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【怒りをコントロールするコツ】めまい・過呼吸と怒りの密なる関係|ガマンが大爆発を起こす
臨床心理士・公認心理師の高間しのぶです。
・原因不明のめまいや過呼吸、痛みがずっと取れない
・小さいときから自分の感情を隠してきた
・親が自分の気持ちを分かってくれることはなかった
そんな悩み(不安)を持って生きているあなたに、怒りをどのように取り扱っていけばいいのかについてお伝えします。これまで、のべ2万人の悩みを聴き続けてきたマインドフルな心理師が、日々のカウンセリングの中から得た知恵を、みなさんとシェアします。
■テーマ
【怒りをコントロールするコツ】めまい・過呼吸と怒りの密なる関係|ガマンが大爆発を起こす
この記事のポイントは、
・身体の不調と怒りのガマンには関係がある(前半)
・怒りは悪者ではない。その怒りを、誰かに分かってもらうと楽になる(後半)
■怒りをガマンすると身体が不調になる
次のようなツイートをしています。
身体はどこも悪くないのにめまいや過呼吸がひどい人は、子どもの頃からガマンしてきた人の可能性が高い。何をガマンしてきたのか?それは他人への怒り、自分への怒りです。出すことを禁止された怒りが身体の中で渦巻いて、それがめまいとなって現れる。まずは怒りを自覚し少し噴火させよう🌋
怒りというものは、自分の感情の中でも、とても感じやすい感情です。分かりやすい感情です。その分かりやすい感情を自分の中にしまっておくと、身体の中でモヤモヤが大きくなっていき、身体を圧迫していきます。それがめまいや過呼吸という分かりやすい身体症状となって現れることがあります。
内科的なもの、外科的なもの、検査してもどこも悪くないのに、そんな身体症状が収まらないときは、怒りをガマンしている可能性があります。こころのモヤモヤを身体に出す人は少なくないですね。
典型的な例は、子どもでしょう。不安なことがあるとすぐ、頭が痛くなったり、お腹が痛くなったりしますね。
身体の症状は、めまいや過呼吸にとどまりません。「身体症状症および関連症群」(DSM-5)、かつてDSM-IVでは身体表現性障害と言われていましたが、その中に「変換症・転換性障害」というものがあります。(*1)
◇変換症・転換性障害
医学的な診察・検査の結果に合わない運動や感覚の症状を訴えるもので、以前は解離症・ヒステリーとも呼ばれていました。ちなみにヒステリーという言葉を使ったのはフロイトです。もう120年以上前になりますが、彼のヒステリー研究 (*2)は有名ですね。
変換症とは具体的には、立てない、歩けない、声が出ない、急に見えなくなる、難聴、感覚がなくなる、マヒなど、さまざまな症状が出現します。心的なストレスが身体的な症状として現れるのです。けいれんしながらの発作、背中側へ反り返ってしまう等、てんかんに似た心因性の発作(PNES ピーネス)もあります。てんかんは開眼しての発作で、心因性の非てんかん発作は閉眼が多いとも言われています。
◇まず怒りを噴火させる
これらの身体化する症状への対応は、身体的にどこも悪くないので、薬ではどうしようもありません。カウンセラーはその症状をどうにかするのでなく、背景にある心的な苦痛(多くは怒りの感情)を共感的に聴いていくことが、第一選択肢になります。感情を聴くことで、身体の中のモヤモヤを放出していくのです。これは、個人でも利用できるでしょう。
めまいや過呼吸が起こったら、自分の隠している感情(怒り)に気づくことです。この感情は、そう簡単には見えてきませんが、「あ、何かあるな」と横目で眺めてみること。この【横目で眺めている】感じが大切です。
直視しないわけですね。直視すると大変なことになりますから。いままで封印してきた感情なので「急に蓋を開けることなかれ」です。これを繰り返しているうちに、その正体およびあなたの重層的に隠されていた感情が見えてくるでしょう。
この客観視に役立つのが【マインドフルネス】のスキルです。
【マインドフルネスの極意】誰かを手当てすること|ポジティブにならなくていい
怒りを自覚することは、たしかにつらいことです。それまでずっと封印してきたことですし、それを爆発させると、愛する人を撃破することにもなるからです。しかし、あなたのその葛藤は大切にしていきましょう。そうやって、自分や相手と向き合っていれば、いつか、その気持ちも沈静化していくでしょう。幸運を祈ります。
■不安の強い人は怒りが強い
不安と怒りは隣接した感情ですので、不安が強いと、自動的に怒りも強くなります。つまり、
・不安の強い人は、実は怒りの強い人である可能性がある
・不安の感情の向こう側には、怒りが潜んでいるかも
愛着スタイルという視点で人間を見ると、不安が強いという人は次の愛着スタイルをもつ人々です。
・不安型愛着スタイル(4つの愛着スタイルについては下のリンクを見てください。)の人は、怒りを抱えやすい。見捨てられ不安の根源は怒りです。
【事実!】愛着の4パターン/4スタイルを詳細検討|虐待は連鎖しない
■怒りを誰かに分かってもらうこと
思春期は怒りの時代。怒りを親へ向けつつ、親を乗り越えて、自分の規範を作っていく時期です。この怒りをガマンして糞づまり状態になっていると、スネオ(ドラえもん)になってしまいます。これを中年期にまで持ち越している人もいます。次のようなツイートをしています。
親に分かってもらえなかった子は成人になるとスネた感じになります。なぜなら行動するときにものすごく疲れるから。普通ならスッと直接言えるところを、気を使い⇒周到に準備し⇒言おうと決心し⇒伝える、この過程を経るから疲れが半端ない。これが怒りにもつながり、気を使っているから怒りを表出できず、スネた感じになる。大切なのは分かってもらえる体験。
怒りを出したいのに出せない状態、多くの人が経験あるでしょう。これはモヤモヤがずっと残ってしまって、頭で何度も考えてしまって、身体的な疲労をもたらします。
そんなとき怒りをズドン!と出せればスッキリすることは知っています。でもできないんですね。なぜなら、結局周囲の視線が気になっているからです。
「気にしなくていいじゃない」と思いますよね。そう思える人は、親に自分の気持ちを聴いてもらった経験のある人です。そういう「普通の」人は周囲より自分を優先できるので、モヤモヤしません。
しかし、親に気持ちを聴いてもらえないと、親に表現しなくなるばかりでなく、他人へも表現しなくなるんです。子どもはそうやって親で練習を繰り返し、世界へ出て行って、世界と関係を作っていけるのです。
親のせいにするな、とはよく言われます。自己責任、とも。それは確かにその通りで、大人なら常識です。しかし、この自己責任を取れるようになるには大前提があって、精神発達が思春期を越えていることなのです。つまり親へ怒りを出して、親を乗り越えていけた人々なら可能なんです。その経験がない人にそれを主張するのは、ちょっと酷なこと。特にスネた感じの人には、とても難しいこと。
ではどうすればいいのでしょう。自分の感情(怒り)を分かってもらう体験を重ねていくことです。親とはそれができなかったから、そこをカウンセラーと一緒にやっていきましょう。怒りを否定せずに十分に聴いてもらうこと。自分自身の感情を整理できているカウンセラーを探しましょう。
スネた怒りは、相談者もカウンセラーも大変ですが、回復の道筋は分かっていますのでなんとかなります!精神科医の斉藤学先生の著作でよく紹介されるのは、
・怒りに満ちた過去を、別の物語(冒険譚)にしていく
・怒りの専門家になる
このへんは下記のラジオをお聴きください。
心的外傷後ストレス障害はあなたの人生を変える!|PTSD成長理論という希望
◇思春期の怒りはどうして必要なのか?
10代というのは怒りの時代と言われます。なぜ10代は怒りなのか?それは次の理由があるからです
・親を乗り越えるため
・親から受け継いだ倫理規範を壊して、再構築するために【怒り】のエネルギーが必要
思春期が終わる頃には、
・子どものことが愛おしくなったり、クスッと笑ったりするようになります。
・子どもも変化して、あなたも変化したからです。
・両方が折り合えるようになったから☺
■怒りを肯定的にとらえる
怒りは感情の1つですから、否定されるべきものでも、コントロールするべきものでもありません。
愛着障害の人が回復してくると
・怒りを出せるようになったり、
・体のしんどいときは会社を休めたり、できるようになります。
これらは自分を守る行動なんですね。不安定な行動ではないのです。だからマネジメントするべきではありません。【自分を守ったね】と積極的にリフレーミングするポイントです。
これは愛着障害の方へ向けてのツイートですが、怒りを全面的に支持していますよね。このように怒りというのは【肯定】されるべきものなのです。
愛着障害の方が回復してくると、(特に母親に対して)怒りを出せるようになります。カウンセラーはそのことに気が付いたら、思いっきり、積極的に、その怒りを出したことを肯定してあげましょう。感情というものは、肯定されると、その本来のエネルギーを生きることができるようになります。
怒りには行動するという本来のエネルギーが蓄えられています。それを放出するには、怒りが肯定されることが必要なのです。
とはいえ、怒りの取り扱いは難しいので、まずはカウンセラーにまかせましょう。知人や家族の方は「怒りは行動エネルギー」、このことだけを知っておいてください。
■怒りから出来事を分離する
怒りを肯定的にとらえるには、怒りの元になった出来事を、怒りから分離することです。そして怒りだけを抽出することです。
時間はかかりますが感情の観察ができるようになってきたら、その感情だけを見れるようになるといいですね。つまり出来事を感情から取り去るのです。〇〇に怒られたという出来事と怒りの接続を外す。例えば、13:30に怒りを覚えた、というふうに感情だけを感じる。これで認知脳の暴走が止まる。
怒りは感情ですので、善悪はありません。善悪になってしまうのは、怒りの感情に出来事がまだくっ付いてしまっているからです。怒りだけでなく、不安、恐怖、かなしみ、絶望、楽しみ、すべての感情には出来事がセットになって収納されています。
出来事というものは、認知の脳が得意とするところです。「こんなことがあった、それは怒るべき」こうやって思考します。この出来事と感情の接続を外していくことです。そうすると認知脳の暴走が止まります。なぜなら認知脳は出来事にだけ反応するからです。
感情だけを感じられるようになると、感情を肯定的に捉えられるようになります。思い立ったらときどきやってみましょう。
■まとめ
今回は怒りの話でした。
・怒りをガマンすると身体が不調になる
・怒り(感情)は誰かに分かってもらえると治まっていく
・怒りは悪者ではない、肯定的に捉えよう
・怒りを出来事から分離する
これらのことは、すべて【怒りを肯定する】ところから始まるということを忘れないでください。
こころの底でのたうちまわっていたあなたの感情が、ようやく陽の目をみて楽になりますように。
◇怒りについての関連記事も参考になります。
【感情(怒りや恐怖)コントロールの方法】まず感覚を知ることから
■ぶらり、宵まち、さんぽ道(番外編)
家に帰ると友だちみたいな人はいるけど、親はいなかったのでしょうね。
そんなふうに葵さんは話しました。彼女の家庭は、何か特別な嵐が吹き荒れていたわけではありません。虐待っぽいことが行われていたわけではありませんが、どことなく家族全体がドライで、お互いのことに口出しをしなかったようです。それは葵さんが小さいころからそういう家族でした。
葵さんには妹がいて、典型的な4人の核家族でした。戦後結婚した両親と、高度成長期に生まれた葵さんと、学校の成績の良かった妹。妹は文武両道でスポーツもできました。葵さんは、普通の成績と普通の運動神経。両親はたまに妹と自分を比べたといいます。
でも母親とは仲が良かったのです。いえ、葵さんが仲がいいフリをしていたのです。母親は、葵さんがそんな気持ちでいることなど、全然知りません。そんな親をみると少し寂しくなる葵さんでした。でも元気なフリをして学校に出かけ、学校でいじめられても元気なフリをして家に帰ってきます。親は葵さんがいじめられていることに気がつきません。
それはまあ、葵さんが用意周到に隠していたこともあるのでしょう。しかし、少しは気づいても良さそうなのものなのに、親は葵さんと仲良しなことを近所に自慢したりするのです。そのたびに、彼女の顔は曇るのですが、親には彼女の苦悩の意味が分からないようです。
それから40年たって、葵さんは自分の中にある巨大な怒りの感情に気がつきます。自分さえ破壊しかねない怒りでした。そしてカウンセリングルームを尋ねてきました。自分の生い立ちを話し、ひとつぶ涙が流れ、カウンセリングがスタートしました。彼女は、自分の回復への長い道のりの一歩を、静かに踏み出したのです。
Reference
(*1) 松崎朝樹:精神診療プラチナマニュアル, メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2018
(*2)ジークムント・フロイト/ヨーゼフ・ブロイアー:ヒステリー研究, 1895