【読書感想図】 フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義
家の中での生活が多かった2020年。やっぱり「食」はいろんな意味で大切だなぁと感じて読んでみた本「フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義」
著者は、コンサルティング会社シグマクシスの方々で「スマートキッチン・サミット・ジャパン」という食×テクノロジーのイベントを主催されている。
表紙に「世界最先端のフードビジネスがわかる」と書いてあるように、食にまつわる新しい取り組みや価値観の変化などが様々な角度で取り上げられている。ロックダウン中の内容も含まれていてキャッチアップの早さがすごい。
読み終わった後は、おなかいっぱいになるくらいに内容が盛りだくさんではあるが、個人的に気になった部分をいくつかメモしてみる。
フードシステムの市場価値よりも、フードシステムが引き起こしている健康や環境へのマイナスの影響が大きいという内容。肥満による医療コストや食料生産による環境問題など、フードシステムが拡大していくほど負の要素も増えていく現状に対して、新しい取り組みの必要性も高まっている。
食の価値といわれて、「手軽でおいしい」「安全で健康的」などをイメージしやすいが、新しい価値として、「調理を楽しむ」「コミュニケーションとしての価値」などがあげられている。食に求めることが多様化することで、1軸の価値から多軸の価値へ変化している。
複数の手順がある料理。テクノロジーで全てのプロセスを自動化すれば良いというわけでもなく、各プロセスを楽しみたいと思う人もいるという多様性を意識することが重要。
今年は食生活が変わった人も多いはず。家にいる時間が多い中で、手のかかる調理を楽しんだり、デリバリーフードが日常化したり。外食産業も激し過ぎる程変化した一年。
有識者へのインタビューの中で出ていて気になった内容。人類の歴史的に、初めは季節などの自然のリズムに合わせて生活をし、機械が出てきたことで都市に集積したり週稼働の生活となり、現在は突如分散が求められるなど不確実であることにどう合わせていけるかが求められる。
パーソナライズも様々な領域で行われているが、食においてはいくつかの要素に分解できる。調理、ヒト、食材それぞれの情報から個人の状況に合わせた調理方法などを提供する。
宇宙食や宇宙ステーションで使用する物資の開発が宇宙生活のためだけでなく、地球上の生活においてもなんらかの危機や課題を解決するきっかけになる。
新しい事業を組織として取り組むときのコツのようなものも挙げられていて興味深い。企業内の新規事業部門での既存領域との軋轢や、仕組みとしてこうあるべきという部分の共感度も高い。
また、フォードテックに関連するトレンドやキーワードを多角的に整理した「Food Innovation Map 2.0」というものが載せられているが、この内容もとても興味深い。
書籍内の情報量が多く、フードビジネスに関わっている人には、なんらかの気づきのある満腹感のある本だと思う。