PMF前後のスタートアップの「営業組織」はどうあるべきか
こんにちは。株式会社マイノリティの代表の柳澤です。
このnoteでは、多くのプロダクトのPMF前後のフェーズを間近で見てきた経験から「スタートアップや大企業の新規事業がPMFするために必要なこと」について解説しています。
前回は「PMF前後のマーケティング組織の在り方」について解説しました。
今回は営業組織についてです。PMFの前と後でスタートアップはどんな営業チームをつくるべきなのでしょうか。
PMF前は特定の人しか売れない
そもそもPMFしてない商品の場合、売り方がめちゃくちゃ難しいです。
例えば、スタートアップが売上が伸びているからといって営業組織に投資を始めると、それなりに経験のあるシニア営業に加えて、第二新卒の“ジュニア営業”が入ってきたりします。
PMFしてない会社の場合、資金調達のラウンドも浅いため、まだまだ高い年収は払えません。だから必然的にジュニアの営業が入ってくるわけです。だいたい20代半ばから後半くらいですかね。
でもスキルの低い営業が、PMFしてない商品を売るのは難しい。誰も聞いたことのない会社の、そもそもまだ市場に適合しているかもわからない未完成な商品を売るのは簡単ではありません。
こんなふうに売り方の勝ち筋がわかってない状態で営業を入れた結果、全然売れないということがスタートアップでは多発しています。
なぜこうなるかというと、実は“特定の人が売ると、売れてしまうから”です。
PMF前の商品には、「普通の人には売れないけれど、経営陣や営業のプロフェッショナルだと売れるので判断が難しい」という特徴もあります。
創業者もしくは事業責任者クラスの人が、ビジョンや将来像を語りつつ、「もっと便利になっていきます」っていう売り方をすると売れます。そこで「じゃあこれはいけそうだな」と思って他の営業を入れたら、まったく売れないみたいなことが起きるわけです。
なので、ある程度は誰でも売れる勝ち筋が定まるまで、要はPMFするまでは、できるだけスモールな組織で動くのをおすすめします。
活躍できるのはレベル3以上の営業
以前の記事で、営業のスキルをレベル別に表したことがあります。PMFする前の商品でも売れる営業とは、ここで言うレベル3の営業です。
要は「ビジョンセリングができる営業」ということです。
まだ世の中で一般的になっていないプロダクトについて、「このプロダクトを導入したら自分たちの働き方がどう変わるのか」をちゃんと説明できる営業です。
社長と役員が新規事業の商品を売るとそれなりに売れるのに、同じ商品を違う営業が売ると半分以下の受注率になる。これはまさにPMF前の“あるある”です。
それだけ社長や役員、事業部長クラスと、一般の営業の差というのは大きいものです。これはいろんな会社の経営者を見てきて実感します。PMFにおいては創業者の受注はイレギュラーなのでカウントしない、という考え方もあるくらいです。
だいたいの場合、社長自身はPMFしてると思っているので、営業部門の未熟さに原因を求めがちですが、そうではないということです。
一般的にレベル3に到達するには十年程度の営業経験が必要で、世の中の営業のボリュームゾーンはレベル1です。PMFするというのは、そこのボリュームゾーンで売れるようにするということなんです。
なので紹介以外のチャネルで、創業者や経営陣以外のメンバーがちゃんと売れるのが、PMFの1つのシグナルになり得るのだと思います。
走りながら整えていくのが理想
上記のような理由から、マーケティング組織と同じように、営業組織の人員も安易には増やさない方がいいと私は考えます。
セールスレベル1の若手営業でも売れ出したらPMFしたと言えます。それまでは少ない人数で勝ち筋を探っていきましょう。
以前も書きましたが、そもそも営業どころかプロダクトの完成品もいらなかったりします。パワポのスライドだけで十分。それでも引き合いが多くあれば簡単なモノをつくってリアクション見ていく。新規事業の初期はそれくらいでいいと思います。
前に紹介したハサミの話もそうですけど、初期に想定したものとはまったく違う使われ方をされたり、刺さるターゲット、市場が異なることは往々にしてあります。
そのあたりの意思決定や打ち手をやる前から、組織体制やマーケの費用対効果にとらわれすぎるのは不毛です。結局、その通りにならないことのほうが多いので。
最低限のことはある程度、準備する必要がありますが、準備しすぎても無駄になってしまいます。体感としてはすでに売れてる既存事業の50-60%の準備だけ持って、あとは走りながら整えていくのが理想だと思います。
「スタートアップや大企業の新規事業がPMFするために必要なこと」を書いていく連載。シリーズ第5回は“PMF前後の営業組織"について解説しました。
次回はこの続きで、「PMFと営業組織」についてです。よかったらnoteをフォローしてお待ちください。
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