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「あと1年で会社がつぶれる」危機的な経営状態から短期的に売上を回復させるためにやったこと

こんにちは。マイノリティという会社で代表をやっている柳澤大介(@socialselling84)といいます。

前回、起業して3年目に初めて経験した、経営の大ピンチを振り返る記事を書きました。その続きです。

2023年10月は本当にいろんなことがありました。取引先が激減して仕事が3分の1に減り、元部下の急死と、弟からのSOS。精神的にも相当まいっていました。

先輩経営者に教わったアドバイスを一つずつ実行に移す中で、今後のことをあらためて妻に相談しました。


妻からのたった1つの助言

最後に役に立ったのは、妻からのアドバイスでした。

僕は普段から仕事の話とか困ったことを、何でも妻に相談していました。わりと妻が的確なことを言ってくれるんです。

だから会社が大変な状況にあるときも僕は妻に相談しました。「まあ実は、かなり危ない」と。

「毎月数百万円の赤字が出ているから、このままの状態が続くと、最大でも2年が限度かもしれない」

そう話しました。

これまでの売り上げもありますし、融資も受けていたので、キャッシュフロー的にはあと2年は大丈夫でした。それでもマックス2年。息子がいまのクラブチームを卒業するまでの2年は最低でもやりたいと伝えました。

妻からはシンプルにこう言われました。「あと1年やってダメだったらやめて」。

要は2年がんばったら、もうキャッシュも全部使い尽くしている状態なので、完全にボロボロなわけです。だったら、その半分の1年までは頑張ってみて、そこで撤退したほうがいいと。

「1年やってダメだったら、会社をたたんで会社員に戻ってください」。そうスパッと言われて、確かにそのとおりだと思いました。

ギリギリの状態で、お金が1円もなくなる限界までやるよりも、その半分の1年をデッドラインとして設けるのは、撤退ラインとして合理的だと納得しました。

僕の妻は小学校の教員をしています。

経営とかビジネスに対して明るいタイプではないんです。民間企業で働いたこともなくて。でもすごく天真爛漫で、とても明るい妻なんですよね。

過去にもこういうピンチがあった時に、妻に相談してその通りにやると結構うまくいくことがありました。

やっぱりたくさんの人と関わる仕事をしているので、人を見る力に長けてるというか、僕のことをよく理解しているので、いつも本質的な答えをくれる気がします。

とにかく1年間、必死で頑張る。それで結果が出なかったら辞める。そう決めて前に進むことにしました。

もう1つ、妻に助けられたことがあります。

一緒に花を買いに行ったんです。

玄関や小さな庭に植えるための大量の花を買って、半日かけて植えました。当たり前ですけど、普段目にする場所がすごく明るくなりました。「数ヶ月すると花もきれいに咲いて、運を引き寄せられるからね」と妻は言いました。

結果的に、その花が咲く頃には、あらゆる困難な状況が解決に向かっていたんですよね。

これが妻のアドバイス。いろいろなことが少し明確になって、「よし、じゃああと1年は頑張ろう」と仕切り直しました。

サービスの作り直しと再起への挑戦

僕は先輩の経営者のアドバイスをもとに、短期と中期でやるべきことを考えました。

まず短期的にはサービスを作り直しました。

半年前から提供開始していた、法人向けのX運用の研修は目新しいこともあって問い合わせが多かったんです。

研修の内容は1対1で僕のXノウハウを3ヶ月でインストールしていくようなパッケージにしていました。1人あたりの料金が決まっていて、社内でそれを受ける人数によって全体の金額が変わってきます。

それを1対Nに変えたんです。何人参加しても料金は同じです。そこを大きく変えました。その代わり、契約期間の単位をそれまでの3ヶ月から半年に伸ばしました。

要は2倍に値上げをしたわけですが、導入企業にとっては研修の受けてが1対1から1対Nになったので、1人当たりにかかる単価としてはお得になっています。

僕としてはやることはそんなに変わりません。でも1対1を1対Nでも可としたことで、契約期間を伸ばすことができました。これによって売上と利益率が上がりました。

以前は「1対1でこの価格、ちょっと高いね」って言われることもあったのですが、「これならぜひやりたい」と割安に感じてもらえるようになりました。

他には主力事業の営業・マーケティング支援の契約更新の単位を3ヶ月から半年に伸ばしました。

以前相談した元ワイキューブ社長の安田さんからは「1年にしたほうがいい」とのアドバイスをもらっていたのですが、さすがに1年はちょっと自分でもオーバースペックだなと思ったので、半年に変えたんです。

商品そのものは大きく変えずに、提供のスキームを少し変えることで、より良いサービスになったと思います。

最初に1回の受注で高単価かつ、6ヶ月の契約をいただけることになったので、短期間で迎える更新の山が少なくなり、経営が安定するようになりました。これが最初に着手したことです。

とはいえ商品を変えただけでは十分ではないです。直近のお客さんがいないので、短期的に受注を増やさないとまずいわけです。

11月時点で平時の3分の1程度しかお客さんがいなかったので、すぐに、たくさん、受注していかなければいけません。

そこの施策はシンプルでした。まずは保有する「ハウスリスト」からの商談創出です。

ハウスリストというのは、過去に僕が会った人、ターゲットとなる会社の役員や経営者ですね。これまで名刺交換したり、オンラインで話した方がすべてSFAと言われる顧客管理システムに入っていました。

3年間ぐらいの間に築いた人脈に対して、一気にこの作り直した商品の提案のアポイントを入れさせてくださいと連絡しました。そうしたら1週間で、なんと60件のアポイントが取れました。

11月中旬からの1ヶ月間で、60件の商談をすべてやりきりました。多くの方とお話してもらえたのも、商品設計を変えたのが良かったのかなと思います。

商品の内容も少し改訂を加えました。コンセプトを「営業マーケティング支援」から、主にSNSを活用したビジネス支援、要は「ソーシャルセリング」と呼ばれる手法に方向性を変えたので、目新しかったのだと思います。

「Xを活用した採用と集客」を大きく打ち出し、従来の見せ方や訴求方法を刷新しました。

これまでの「グロース支援」や「営業研修」のようなコンセプトでは、そこまで多くのアポイントは取れなかったはずです。ソーシャルセリングという新規性のある商品に変えたことによって、アポイント率がかなり上がったと思います。

ただ60商談やっても、もちろん全部は決まりません。いいところで6〜8件でしょうか、10%いけば十分なくらいです。

そこで新たな武器であるソーシャルセリングを自分でも実行しました。ここでいろいろな手法を編み出したんです。そういった施策をどんどん考えるのはたのしい作業でした。

XアカウントをCRMとして使う

ソーシャルセリングの手法をつかって短期間で成果を出す方法について解説しましょう。

前にもnoteに書きましたが、ソーシャルセリングをやる時はXでつながってから、いいねやリプライのやり取りを通じてある程度エンゲージメントを高めて、その後に手紙送ると接点を持ちやすいわけです。一般的には数ヶ月の時間を要します。

たとえば僕の場合、自分の投稿を「いいね」してくれたり、リポストしてくれたり、返信してくれたりした人に、こちらから返信を返したり、DMを送ったりすると、かなりの確率で商談につながるようになりました。

逆に、まったく何のつながりもない人に対して突然DMを送ってもほとんど効果はありません。スルーされるのが当たり前だと思います。

ちゃんと相互フォローの関係になっていて、そのお互いのことをちゃんと認識してる状態で、かつ相手がリアクションしてくれたタイミングでこちらから連絡したときに、ようやく仕事につながる可能性が出てくるんです。

ただし、今回の僕の状況においては短期的に結果を出さなければいけませんでした。だんだんとエンゲージメントを上げていくなんて、悠長なことは言っていられない状態です。

考え抜いた末に思いついたのが、1万人以上いる僕のフォロワーをCRM的に使うことでした。

うちの会社のサービスは基本的に、社長か役員などの経営陣と商談しないと決まらないことはわかっていました。なので社長に効率よく当たっていきたい。かつ、できればXですでに僕とのエンゲージメントが高い人に当たりたい。

となると、僕のフォロワーの人は少なくとも僕のことを知っているわけですね。その中から社長だけ抽出できれば非常に効率的です。

そのためにはまず「SocialDog」というツールを使います。すべてのフォロワーのプロフィールをキーワード検索でフィルターにかけられることに気がついたんです。たとえば「代表取締役」というテキストがプロフィールに入ってる方がたくさん出てきました。

前までは上から順に目視で確認してたんですけど、明らかに非効率でした。SocialDogを使うとプロフィール文言でフィルターできるうえに、抽出結果をCSV形式でエクスポートできます。

ちなみにそのときは直近フォローしてくれた方は除きました。「フォローしたらすぐに連絡してきた」みたいな悪い印象を与えてしまうためです。3ヶ月以上前にフォローしてくれた方を中心に抽出して、リプライなどで何度かコミュニケーションを取ってから連絡をしていきます。

結果的にこの方法でかなりアポが取れたんです。これはまさに「ソーシャルセリングを活用した短期的な成果につながる営業手法です。

ソーシャルセリング x BDRという手法

そして同時に「BDR」(アウトバウンド型セールス)」も実施するために別のリストをつくりました。それは「うちの会社の取引先企業と属性が近い企業に勤める人たち」の一覧です。

どうやってつくるのかというと、ユーザベース社の「スピーダ」というツールを使います。たとえばうちの取引先のお客さんの情報をスピーダにアップロードすると、それがどんな会社なのか解析してくれるんです。

どういう業界が多いのか、どういう企業属性なのか、どういうツール使っているのか、などの項目を分析し、その結果をもとに日本中の企業をスコアリングしてくれます。

そうすると既存顧客の点数を100点として、それに属性が近い企業ほどスコアが高くなります。なので、たとえば「A社さんはスコアが90点だから、うちの既存のお客さんと親和性が高いはず。商談すると売れる可能性が高いな」ということがわかります。

スコアが高い企業の経営陣を洗い出し、彼らのXアカウントをすべて調べました。700件ほどの重点攻略リストができました。

Xアカウントを持っている方は全員フォローし、その方々の投稿に毎日「いいね」や「リプライ」をする。そしてある程度の時間が経ったら手紙を送るーー。というプロセスをつくりました。

これもある種のソーシャルセリングです。このリストからもすぐに1件の受注が決まりました。

リストアップした会社の代表とXでやり取りした後に手紙を送り、さらに時間差でリプライやDMを送ってアポをいただいて、商談後にすぐ決まったのです。

整理すると、僕が短期でやった施策は「ハウスリストの洗い出し」、さきほどの「ソーシャルセリングのCRM的活用」、いまの「ソーシャルセリング x BDR」の3つ。どれも結果が出たのですが、一番最初に成約できたのはソーシャルセリング x BDRというターゲティング施策でした。

短期的な施策に関してはもうがむしゃらに動きました。

特にソーシャルセリングの手法はその後もずっと磨き続けて、国内でこのやり方を実践しているB2B企業はいないと思います。

自ら実践してピンチを切り抜けた手法は、ABS(Account Based Social Selling)という新サービスへ進化しました。じわじわと口コミで広がり、いまでは3ヶ月待ちの人気サービスです。

その結果、年が明けた2024年1月時点では毎月数百万円出ていた赤字がなくなることが決定したんです。


この話はもう少し続きます。よかったら、noteをフォローしてお待ちください。

次回以降は経営難にどうやって対処したのか、短期的な施策と長期的な戦略について書いていきます。


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