「ルックバック」感想
映画「ルックバック」を観たので雑に感想を残しておく。
圧倒的な画力
まず作画、アニメーションがとにかくすごかった。特に印象に残っているシーンは、
藤野が家に来たことを京本が悟り、部屋そして家から飛び出るシーン
京本にファンであることを告白された後の帰り道で藤野が走っているシーン
の2つ。そのどちらも迫力があるのはもちろんのこと、動きの一つ一つに生命の生き生きとした躍動感を覚えた。
絵と音でストーリーを語る
言葉ではなく、絵と音で語りかけてくるシーンが多かった。
窓の外から見える風景で季節の移ろいや時の流れを表現
京本の部屋の外に並べられたスケッチブックの量で京本の努力を表現
母からの着信音で京本の身に最悪な事態が起きたことを表現
連載が進む中、藤野の周りからアシスタントが消えていくことから、京本を越えるようなパートナーが見つかっていないことを表現
人によっては言葉でストーリーを語る作品の方が好きという人もいるだろうが、自分は言葉ではなく絵や音で語りかけてくる作品の方が好きだ。言葉で語られる、説明されるとそれ以外の解釈の余地が少ないけど、絵や音だと解釈の余白が広く、鑑賞者1人1人がそれぞれ違った形でストーリーを感じ取ることができる。
ルックバックについて
藤野の後ろ姿を映したカットが多い。
藤野が机に向かって絵を描いているカット
藤野が京本の手を引っ張って走るカット
ルックバック = Look Backには、そのままの意味で「後ろを向く」「振り返る」といった意味があることを踏まえると、藤野が振り返った先にはいつも京本がいた。藤野と同じ部屋で絵を描く京本。藤野に引っ張られ走る京本。
そして藤野の背中を追いかける京本は「藤野のおかげで部屋を飛び出せた」「外の世界に出ることができた」と藤野に感謝していた。
「京本も私の背中を見て成長するんだなぁ」「私についてくれば全部うまくいく」といったセリフにもあるように、藤野自身も京本を引っ張ている、導いているという自負があったように思う。
しかし、大学進学を目指すことを機に藤野のもとを離れ、そして事件に巻き込まれ二度と後ろに京本が現れることはないと悟った時、藤野は「自分が京本を導いた」のではなく、「京本に自分が導かれていた」のだと気が付いたように思う。
なんたって、一度漫画を描くことを諦めた時に救ってくれた、導いてくれたのは京本の一言なのだから。
京本に対して「1人で生きていける訳ないじゃん」と言っていた藤野だったけど、一番独り立ちできていなかったのは藤野だったのかもしれない。
「どうして漫画を描くの?」
藤野の結論は「自分が漫画を通じて京本に救われたように、自分も漫画を通じて誰かを救いたい」なんじゃないかなと個人的に思った。
その他に気が付いたこと
京本と藤野の二人のシーンを窓の外から撮ったシーンが多数あった。
少年週刊誌に初めて二人の作品が載ったのをコンビニで確認して喜んでいるシーン
窓に付いた蝉を二人で眺めているシーン
街に遊びに行った帰りに電車で二人で楽しそうに話しているシーン
これらは彼女二人の中でだけ共有されたピュアで美しい時間であり、第三者視点で見ている映画の観客である我々は、その二人だけの時間と空間に入り込むことができない、許されていないように感じた。
まとめ
とにかく最高の映画です。2回観ました。映画館で鑑賞することをお勧めします。