アラフィフ設計者の読書記録【8月】
今月から、月イチで読書記録を投稿していきます。8月は、9冊読みました。
【読書生活の振り返りメモ】
酷暑で自宅時間が長く、厚めの本にもチャレンジできた
彬子女王のエッセイ、平野さんの新書、中竹さんのリーダー論から生き方について多くの学びを得た
国牢城 米澤穂信
米澤さんの直木賞受賞作。直木賞にハンデあるらしい歴史小説の点でも、受賞した当時に話題となった本。文庫化されてずっと気になっていて、この夏にようやく手に取って読んだ。
歴史フィクション+ミステリーの書き味で、黒田官兵衛が探偵役の設定。織田信長を裏切った荒木村重が長引く籠城にメンタルが疲れて、家臣を誰も信じられなくなっていく様子が描かれる。段々と家臣や民衆の心が村重から離れていく様子と合わせ、ユニークな切り口で読み応え十分。さすが直木賞。
歴史好きにも謎解き好きにも薦めたい一冊。
スマホ断ち キャサリン・プライス 笹田もと子(訳)
子供の夏休みでスマホの悪影響、特に集中力を削ぐという面で何が語られているかが気になり再読。
人間の本能は、気が散るのが通常モード。古代は身の危険や狩猟の情報収集といった本能的な執着だったのが、現代ではスマホいじりに置き換わっているとのこと。また、スマホで集中が難しくなる理由を脳の働きの観点で解説されている内容が印象深かった。具体的には、脳の司令塔である前頭前野は目にする情報量が増えるごとに決断疲れを招き集中力が切れやすくなること、刺激の洪水にさらされ続けると脳が力を使い果たし邪魔な情報を無視できなくなって集中が切れるということが書かれていた。
★赤と青のガウン 彬子女王
8月の中で、最も学びが深かった本として★をつけた。
きっかけは新聞の書評。その後、書店の入口に平積みされていたのが目に留まって購入。ちょうど、「旅から得られる人生観」 の問いに答えてくれる本を探していたので、期待して読み始めた。
この本は留学記なので、旅というには拡大解釈だが多くの気づきがあった。文章は平易な言葉で読みやすい一方で、内容の解像度は高い点でも素晴らしく清々しい気分で読み終えることができた。
本から彬子女王のお人柄に大変感銘を受けた。ちょっと惨めな時のことも余すことなく自己開示したり、恵まれた環境のことも決して卑下せず周囲への感謝に置き換えているところなど、とても親しみを持てるエピソードが随所に散りばめられている。オックスフォード大学で博士を取るのは大変そうだが、先生や仲間の助けを得て地道に研究活動を進められている様子が丁寧に描かれている。キーワードは「感謝」。これを大切に行動されている彬子女王だからこそ、周りには自然と助けとなる人達が集まってくるのだろう。
自分も「感謝」を口にする習慣を身につけようと気づかせてくれた本となった。
私とは何か 「個人」から「分人」へ 平野啓一郎
日々のコミュニケーションにおいて、「自分らしくない」と自己嫌悪に陥ることが少なからずあるのだが、これからは少し気楽に考えられそうだなと癒された本。
平野さんは「本当の自分(自分らしさ)」と「ウソの自分(自分らしくない)」の分類そのものに疑問を提示している。1人の人間とは、複数の「分人」の集合体というのが平野さんの考え方で、「本当の自分」は幻想だとも語っている。そうか、そういう考え方もあるんだなと新鮮だった。
自分に厳しすぎる人、自己嫌悪に陥っている人、自己肯定感を高めたい人にオススメしたい。
判断と決断 中竹竜二
本の要約「flier」の有料サービス「book labo」の中で、中竹さんを囲む読書会のアーカイブ動画をきっかけに図書館で借りた本。
シンクタンク勤務のキャリアを生かし構造化されたリーダー論とラガーマンとしての熱い想いがミックスされて読み応えがあった。印象的な学びは次の3つ。
「判断」とは、過去について評価すること。必要なのは、「正しい判断」
「決断」とは、未来の方向性を打ち出すこと。必要なのは、「強い決断」
リーダーは、「言葉を操る」ことを意識したほうがいい
正しい判断には、客観的な情報収集が必要であり、判断のあとにはものごとが整理され「冷静」がもたらされる。強い決断には、選択肢を前に迷っても考え抜いた末に未来をイメージすることが必要であり、決断のあとには「ワクワク」して新しい一歩を踏み出し行動を起こすことができると述べられている。シンプルな言葉でありつつ、実体験を伴った説得力の高いメッセージとして胸に刻まれた。
リーダーシップ論の本だが、2006-2009年当時の早稲田を思い返したいラグビーファンにもオススメの一冊。
その他:ミレニアム 1上下(スティーグ・ラーソン)、 もものかんづめ(さくらももこ)、 刺青・秘密(谷崎潤一郎)
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