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#97 2024年1月に読んだ本【読書日記】

こんにちは🙂

当記事は、僕が2024年の1月に読んだ本の中から10冊をまとめたものです。
それぞれの本で、感想と印象的なフレーズを書きました。
読む本を迷っている方にとって、参考になっていただけたら幸いです。


1.『恋できみが死なない理由』(著:最果タヒ)

📖感想
詩人・最果タヒさんのエッセイ集。
読み始めの予定を変更するくらい、引き込まれました。
「共感」が求められているように感じる世の中だけど、本来、人と人は分かり合えないもの。その忘れがちな当たり前のことを最果さんは教えてくれます。そして、分かり合えないからこそ、愛おしいのだなと思います。
様々な物事に対して自分自身が抱く感情を大切にしようと思いました。
1つ1つの文章表現が痺れるもので、それでいてスッと心に入り、力がわいてきました。最果さんの詩もエッセイも、心の奥底にある感情を引き出してくれる感じがします。現実を突きつけられるとともに、現実を生き抜くことに対してエールを送られているようでした。

📖印象的なフレーズ

自分の気持ちを言葉にする、という行為は、自分への「暴力」でもあると思っています。言葉はそこまで、柔軟なものではない。いろんな人が、いろんな人生を生きて、見つけてきた感情がどれも同じなはずはないのに、「好き」「嫌い」「ムカつく」「うれしい」、言葉にすればまるですべてが同じ形をしているみたい。本当は、その人の言葉でしか、その人の感情は表せない。

『恋できみが死なない理由』


2.『レーエンデ国物語 喝采か沈黙か』(著:多崎礼)

📖感想
レーエンデを取り巻く様相は変わっていくけど、歴史が紡いできた魂は変わっていない。まずその点に感動しました。
前巻の影を追っている構成に痺れ、そして前2巻とはまた違った驚きが待っていました。芸術の力で真の自由を取り戻すために闘ったランベール兄弟を称えたいです。
リーアンの「芸術に貴賎はない」の言葉が響きました。 即効性があるわけではないけど、物理的な力以上のものが芸術にはあると思います。
兄弟であることによる心の葛藤。天賦の才能か、人並みの幸せか。嫉妬や羨望、周りとの比較に対しての自らの気持ちの折り合いのつけ方についても考えさせられます。10年前や5年前の自分ではここまで響かなかったかもしれない。大人のためのファンタジーたるゆえんがわかった気がします。
今この時に、レーエンデ国物語シリーズに出会えたことを幸せに感じます。

📖印象的なフレーズ

「芸術に貴賤はない。貧富の差も民族の差も飛び越えて誰の心にも等しく響く。魂が打ち震える感動に抗える者はいない。つまりレーエンデ人にもイジョルニ人にも響く戯曲があれば、このクソったれな世界は変えられるってことだ」

『レーエンデ国物語 喝采か沈黙か』

人間には善い面も悪い面もある。善良な人間もいれば、あくどい人間もいる。
人種や貴賤や性別で分別出来るほど人間は単純ではない。

『レーエンデ国物語 喝采か沈黙か』


3.『さみしい夜にはペンを持て』(著:古賀史健)

📖感想
中学三年生のタコジローくんは、クラスメイトにからかわれていた。ある日、学校に行きたくないと向かった先の公園でヤドカリおじさんと出会います。そこでタコジローくんはある教えを受けることに……。
日記を書くことの真髄が詰まっている1冊だと思いました。
情報にあふれた世の中で大事なことは、自分で考えること。そして、自分自身を知ること。書くという冒険を通じて自分を知ることで、未来の自分へのプレゼントになる。僕も日々感じたことを書き始めて1年半以上が経ちますが、自分自身のことがうっすらではあるけど見えてきて、気持ちも前向きになった感じがあります。また、表現力を色鉛筆の本数で表すなど、書き方の例えがすごくわかりやすくてスッと頭の中に入ってきました。物語もシンプルな構成ながら、感情移入させられるものでした。
中高生向けとはありますが、大人が読んでも響くものがあると思います。

📖印象的なフレーズ

「書くときのぼくたちは『手を動かすこと』が面倒くさいんじゃない。『頭を動かすこと』が面倒くさいんだ。なにかを書くためには、それについて真剣に考えなきゃいけない。その『考える』という手間を、みんな面倒に感じているんだ。書くことは、考えることだからね」
「書くことは考えること?」
「そう。考えることは書くことだと言っても、かまわない」

『さみしい夜にはペンを持て』

「いいかい、タコジローくん。ぼくたちが抱える『だれにも言えないこと』は、そのほとんどが『自分にも言えないこと』でもあるんだ」

『さみしい夜にはペンを持て』


4.『世界地図の下書き』(著:朝井リョウ)

📖感想
僕たちが見る景色は、あくまで世界地図の中にある一端でしかない。小さい頃は、見る景色はさらに狭いものとなる。どうにもならない現実に直面する様子に切なさを感じながら、その現実に対して抗う太輔たち。逃げることも選択肢の一つで、どんな選択をしても道の太さは変わらない。新たな世界が開けていく感じに、明日への希望の光を見た気がしました。
情景や学校行事、かわいらしさのあるイタズラ、大人に過度に怯える様子など。朝井さんが紡ぐ文章を通じて、身体も心も小学生に戻った感じが味わえます。 甘酸っぱさの一歩手前のような、青春の香りもほのかに漂ってくる1冊でした。

📖印象的なフレーズ

「どんな道を選んでも、それが逃げ道だって言われるような道でも、その先に延びる道の太さはこれまでと同じなの。同じだけの希望があるの。どんどん道が細くなっていったりなんか、絶対にしない」

『世界地図の下書き』


5.『死んでしまう系のぼくらに』(著:最果タヒ)

📖感想
全体を通じて寂しさが漂っていて、孤独を浮き彫りにさせるような印象があります。モヤモヤとした感情をひたすら揺さぶられている感じもしました。不思議と心地よくもあります。
言葉の本来の意味を通り越しているような自由な文体だからこそ、深く響くものがある。それを、最果さんの詩を読むと感じます。普段は情報の伝達で使われがちな言葉ですが、真っ白なキャンバスに絵を描くように自由に使うことも大切にしたいと思いました。
特に印象的な詩は、「絆未満の関係性について」「きえて」「2013年生まれ」「花束の詩」「レコードの詩」「冬の長い線」です。

📖印象的なフレーズ

かなしくはないけれどさみしい、という感情が、ひとの感情の中でいちばん透明に近い色をしているってことを、知っているのは機械だけで、わたしは名前を入力しながらなんども肯定の言葉を抽出した。

『死んでしまう系のぼくらに』

言葉だって、絵の具と変わらない。ただの語感。ただの色彩。リンゴや信号の色を伝える為だけに赤色があるわけではないように、言葉も、情報を伝える為だけに存在するわけじゃない。

『死んでしまう系のぼくらに』
あとがき


6.『スロウハイツの神様(上)』(著:辻村深月)

📖感想
本作は2年ぶりに再読しました。
上巻は、住人たちを掘り下げる場面が多く、冗長的なのは否めません。
それでも改めて読み返すと、会話の一つ一つが響き、環をはじめとした住人たちの個性的で強烈なキャラに、初読の時よりも引き込まれました。
辻村さんといえば心理描写が繊細に描かれていることですが、本作では嫉妬の描き方が上手いなと強く感じます。登場人物も一人一人がすごく作り込まれていて、まるで現実にいるような感じなんですよね。
そして、エンヤと環の別れのシーンは再読しても強く印象に残る名場面です。

📖印象的なフレーズ

『僕の書いたものが、そこまでその人に影響を与えたことを、ある意味では光栄に思います。人間の価値観を揺るがせてしまうなんて、小説って、僕が思う以上にすごい。作家冥利に尽きます』

『スロウハイツの神様(上)』

「誰かと対等になりたいなんて、声に出して言っちゃいけないの。美学と意地をモチベーションにして描きたいならそれは絶対だよ。私は口が裂けても言わない。言った瞬間から、自分の身勝手な事情に相手を巻き込むことになる。まして、それを見せるなんてなおのことダメだ。かっこ悪い」

『スロウハイツの神様(上)』

「私は自殺を考えたことがあります。それも何回もです。私は全部を投げ出したくなりました。死んでも、惜しいことは何もないって考えた後で、だけど、来月チヨダ先生の新しい本が読めるかもしれないんだなぁと思うと、簡単に自殺の決心が壊れました」

『スロウハイツの神様(上)』


7.『スロウハイツの神様(下)』(著:辻村深月)

📖感想
上巻と同じく、2年ぶりに再読しました。
これ以上ないくらい、創作への、そして人への愛に満ちている1冊だと思います。
6人の住人たちのしたたかさ、優しさに前半から感動して、終盤の伏線回収にさらに感動しました。読むと、自分にとっての「好き」を優しく肯定された感じがして、現実と向き合う力を与えてくれます。
再読してみて、本作がさらに好きになりました。初読では気付かなかった伏線も確認でき、受け付けがたかった人物が愛おしくなったり、本当に寝る間も惜しいくらいでした。そして、本作の登場人物たちって数ある辻村作品の中でもかなり個性的で、だからこそ愛おしく感じますね(特に環と公輝)。最終章は圧巻の一言ですが、最終章に入る前も目頭が熱くなります。
これからも、ずっとずっと大切にしたい物語です。

📖印象的なフレーズ

「ズルして手に入れた幸せは、長続きしたらいけないの。私はそんなの認めない」

『スロウハイツの神様(下)』

「怒りのモチベーションって、それだけでは案外、長く保たないものなんですよ。環の場合、創作意欲は確かにそこからきてるんでしょうけど、それだけじゃないはずです。持続させたいなら、怒り以上のもっと別のことをそこに織り交ぜないと。ユーモアとか、愛とか」

『スロウハイツの神様(下)』

「世界と繋がりたいなら、自分の力でそれを実現させなさい」

『スロウハイツの神様(下)』


8.『V.T.R.』(著:辻村深月(チヨダ・コーキ))

📖感想
『スロウハイツの神様』の作中作で、その中の登場人物であるチヨダ・コーキのデビュー作。
誰を殺しても罪に問われないマーダー・ライセンスの資格を持つティーは、3年前に別れたアールを追う物語。
作中作といって侮っていたかもしれない。ラストに待っていた真相に驚きでした。本人と同じく、チヨダ・コーキが描く世界にも「愛」を感じさせますね。コーキの普段の姿からはイメージできない文体でしたが、中身は本人の内面が表れていたように感じます。
そして、解説のこれ以上ない人選!その内容にもすごく響くものがありました。

📖印象的なフレーズ

「人殺しに、美学はないよ」

『V.T.R.』


9.『図解 コーヒー一年生』(著:粕谷哲)

📖感想
普段何気なく飲んでいるコーヒーの見え方が変わりました。
コーヒーの淹れ方、選び方、必要な道具などが分かりやすく載っているのに加えて、産地がアイドルグループのように擬人化されています。知識が深まるだけでなく、コーヒーがより愛おしくなれると思いました。
淹れ方ひとつで味が全然違ってくるし、どんな味か推理したり言語化する楽しさがある。たった1杯で色んな世界が見れるコーヒーは奥が深く、とても魅力的なことが本書を通じて分かりました。
読み終わってすぐにネットで道具を探していましたね。カフェに行くのもさらに楽しくなりそうです。「ハンドドリップでおいしいコーヒーを淹れる」が今年のやりたいことリストに加わりました。

📖印象的なフレーズ

「こういう味なんじゃないか?」と推理することがまず楽しい。また推理と比べて、「雑味が少なかった」「ちょっと苦かった」「推理どおりだった」などといった感想が生まれるのが楽しい。そしてそういった「推理と感想」のくり返しこそが、おいしいコーヒーに出会うための近道だと思います。

『図解 コーヒー一年生』


10.『すべて真夜中の恋人たち』(著:川上未映子)

📖感想
人生は、自分の意志で生きていても、流されて生きていても、色んなことが起こります。僕も冬子のように自己主張が弱い部分があるので、彼女の身に起こる出来事や心理描写に怖さを感じながら読んでいました。
その中で、相手がどう思うかや誰かが何を言おうがに関係なく、自分が抱いた好きという気持ちは大事にしようと思いました。
何よりも一つ一つの表現が印象的。情景描写、心理描写が丁寧で場面がイメージしやすく、かつとても繊細で美しかったです。
そして、淀んだ暗さにある中で光を見たような感じがするラストでした。

📖印象的なフレーズ

昼間のおおな光が去って、残された半分がありったけのちからで光ってみせるから、真夜中の光はとくべつなんですよ。

『すべて真夜中の恋人たち』

「光というのは、ほんとうに不思議なものなんですね。正体がよくわからないんです。わかったと思うこともあるんですが、しかし結局はよくわからないんですね。子どものころから不思議だ不思議だと思っていて、それが高じて勉強を始めたんです」

『すべて真夜中の恋人たち』



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