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2023年 読書記録 #15『火のないところに煙は』

「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」。突然の依頼に、かつての凄惨な体験が作家の脳裏に浮かぶ。解けない謎、救えなかった友人、そこから逃げ出した自分。作家は、事件を小説にすることで解決を目論むが――。驚愕の展開とどんでん返しの波状攻撃、そして導かれる最恐の真実。読み始めたら引き返せない、戦慄の暗黒ミステリ!

良いタイトル

さて、今回紹介するのは芦沢央著『火のないところに煙は』です。
「央」と書いて「よう」と読むようです。初見じゃあ読めませんね。

『火のないところに煙は』
まずタイトルが良いですよね。
そこで止めるんかい。
煙は・・・で終わり?立つの?立たないの?
てな具合で非常に気になりますよね。

限りなく実話

本作、あらすじにはミステリーと書いていますがどちらかと言えばホラーです。ミステリー要素のあるホラーという感じですね。
もっと言うなら限りなく実話怪談に近いミステリーですかね。
というのも、本作の主人公は芦沢央さん、その実体験にまつわる云々が描かれているので。
実質実話ですね。

自称ホラー映画全自動見に行くマシン

ホラー映画大好きな私ですが、実はホラー小説はそこまで読みません。
やっぱりホラーは映像があってこそだよな~。
という思いもあってかそこまで積極的には読んできていませんでした。

ところで本作は限りなく実話怪談に近いと言いましたが、
ホラー映画にも似たような形式のものもあります。
モキュメンタリーホラーなんかはそうでしょう。
もしくはフェイクドキュメントもそうでしょう。
作中の人物が撮った映像を流しているという体の映画ですね。
最近で言うと「呪詛」や、昔流行った「パラノーマル・アクティビティ」なんかもそうですね。

そいういったホラー映画の魅力はやはりそのリアリティでしょう。
素人感のある粗めの映像が逆にリアル!怖い!
良いですよね。
そんな魅力が本作にもあります。

アレ?これ現実だっけ?

本作は連作短編集のようになっている。
最初は作者の体験談、続いてそれが縁で送られてきた読者の実体験をもとにしたお話、そして最後には、、、
読んでいると、「あれ?小説だと思って買ったんだが、、、実話か?」
となり、「え?うそ?これホント?ヤダ怖い!」となり、
あとがきまで読んでようやく「やっぱり小説だったんじゃ~ん!」
となります。

ちなみに他にも実話と思わせられるような仕掛けがいっぱいあります。
読んでから色々調べても面白いと思いますよ。

してやられた

なお本作、ミステリーとしてもかなり面白いです。
最後にまぁいろいろと伏線を回収してくださるわけですが。
見事にしてやられました。
ありがとうございます。
見事に騙されるときもちいものです。
まぁどっちかというとホラーメインなのでそこまでガッツリやられた感は無いですが、しっかりミステリーとしても楽しめます。

ぼろ負け

この作者さんの作品、他にも何作か読んでいるのですが、
毎回毎回してやられます。
想像通りになったためしがない。
全戦全敗。
ありがたいものです。

やはり小説、特にミステリーを読んでいて最も気持ちい瞬間は見事に騙された時ではないでしょうか?
ミステリー好き諸君は同意してくれるでしょう。

この作者さんはそれが非常に上手い!

I am 名探偵!

騙されると気持ちいいとは言ったものの、
やはりミステリーを読んでいると「見破ってやるぞ!」と意気込みながら読むものです。
そんな中で最後まで読んだ結果、「やっぱりな」となることがあります。
自分の推理力、洞察力がそれなりにあることが分かって嬉しい反面、「あぁ、予想通りになっちゃったなぁ」と、残念な気持ちが勝ってしまします。
そういうミステリー、結構あります。
面白かったんだけどラストもっと裏切れれたかったなぁ。と。

I am ヘボ探偵…

その点!芦沢央さんの安心感たるや!
非常に巧妙に騙してきます。
全くの予想外!
お手上げ!
そんな感覚を味わいたい人は是非とも芦沢央さん作品を読んでみてはいかがでしょうか。


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