work at a place where you can be creative, and to know that I have the flexibility to work by my own pace and my own creative vision.
Working at Sony as an engineer (27 seconds, English audio/subtitles)
■ How international employees' viewpoints benefit their team's work
Olivia: Because I work on an English website for employees and I'm the only international employee in my section, I can offer opinions like “this content might not make sense to people overseas without explaining the Japanese cultural context.” Then, we work on our content accordingly.
Iryna: In terms of communication, I think I can contribute by conveying messages much more understandably to the parties in subsidiaries. Of course, while most of us speak English, Japanese people tend to express things indirectly. In both Ukraine and Germany, we are very direct, which is very clear for non-Japanese people.
Zhou: For me, I'm able to support things related to China. People ask my opinions such as how the product they're thinking of is, or how the risk in China is. I can also do native language checks in urgent cases.
Suri: One example is with our work on the head-mounted displays. My face, eye shape and skin color are all different from Japanese people. For the machine learning I can offer to be a guinea pig, which brings some diversity in the very first stage of R&D to offer a few different Asian features. We want to make something for everyone, for all ethnicities.
■ Ups and downs of life in Japan
Olivia: One issue I've had is trouble finding apartments. I've been told “no foreigners can live in this apartment,” and I think Japan still has some issues like this. I've also struggled with residency applications, where the extension durations granted feel random.
Zhou: Same here. Sometimes, for example, I write that I want to apply for 5 years, but then ultimately they only give me a 3 year extension. I don't know the criteria for deciding.
Olivia: On the other hand, I'm sure we all have things we like about Japan as well. One thing I love in Japan is the nature. After joining Sony, I also joined the company's mountaineering club, which is quite active and helped me make new friends.
Zhou: I think people here are very kind. I have one example where I went on a trip and I was very late to the hotel's check-in time. However, the staff had stayed up waiting for so that they could serve me dinner.
Suri: I enjoy interacting with other cultures and learning how they think, so I like talking to Japanese people and getting to know their culture.
Iryna: While Japan's striking beauty was the main reason I fell in love with it, it is also the only place in the world where I feel safe walking alone at night with nobody to bother me.
■ The treatment we want to receive
Olivia: At Sony, we're trying to promote awareness about unconscious bias, which can also lead to microaggressions. For example, this could include stereotypes about international residents in Japan, or unintentionally offensive things people say to them.
One thing for me is that I get tired of being told “No way, you can use chopsticks!? Wait, let me get you a fork!” (laughs). It gets a little tiring to hear, because even in America I used chopsticks, and now I've lived in Japan for 6 years.
Iryna: Every time I speak Japanese, people start complimenting me, which is nice of them. However, my self-evaluation isn't good so I wish they wouldn't. While I know they do this out of courtesy, it actually makes me less confident.
Olivia: I think there's a stereotype in Japan that international residents can't speak Japanese, so people here praise us right away. Sometimes, I'm just trying to have a normal conversation about something else, but I keep getting asked “Wait—how did you learn Japanese? You should be my English teacher!”
Olivia: On the other hand, what kind of treatment do you want to receive?
I just want to be treated normally rather than receiving too much focus on being a “foreigner.”
Iryna: It's very similar for me. It's refreshing when people just talk with me normally without concentrating on where I'm from. I like to be involved in all discussions, even if it's harsh feedback from bosses.
Zhou: I feel most happy when I'm thanked by colleagues or management, such as “thank you for your contributions.”
Suri: I agree with what Zhou said about receiving recognition and appreciation for your hard work. After a hard long day here, when you report back to your boss, you receive kind words like “thank you so much for your hard work,” or the phrase “otsukaresama deshita” in Japanese.
■ Working with people from different cultures
Zhou: As a senior manager for a department now, I essentially think we should try to understand each other as human beings, regardless of nationalities. It's important to think in someone's position and try to understand them first.
Iryna: I agree with that. Sony is famous to be innovative. It's innovative because it's open to new ideas. I think that openness is very important to maintain because communication is key to make new ideas. Just because there's something someone isn't used to, they shouldn't stick to biases or set structures. We should focus on the key messages of one another. I think that will help everyone move forward without prejudices.
■ Survey Results - Voices from Employees
When we published this article internally, we conducted a survey to collect feedback from employees. Many employees said that the article helped them further understand unconscious bias, and that it improved their understanding about intercultural communication.
■ Editor's Comment
The discussion reminded me how invaluable diversity is to Sony's work culture as a creative technology company. Despite the challenges of living and working abroad, this open culture is one aspect that makes working at Sony as an international employee rewarding.
While it was reassuring to hear about our overlapping experiences, it was also very eye-opening for me to hear about how our experiences differ. I hope the article serves as an opportunity for readers to think about intercultural communication and the strengths of having a diverse workplace as well.