新規事業を成功させたいスタートアップや大企業が「PMF」するために考えるべきこと
こんにちは。株式会社マイノリティの代表の柳澤です。
当社はシード期〜シリーズAのスタートアップを中心にグロース支援をしており、主にBtoB企業のプロダクトマーケットフィット(PMF)の推進、マーケティング・営業戦略の立案を担っています。
このnoteでは、多くのプロダクトのPMF前後のフェーズを間近で見てきた経験から「スタートアップや大企業の新規事業がPMFするために必要なこと」について解説していきます。
こちらの「PMFの基礎知識」マガジンに随時記事を追加していますのでご覧ください。
「PMF」とはいったい何か
「プロダクトマーケットフィット」(PMF)という言葉を、この数年よく耳にするようになりました。PMFとは、“市場からプロダクトが受け入れられている状態”を指します。
多くの企業がこのPMFに挑戦していますが、特に創業したてのスタートアップにとっては最初のプロダクトがPMFに到達するかどうかがとても重要です。
スタートアップにとって「PMFできるかどうか」はそのまま、会社が存続できるかどうか、を意味するからです。
逆にいえば、“PMFしていない状態”というのは、その会社が生き残っていけるかどうかまだわからないということです。
新規事業を立ち上げたスタートアップは、多くの場合、ファーストプロダクト=会社組織そのものなので、素早く立ち上げて、PMFへの道を模索しているわけです。
シードラウンドで得た数千万円の資金で必死にPMFを目指し、PMFに限りなく近づいているか、PMFしたことを確信できると、シリーズAラウンドで数億円から数十億円を調達できる段階にきます。
私が主に支援している企業はまさにシリーズA前後の会社さんが多いです。もう少しでPMFできそう、もしくはPMFできたので一気に伸ばしたいというケースですね。
PMFをどう判断するか
では、あるプロダクトがPMFしているのか・していないのか、どう判断するのか。実はそこに明確な基準はありません。
それでも市場と自社の商品のニーズがしっかりと重なり合って、その事業が継続できるような状態になるのがPMFです。
PMFを実現できていれば、黙っていてもお客さんからの問い合わせがたくさん来ます。そこで一気に人を増やしたり、マーケティングに投資すると、比例して売上が増える状態になります。
PMFしていないと、営業がどんなに頑張っても売れません。あるいはたまに売れたとしても、導入してもらったお客さんに満足してもらえず、契約期間が終わったら解約されてしまいます。常にバケツの底に穴が開いているような状態です。
つまり、スタートアップが最初に目指す山が「PMF」なのです。繰り返しますが、PMFの定義は明確にはありません。しかし、そのシグナルは経験的に見えてきます。
まず、よく言われるのが、「うちのプロダクトはPMFしているのだろうか?」と疑問に思っている状態、これはほとんどのケースでPMFしていないでしょう。
PMFしたときは明らかにそれとわかるものです。
広告費を使っていないのに問い合わせがきて、営業を増やした分どんどん売れる。このままいけば順当に黒字化するだろうという目処が立つ状態。これがPMFです。
シグナルとしては「見込み客からの問い合わせがコンスタントに来る」こと。そしてプレスリリースを配信すると大きな反応が来ることもあるでしょう。そこからスムーズに受注ができれば、そのプロダクトはPMFしたと言えます。
例えば、私のお客さんでこんなことがありました。
まだ数人の会社で、以前の事業からピボットしてとあるプロダクトをリリースしたところ、いきなり問い合わせが殺到しました。
一般的にはプレスリリースを出しただけではそれほど問い合わせは来ないものですが、この世に類似サービスがないプロダクトで、かつ魅力がある場合はアーリーアダプターの方が飛びついてきます。
まだ名前を知られていない会社なのに、プレスリリースを打っただけで想像以上の反応が来る。これはPMFの重要なシグナルです。
PMFに関するさまざまな兆候
企業のマーケティング活動はPMFと密接な関係にあります。
マーケティング予算を使わずに、プレスリリースを配信しただけで問い合わせが来たら、次はしっかりと予算を投じて、広告やPRなどの施策を打ってみます。それで投資額以上に利益が出たら、それはもう明確にPMFしている状態です。
マーケティングに関するPMFのシグナルは、低いCPAでリード獲得できる状態です。経験的には1万円を切るぐらいのCPAでリード獲得できていればPMFは相当近いと言えるでしょう。逆にCPAが高くなるのであればプロダクトの魅力が足りないか、市場に適合していないということになります。
営業の活動状況においてもPMFのシグナルは見えてきます。たとえばPMFしている状態では商談後、すぐに受注できるケースが増えてきます。目安としては商談単価100万円から500万円ぐらいの製品が3ヶ月以内にコンスタントに受注できればPMFしていると言えるでしょう。
そしてPMFしている製品は解約も少ないのです。受注がコンスタントに伸びながらも年間の解約率が10%以下であれば、しっかりと市場に受け入れられています。9割以上のお客さんがリピートしていれば上出来。私の感覚では7〜8割がちゃんとリピートしていたら悪くないと思っています。
あとはわかりやすいシグナルとして、「若手の営業マンでも受注できる」というものがあります。
よくあるのが創業期は社長自らどんどん営業していて、「社長だから」で売れてしまうこと。そこで社長が「うちの製品はPMFしている」と思ったとしても、若手営業マンになった途端に売れないわけです。
その点、PMFしている製品は誰でも売れます。経験の浅い営業でも売れるのは、製品が市場に求められているからです。
事例インタビューとPMF
さまざまな会社を支援するなかで見えてきた面白い共通点としては、事例インタビューです。PMFしている製品を使っているユーザー企業は、満足度が高いので事例インタビューを快く受けてくれるんです。
SaaSのプロダクトを提供しているスタートアップのホームページを見るとよくわかります。PMFしている会社やPMFしつつある会社の場合、豊富な事例が載っているはずです。
一方、いまいち上手くいっていない会社のホームページには、載っている事例が少ないか、あるいは載っていたとしても企業名が伏せられていたりします。
そうそうたる会社の事例が出ているというのは、はたから見てもわかるPMFの1つの証だと言えるでしょう。
「スタートアップや大企業の新規事業がPMFするために必要なこと」を書いていく連載。シリーズ第1回は“PMFの概要とそのシグナル"について解説しました。
次回は「新規事業のニーズを探る・検証する方法について」です。よかったらnoteをフォローしてお待ちください。
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