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#98 2024年2月に読んだ本【読書日記】

こんにちは🙂

当記事は、僕が2月に読んだ本の中から9冊をまとめたものです。
それぞれの本で、感想と印象的なフレーズを書きました。
読む本を迷っている方にとって、参考になっていただけたら幸いです。


1.『成瀬は信じた道をいく』(著:宮島未奈)

📖感想
早くも2024年のベスト本約10冊の候補になりました。
ツッコミどころ満載な成瀬たちのやり取り、そしてどの話も濃くて物語に厚みが増した感じがあります。前作以上に好きかもしれません。
主人公の成瀬に目がいきがちですが、相方の島崎、成瀬ガチ勢の小学生、礼儀正しい?YouTuber、クレーマー、観光大使、そして両親……。一人一人が個性的で魅力的。
でもやっぱり、何になるかより、何をするかを大事にする成瀬が最高に映えていました。
今の社会に漂う鬱屈とした雰囲気を一掃する力がこの物語にはあると思います。
何よりも、これからも成瀬あかり史を見届けたい気持ちでいっぱいですね。
前作『成瀬は天下を取りにいく』の登場人物や内容に触れている場面が所々であるので、一回読んだけど内容を忘れてしまった方は簡単に読み返してみるといいかも。

📖印象的なフレーズ

「成瀬さんは将来何になるんですか?」
「先のことはわからないからなんとも言えないが……。何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」

『成瀬は信じた道をいく』

「瀬をはやみ〜の成瀬あかりでございます」

『成瀬は信じた道をいく』


2.『詩のトリセツ』(著:小林真大)

📖感想
詩を読んでいると、心に響く詩があれば、何度読んでもよくわからない詩があります。僕も詩を読んでいてそういったことがありました。そんな詩を理解するために、本作はリズム、イメージ、構造の観点から書かれた1冊です。
詩は短い文でありながら、すごく奥が深い芸術作品。そして、美術や音楽と違い、詩は音楽のようなリズムを伝えると同時に、美術ような視覚的なイメージを伝えることができる。詩だからこそ表現できることがあるのです。それを、本書を読んでいて強く感じました。詩人たちが紡いだ文章には、一文一文に様々な意味が込められていて、とても繊細なものであることも分かった気がします。
また、日本語の特徴や表現の種類はとても勉強になるものでした。
これから詩や小説を読むのがさらに楽しくなりそうです。

📖印象的なフレーズ

このように分析してみると、詩は決して一読して分かるような存在ではないことが理解できます。
実際、今回の詩一つとってみても、「余白」「リズム」「イメージ」「逆説」など、一つひとつの要素が絶妙に反響しあうことによって、はじめて調和のとれた作品を作りあげていることが分かるかもしれません。詩は何度読んでも新しい発見が味わえる、とても奥が深い芸術作品なのです。

『詩のトリセツ』


3.『ゴールデンスランバー』(著:伊坂幸太郎)

📖感想
もう、最高の一言しかないです。
「青柳、逃げろ」と思いながらエールを送っていましたね。
過去の出来事が面白いようにつながり、夢中になって読み進めた先の、これ以上ないくらいの爽快感と感動に目頭が熱くなりました。
立ち向かい、逃げる青柳たちに勇気をもらい、習慣と信頼を胸に刻んで生きていこうと思いました。
一癖ある個性的な登場人物たち、スリリングな展開。まさに伊坂ワールド全開の作品。樽からワインが流れ出るように記憶が溢れ出す、のような表現も印象的です。
そして、学生時代にファミレスでひたすら喋っていたひと時を思い出しました。決して意味があったとはいえないあの時間って尊かったんだな。
久しぶりに仙台の空気を吸いたい気持ちがわいています。

📖印象的なフレーズ

「人間の最大の武器は何だか知ってるか」
「さあ」
「習慣と信頼だ」

『ゴールデンスランバー』

「花火ってのは、いろんな場所で、いろんな人間が見てるだろ。もしかすると自分が見てる今、別のところで昔の友達が同じものを眺めてるのかもしれねえな、なんて思うと愉快じゃねえか?たぶんな、そん時は相手も同じこと考えてんじゃねえかな。俺はそう思うよ」
「思い出っつうのは、だいたい、似たきっかけで復活するんだよ。自分が思い出してれば、相手も思い出してる」

『ゴールデンスランバー』

「名乗らない、正義の味方のおまえたち、本当に雅春が犯人だと信じているのなら、賭けてみろ。金じゃねえぞ、何か自分の人生にとって大事なものを賭けろ。おまえたちは今、それだけのことをやっているんだ。俺たちの人生を、勢いだけで潰す気だ。いいか、これがおまえたちの仕事だということは認める。仕事というのはそういうものだ。ただな、自分の仕事が他人の人生を台無しにするかもしれねえんだったら、覚悟はいるんだよ」

『ゴールデンスランバー』


4.『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』(著:辻村深月)

📖感想
「辻村ワールドすごろく」のラストを飾る作品。
嫉妬、比較、プライド、探り合い……。序盤から心の闇を浮き彫りにした心理描写に、ゾクゾクが止まらなかったです。
母と娘の関係。地方社会で生きること。結婚や出産。
男性視点からはなかなかイメージしづらい生きづらさに、だからこそ突き刺さりました。女性にとっての結婚や出産は、男性のそれとは意味合いが違ってくる。そして、母は自分で決められない。自由に自分らしく生きるっていうのは簡単だけど実際には難しいんだなと思いました。
それでも一筋の光が照らされたようなラストに、目頭が熱くなりました。タイトルの意味を知った時、胸が締め付けられるでしょう。
なんというか、あまりにも言語化されていて怖いくらいです。覚悟をして読んだ方がいいかもしれません。

📖印象的なフレーズ

三十歳という年齢は、あの頃の私たちにとってさえもっと大人だと思えていたのに、今も私は自分や友達に対して「男の子」「女の子」という言葉を使う。ほとんど無意識に。私たちは大人ではなく、かといって子供では許されないのに、まだどうしようもなく生身で未熟なのだ。四十代になっても、五十代になっても、ひょっとしたら一生そうなのかもしれない。

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』

普通、普通、普通。
その枠を外れる異常。あなたの家は、異常である。
だけど、その普通に正解はあるのか。それはあなたの願望が反映されていないだろうか。普通じゃない、と断じられたチエミに教えたかった。どの普通にも、どの娘にも、正解はない。

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』

「メロンパンって、どうあがいても単なる菓子パンで、メロン本体になんかなれない。もともと違うものなのに、パンがメロンになれなんて試練や宿命を背負わされてるのは悲劇だし、一歩間違えればジョークだって。果汁入れたところで、そんなのメロンのエゴなりよ」

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』


5.『自選 谷川俊太郎詩集』(著:谷川俊太郎)

📖感想
日本を代表する詩人・谷川俊太郎さんが自ら選んだ詩、173篇が掲載されている詩集。
「ことばあそびうた」「わらべうた」のような子どもが楽しめる詩や、「日本語のレッスン」のようにこれが詩?と思う実験的な詩も。その幅広さに、言葉、表現の世界の広さを感じられました。
音楽を聴いているかのようなリズムの良さに加えて、響いたり、考えさせられたり、感情が揺さぶられる詩がたくさんあります。印象に残った詩は、これからも何回も読み返したいです。

📖印象的なフレーズ

私の書く言葉には値段がつくことがあります

『自選 谷川俊太郎詩集』
『私』「自己紹介」


6.『エヴァーグリーン・ゲーム』(著:石井仁蔵)

📖感想
チェスに魅せられ、人生を捧げる者たちの物語。
ひょんなことがきっかけでチェスを始め、その魅力に憑りつかれた透、晴紀、冴理、釣崎の4人。互いに境遇が違う4人は、それぞれが実力をつけていき、チェスプレイヤー日本一を決めるチェスワングランプリに挑むことになった。
芸術でありスポーツでもあるチェス。それは、これ以上ない自己表現の場でもあり、人生そのものにも通じるものがある。それぞれが自らの生き方を問いかけながら、鬼気迫る闘いを盤上で繰り広げる様子に魅せられました。
そして、好きを貫くこと、極めることはすごく素敵なことだと改めて思いました。
僕はチェスのルールがわからない中で読み始めました。細かいルールは難しくわからないままでしたが、雰囲気はしっかり感じ取れて、いつの間にかその魅力に惹きつけられました。そして、今アプリをダウンロードしてチェスをやっています。
展開が早く、物語に厚みが欲しいと感じた部分はありますが、それだけもっと彼らの闘いを見ていたいと思っていました。

📖印象的なフレーズ

年齢より才能より、大事なものがある。もうわかってるだろ?

『エヴァーグリーン・ゲーム』

多川が言っていた。チェスは物語だと。
いかにも少女趣味に思えたが今はその意味がわかる。
チェスがなければ日々の活力を得られなかった。チェスは食事だ。
チェスがなければ食い扶持を稼げなかった。チェスは狩猟だ。
チェスがなければ生き延びられなかった。チェスは格闘だ。
チェスがなければアメリカでやっていけなかった。チェスは言語だ。

『エヴァーグリーン・ゲーム』


7.『コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!』(著:いまがわゆい)

📖感想
書店員のいまがわゆいさんが、書店員の仕事内容や仕事中のあるある、書店や本に関する知識などの書店員のリアルが四コマ漫画形式で描かれている1冊。
かわいくて癒されるイラストに、わかりやすくてためになるコラム。そして、書店員さんたちの本に対する愛のすごさが伝わってきて、もともと好きだった書店がさらに好きになりました。1日の流れによる構成となっているので、まるで書店員さんの一日を追っているような感じ。これからは、書店員さんの動きや本の並びを意識して見てしまいそうですね。
コラムを読んで感じたのは、発注の難しさ。好きなだけ発注できるわけではないので、購買層や世の中の情報に常に敏感になる必要があるんだなと思いました。1冊の本の価格の内訳を見ると、万引きがいかにお店にとって損失になるのかが分かります。購入した本は購入済みとわかるように僕も協力したいですね。
図書館に行った際に面陳されていた本で、ピンとくるものを感じて借りました。読んでみて、手元に残しておきたいと思ったので改めて購入します。

📖印象的なフレーズ

書店側の1冊販売した時の利益は約2割……
ということは単純計算で同じ金額の本を5冊販売しないと1冊の売り上げにはならないんです……
それなのに万引きでさらにマイナスになるなんてもってのほか!
絶対にやめてください!

『コミックエッセイ 本屋図鑑 だから書店員はやめられない!』


8.『私雨邸の殺人に関する各人の視点』(著:渡辺優)

📖感想
群像劇が好きな僕にとってたまらない作品でした。
本作は探偵不在のミステリで、何人かの視点で話が進む構成になっています。それぞれの推理が繰り広げられますが、場面ごとにあっと驚くことがあったりと、どんな展開になるのか最後まで気になって仕方なかったです。
クローズドな環境は、自分でも知らなかった一面を見せることを強く感じました。各視点の人物たちの心境の変化が細かく描かれていて、感情移入したりそうでなかったり。犯人がわかったときは、そうであってほしくなかったとの気持ちがわきました。そして、考えさせられるラスト。
個人的には渡辺優さんの作品は合っているというか、これからも他の作品を追っていきたいと思いました。

📖印象的なフレーズ

本当に、変な状況だな、と思う。こうして会ったばかりの人間とふつうに会話をしているというのも、人見知りである私にとっては充分ふつうではない状態だ。なぜか緊張もしなかった。いつの間にか、ツイッターを開きたい気持ちも消えている。いつもそばに寄り添うようにあった上司たちへの憎しみも、なんだか今は遠く感じる。私が自分だと思っていたもの——人見知り、ツイ廃、社畜は、本当の私ではなかった。ただ環境に生み出された人格だった。そんなふうにさえ感じられる。

『私雨邸の殺人に関する各人の視点』


9.『神に愛されていた』(著:木爾チレン)

📖感想
強烈すぎる闇と光に、しばらく放心状態になりました。
希望と絶望、羨望と嫉妬。
それゆえの狂気、狂気、狂気……。
冴理と天音の2人が持つ痛みと苦しさがこれ以上なく伝わってきて、ひたすらに心がチクチクと痛みました。引いてしまうくらいの狂気さですが、でも2人の境遇を考えるとそうなっても仕方ないだろうなとも思えます。そして、あまりにも切ない展開からの、その先に灯る優しい光に感動しました。
光と闇は表裏一体。光があるからこそ闇が生まれ、闇があるからこそ光は輝かしいものとなる。そして、両者はときに痛みを抱えることがある。
物語の中で、痛みが小説になると書いてありますが、まさにその痛みが表れていて、著者の木爾さんの覚悟が伝わってくるようでした。
2024年に読んだ本を振り返る時に、本作は特に印象的だった本の中で三本の指に入るかもしれない。そのくらいの作品でした。

📖印象的なフレーズ

「小説っていうのは、自分のなかから膿をしぼりだす作業や」
「膿、ですか」
「そうや。ニキビつぶすと、白いのでてくるやろ。あれや」
「汚いもんってことですか」
「違う。しぼりだすとき痛いやろ」
「はい」
「その痛みが、小説になるんや」

『神に愛されていた』

「才能があるって、感じるのも、才能やとあたしは思うけどな」

『神に愛されていた』

その日私は、みんなの話を聞きながら、大人になるというのは、果てを知ることなのだと、そう思った。
私も含めて、みんなちゃんと自分の果てを知っていた。
そして、それを受け入れながら生きていた。

『神に愛されていた』


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