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20241221「柚子の感情」

テーブルに柚子を置いて
しばらく見てみる
何処から来たのかは分からない
いつかの記憶と
今ここに在るもの
香りの懐かしさで
戻りつつ進み
やがて分解されて
種を残す
それからの先は
どうなるのかを
思案しつつ
そっとナイフで
皮を削ぐ
わたしの紅茶に切片が載る

ずっと曇りがちだから
せめて芳しい空間を充し
これからのことと
これまでのことを
思案しつつスプーンを廻す
身体を巡らせて
いつのことだったろうか
記憶の紐を解いて
憶えている螺旋を下りてから
そのひと時を過ごしておこう
どこかで連結しているのであれば
柔らかい衣を纏って
冷たさから守ることにしよう
白黒の間に無数の段階が
今にもそっと置いてある

薬缶の口から蒸気が吠え
とんとんと小さな太鼓を叩き
炎の揺らぎをそのまま見ている
冷たさからの隙間を放ち
熱を受け取っている
感情の上辺をなぞって
これからのことを思案しつつ
まどろみの態度で
何が出るのかを
待っている
通り過ぎる過ちや
帰って来る恩恵の施し
一縷の感覚で
在りもしないことでも
大丈夫だとそう思っている

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snufkinsmile
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