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ゴール間近で失速する人:心理の壁をどう乗り越えるか
「もう少しで終わりなのに、なぜかペースが落ちてしまう」。こんな経験はありませんか?学校の宿題や自由研究、さらには定期テストの勉強でも、最初は勢いよく取り組むのに、ゴールが見えた途端に手が止まってしまう。
実は、こうした現象には心理的な理由があるのです。心理学の研究によると、人は目標に近づくと失敗への恐怖が増大し、行動が抑制される傾向があるとされています【1】。これがいわゆる「完璧主義」の落とし穴です。
完璧主義の落とし穴
たとえば、「完璧に仕上げたい」という気持ちが強い人ほど、失速しやすいことがわかっています。自由研究のポスター作りを思い浮かべてみてください。「文字をきれいに書こう」「装飾も細かく工夫しよう」とこだわるあまり、肝心の内容の準備が間に合わなくなった、なんてことはありませんか?
心理学者の中には完璧主義の傾向がある人は重要でない部分に過剰に時間を費やすため、効率的に作業を進めることが難しくなると指摘する者もいます【2】。また、完璧主義者はミスを極端に恐れるため、ストレスを抱えやすく、結果的に無気力感に陥ることがあると報告されています【3】。
どうすれば心理的な壁を乗り越えられるのか
では、こうした心理の壁をどう乗り越えればいいのでしょうか?ポイントは、「目標の立て方」にあります。
たとえば、宿題を進めるとき、「完璧なノートを作ろう」と思うのではなく、「大事なポイントを押さえたノートを作ればいい」と考えるだけで、気持ちが楽になります。こうした柔軟な目標設定は、心理学で「行動に対する柔軟性」を高める方法としても知られています【4】。
また、大きな目標を達成するには、「区切り」を意識するのも効果的です。たとえばマラソンで、「5キロを全力で走り切る」と考えると、最後の1キロが苦しくなることがあります。でも、「10キロを走るつもりで、5キロを通過点にしよう」と考えると、ゴールを遠めに設定したことで、5キロ地点でも余裕を感じられるようになります。このように、目標の設定方法を工夫することで、精神的な負担を減らし、集中力を持続させることができます【5】。
心の余裕を育む3つのポイント
心理的な壁を乗り越えるために、次の3つのポイントを試してみましょう。
1. 優先順位をつける
細かい部分にこだわりすぎず、まずは全体を完成させることを意識しましょう。
2. 小さなゴールを設定する
「まずここまでやろう」といった小さな区切りをつくると、達成感を味わいながら進められます。
3. 失敗を受け入れる
失敗は次へのステップだと考え、自分を責めすぎないことが大切です。心理学の研究でも、失敗を肯定的に捉えることでストレスを減らし、自己成長に繋がることが示されています【6】。
たとえば、1時間で宿題を進めると決めたら、「終わった部分」を見て自分を褒めてみてください。たとえ全部終わらなくても、「ここまでできた!」という達成感が次のやる気につながります。
おわりに
完璧主義や目標の立て方による心理的な壁は、誰にでも起こりうるものです。でも、「完璧を目指しすぎない」「区切りをつける」「できた部分を評価する」といった工夫で、心の負担を軽くしながら前に進むことができます。
大切なのは、目標を達成するまでのプロセスを楽しむこと。心理学の研究でも、目標を楽しみながら進めることが、最終的な成果にもプラスになるとされています【7】。ぜひ、次のチャレンジで試してみてください!
出典
1. Hewitt, P. L., & Flett, G. L. (1991). Perfectionism in the self and social contexts: Conceptualization, assessment, and association with psychopathology. Journal of Personality and Social Psychology.
2. 石田裕昭. (20XX). 「完璧主義が作業効率に与える影響」. 心理学研究.
3. Frost, R. O., Marten, P., Lahart, C., & Rosenblate, R. (1990). The dimensions of perfectionism. Cognitive Therapy and Research.
4. Kashdan, T. B., & Rottenberg, J. (2010). Psychological flexibility as a fundamental aspect of health. Clinical Psychology Review.
5. Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a practically useful theory of goal setting and task motivation. American Psychologist.
6. Neff, K. D. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity.
7. Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985). Intrinsic motivation and self-determination in human behavior. Springer Science & Business Media.