#49「強み」にフォーカスするために大切にしたいこと - ポジティブ心理学 -
ここでは、「ポジティブ心理学」で研究される「強み」について一緒に学んでいきたいと思います。前回の記事では、特徴的な強みや才能をある状況で使い過ぎると、自他にとってマイナスに働く「弱み」になってしまうということについて、一緒にみてきました。
そのため、僕たちは自分の置かれた状況のニーズをしっかり見極めて、自然と出てくる「強み」を意識して調整する必要があるということでしたね。今回の記事では、「強み」にフォーカスするために大切にしたいことについて、一緒にみていきたいと思います。子育てや部下を育成する際にも、大事にしたい考えが含まれていると思いますんで、ぜひ、最後までお読みください!
「強みにフォーカスする」とは?
まず、皆さんにお伺いしてみたいのですが、「強みにフォーカスする」と聞いたら、どんなことをすることをイメージされますか?おそらく、多くの方が、「自分の得意なことをドンドンやっていくこと」をイメージされるんじゃないかと思います。自分が苦手なことはやらずに、自分の得意なことしかしない。勿論、それが許される環境であれば、とても理想的ですよね。一方、現実的にはそうじゃないというケースの方が多く、「強みにフォーカスする」というのは、なんだか絵空事のように思われる方もいらっしゃると思います。
「強みにフォーカスしよう」と聞いたら、よく「自分の ”弱み” を無視して、得意なことばかりをすること」と誤解されがちなんですが、実は、「強みにフォーカスする」ということは、何も「弱みを無視すること」ではないんです。「弱み」とは、自他の成功の妨げとなるものであり、それを無視し続ける限り、成功は遠ざかってしまいます。
そのため、本当の意味での「強みにフォーカスする」というのは、自分の力が発揮されることをやりながら、「弱み」を無視するのではなく、うまく対処して、より多くの時間とエネルギーを自分が得意とするものにかけていくという意味になります。「強み」にフォーカスするためには、自分の「弱み」を対処する必要があるんです。
それでは、どのように「弱み」に対処すればいいのかというお話になるんですが、その答えは極めてシンプル、「人に頼ること」です。
「強みにフォーカスする」ために手放す必要がある考え
僕たちが「強みにフォーカスする」というアプローチを自分自身に、もしくは自分が育てている子どもや部下に採用するためには、「完璧な人間になる」という発想を手放すことがとても重要になります。僕たちは、昔から学校教育を通して、凹んでいる部分を克服して「平均的」になるように教えられてきました。凹んでいる部分があると人に迷惑をかけてしまうから、なんとか直したい。直さないと将来、困ることになる。「人に迷惑がかからないように、一人でそつなくこなせるようになってほしい」という親や先生の善意の願いのもと、僕たちは「平均的」になるように教育されてきました。
一方、「強みにフォーカスする」というのは、「尖っているところで貢献し、凹んでいるところは助けてもらう」という「相互補完」の考え方のもとに成り立つアプローチです。ですから、「強み」にフォーカスするためには、「全てできる ”完璧な人間” になろう」という発想をあきらめる必要があるんです。「周囲に助けてもらったり、迷惑かけちゃうかもだけど、その分、わたし、貢献するから」というマインドセットがあって、初めて「強みにフォーカスする」ことができるんです。そのため、「強みにフォーカスする」ためには、「人に頼ることができる」ということがめちゃくちゃ重要なんです。
「迷惑をかけてはいけない」という美徳の罠
これは個人的に思うことなんですが、「強みにフォーカスする」ということが絵空事のように響いてしまうのは、実は「強みにフォーカスすること」自体が難しいのではなく、「人に迷惑をかけてはいけない」という、家や学校でずーっと教えられてきた価値観を手放せないことが関係しているんじゃないかと密かに思っています。
というのも、経験上の話なんですが、自分の「強み」にフォーカスできている人たちの多くが、人に頼ることができる人たちである印象をもっているんです。「開き直る」というよりも「甘え上手」と申しますか、得意なことや、できることで周りの人たちの役に立ち、苦手なことは自己開示して、うまく周りに頼れているケースがよくあるんです。あくまでも、僕の経験上の話なんですが、「強み」にフォーカスするためには、人にお願いできるようになることや甘え上手になることもとても大事なことなんじゃないかなと思うんです。
「人に頼ること」が苦手な方へ
とは言っても、今、これを読まれている方の中には、人にお願いすることが苦手、人に甘えることができないと感じられる方もいらっしゃると思います。実際に、僕が首都圏で関わっていたひきこもりの子たちの多くがそうであり、いつも、二言目には「だって、人に迷惑かけたくないから」というものでした。(ああ、結構、この「人に迷惑をかけてはいけない」という価値観、根深いなあ)と頭を抱えたことが何度もありました。
今、もし、皆さんの中に「自分は人にお願いすることが苦手だなあ。人に甘えることができないなあ。だって、申し訳ないし、迷惑がかかるから」と思われている方がいらっしゃったら、是非、まずは、「人に貢献すること」を考えてみられたらどうかなと思います。日本には「人に迷惑をかけてはいけない」という厄介な価値観がある一方、「お互い様」という価値観も根強くあります。自分がその人に「貢献している」と思えると、意外とお願いしやすくなるものです。ですから、自分の「強み」にフォーカスし、「弱み」を対処するために、まずは、お願いしたい人に対して「自分は今、どのようにその人の役に立っているか?」「その人の役に立つにはどうすればいいか?」を是非、考えてみてください。
僕たち一人ひとりが「強み」にフォーカスするために、「人に迷惑をかけてはいけない」という価値観よりも、「困ったときは人に頼ろう。その分、できることで貢献しよう。お互い様だから」という価値観をもっと大事にしていきたいですね。
さて、ここでは、「強み」にフォーカスするためには、「弱み」を処する必要があり、そのためには、「完璧な人間になること」をあきらめ、「人に頼ること」ができるようになることが大事であるということについて、一緒にみてきました。次回の記事では、記念すべき「#50」ということなので、ポジティブ心理学の研究テーマの総本山である「ウェルビーイング」について、一緒に学んでいきたいと思います。(つづく)