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#39『しろがねの葉』(著:千早茜)を読んだ感想

千早茜さんの『しろがねの葉』

第168回直木賞受賞作です。

直木賞受賞作が発表された今年の1月以降、書店の店頭で見かける方も多いのではないでしょうか?
僕も直木賞をきっかけに読みました。


あらすじ

男たちは命を賭して穴を穿つ。山に、私の躰の中に――
戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!

「BOOK」データベースより

感想

  • 運命に抗い続けるウメの生き様は銀のように輝いて見えた

  • 何か1つの言葉では言いきれないような壮大さに満ちていた


戦国末期の石見銀山が舞台の少女ウメによる物語。
ウメは稀代の山師と呼ばれる喜兵衛に拾われて坑道で働き始めます。そこからのウメの生涯が描かれています。


喜兵衛との出会いがきっかけで銀堀になることを望むウメですが、彼女には自身の力では変えられない運命が待っています。
一番に大きいのは「性別の違い」
成長するにつれて男性との体力差等により銀堀になるという望みは叶わない。さらに彼女が関わってきた愛する人との別れ。

数々のもどかしさ、屈辱、悲しみに苛まれますが、それでも運命に抗い続けて生きる選択をするウメ。その生き様は銀堀たちが求めていた銀のように輝いて見えました。

儚さや切なさ、緊迫感の連続に一瞬も見逃せなかった作品です。


何か1つの言葉では言いきれないような壮大さに満ちていたような気がします。読了後は感動だけではなく、様々な感情が混じり合った感じがしました。

本作で考えさせられたのは「生きること」について。でも、その言葉だけで片付けられない何かを感じました。僕が特に感じたことは、人は互いに支え合いながらでないと生きていけないことです。

また、物語の中でウメと関わる喜兵衛、隼人、龍の3人も力強さや優しさがあり魅力的でした。


時代小説は今回初めて読みました。
序盤は探りながらでしたが、いつの間にか物語に見入っていました。本作の石見銀山の銀堀たちは常に「死」と隣り合わせの状況。だからこそ、自らの生き方についても強く考えさせられるのではないかと思います。

各章で印象的なシーンがありますが、その中で特に印象的だったのは「喜兵衛が弱っていたおとよを治す」「ウメが成長した菊と会う」「龍が石像を彫る」の3つです。

印象的なフレーズ

「おまえも大きなったらわかる。なんで生きとるのか、わからんようになる時がある」

『しろがねの葉』

「わしが教えたことはな、おまえの好きに使うがええ。じゃが、人の欲が絡むと面倒なことも起きる。熟れた山葡萄だとて、獣との奪い合いになる。銀に狂れた人間は獣よりも恐ろしいけえのう。自分の身が守れんうちは、なんも知らん童っぱの顔をしとるがええ。いざという時の切り札にとっておくんじゃ」

『しろがねの葉』

「死にたいと望むことは生きたいと同義なんかもしれん」

『しろがねの葉』

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