#42『ランチ酒』(著:原田ひ香)を読んだ感想
原田ひ香さんの『ランチ酒』
先日『三人屋』を読んでから、原田さんの食べ物系の小説が読みたい気持ちが強くなったのがきっかけで手に取った1冊です。
あらすじ
感想
食欲と酒欲がそそられる1冊
メニューが目の前にあるのがイメージできる
「そばにいる」だけでも人は互いに変わっていくのだと思った
次々に登場するメニューに食欲と酒欲がそそられる1冊でした。
丼ぶり、お寿司、ハンバーガーなどに、祥子が必ず注文するのがお酒。ランチで食べるメニューはほとんどがなじみ深いものでも、お酒が加わることでどこか新鮮さがありました。そのままでも美味しいけど、お酒を加えたらさらに美味しい。僕は普段昼に飲むことはないですが、本作を読んでランチとお酒による化学反応はどんな感じなのかが気になりました。
そして、『三人屋』を読んでいた時も思っていましたが、原田ひ香さんの表現力によって、メニューの良さをより引き立たせていると思いました。実際に目の前にあるのがイメージできて、食欲と酒欲がそそられます。
(本作で登場するお店は実際にあるようですね。どのお店も美味しそうですが、その中でも阿倍野の自由な雰囲気に惹かれました)
人は互いに見守り、見守られる。祥子の様々な人との関わりに、「そばにいる」だけでも人は互いに変わっていくのだと思いました。
「見守り屋」のお客様も祥子も、どこか「寂しさ」を抱えて生きています。何か特別な一言がなくても、そこにいる、存在するだけで寂しさは和らぎ、明日への活力になる。物珍しさを感じた「見守り屋」という仕事ですが、人間だからこそできる仕事なのだと思いました。
元子さんが言った「どんなことでも、何も変わらないってことはない」というフレーズが印象的です。そのフレーズのように、祥子のランチとの向き合い方も変化が出てきます。現実逃避のためにお酒を飲んでいたのが、次第に前向きに捉えていくようになる。食とお酒だけでなく、人と人との化学反応も印象に残りました。
本作との出会いは、まるで美味しいお店を見つけたような感じです。読了後、すぐに続編を購入しました。