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ゆこたか雑記帖
2021年6月7日 18:14
その人の名前を知ったとき、その人は既に伝説となっていました。『仮面物語』や『夢の棲む街/遠近法』といったタイトルの持つ磁力に惹かれながらも、作品を手に取るまでにはなお時を要しました。時折その人の名前や噂を耳にして、いつか読まなくてはならぬ、と思いつつもその欲望は他の多くの書物を前に埋もれていました。ようやくその人―山尾悠子さんの世界に触れたのは2012年。ちくま文庫に収録された連作長編『ラピ
2023年9月13日 23:33
文学賞にはそれほど関心があるわけではなくて、好きな作家が受賞したと聞けば、ああ良かったな、と思う程度なのですが、新人、ベテラン問わず虚構性を追求した作品に与えられることの多い泉鏡花文学賞は数少ない例外です。大濱普美子、という名前はこの文庫が出るまで知らなかったのですが、「泉鏡花文学賞受賞作家の第一短編集」であり、さらに解説が「金井美恵子」であるという2点を頼りに手に取りました。結果はもっと彼女