同世代にお薦めのオースター本「ブルックリン・フォリーズ」
この4月末に逝去したアメリカの作家ポール・オースターについての記事です。
note 内にも多くの追悼記事が投稿され、改めて、ファンの多い作家さんなんだと感じました。
自分自身としても大好きな作家さんなんで、ちょっとタイミングは逃してますが、私なりのお薦め本を紹介して追悼としたいと思います。
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以前の記事にも書いたんですが、ポール・オースターを読むようになったきっかけは、村上春樹さん→翻訳家:柴田元幸さん→オースターみたいな流れです。
以降、ゆるやかにコンプリートを目指して、年に2~3冊ずつ読んできたとこなのです。
ポール・オースターの長編小説は、次の一覧のように、19作+別名義1作の計20作あります。
20作のうち、18作が邦訳されているんですが、私の既読は太字部分の14作です。
まあまあの読破率だと思うんですが、読んだ中で、皆さんにお薦めする本となると、少し悩むんですよね。
というのも、オースターの作品には、実験的なものも多かったりするからなんです。
実験的な作品には "入れ子構造" や "メタ表現" など、複雑な構成が施されていて、知的なエンタメがあって面白いんですが、初めてオースターを読む人にとっては少々 "小難しく" 感じてしまうのではと思うのです。
その一方で、ポール・オースターは優れたストーリーテラーでもあり、 "ザ・物語" 的な作品もあるんです。
オースターの代表作と言われる初期の『ニューヨーク三部作』が実験的な作品だとすれば、もうひとつの代表作である「ムーンパレス」は物語性の強い作品です。
多分、文学的には実験的な作品たちの方が重要なのかもしれませんが、初めて読む際は
実験性低めの物語的な作品をお薦めします!
もちろん、どちらもポール・オースターらしさであるし、実験的な作品にも物語的な部分があったり、物語的な作品に実験的な部分があったりもするのですが、初オースターとしては物語性の強い作品をお薦めします。
自分が読んだ作品でいうと、「ムーン・パレス」「偶然の音楽」「リヴァイアサン」「ブルックリン・フォリーズ」「サンセット・パーク」あたりが(4象限のグラフでいえば)"実験性低め" で "物語性高め" に位置してると思います。
中でも、私と同世代の50代の方々にお薦めしたいのは、2005年にリリースされた「ブルックリン・フォリーズ」という作品です。
「ブルックリン・フォリーズ」
オースター作品の中では、トーンも明るく、もっとも読みやすい部類だと思ってるんですが、大好きな本でもあります。
主人公は人生の晩年に差し掛かっているのですが、それでも人生は変えられるし、人は成長できる… そんなことを感じさせてくれる本なのです。
いわば、我々世代の青春小説と称すべき本なんですよね。
20代や30代の方なら「ムーン・パレス」や「偶然の音楽」をお薦めしますが、同世代の皆さんには、断然、「ブルックリン・フォリーズ」なんで、ぜひ、手に取ってもらえればと思います。
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ポール・オースターの作品については、これまでも、ちょこちょこ記事にしてきてるのですが、代表作の「ムーン・パレス」も含め、あまり紹介していない実験的な作品についても、いずれ記事にできるといいなって思っています。
(2作の未訳作品)
「4 3 2 1」(2017)
オースター作品としては異例の長さを持つ大作なんですが、それもそのはずで、主人公の4つのバージョンの人生が語られる構成になってるそうです。(4冊の中編による合本みたいな感じですかね?)
そういう意味では、物語性と実験性が同居した作品みたいで、ずっと楽しみに待ってる作品なのです。
「Baumgartner」(2023)
最愛の妻を亡くし、孤独と向き合いながら70代に差し掛かろうとしている主人公:バウムガードナーを描いた作品で、オースター最後の作品です。
オースター作品では、第1作の「孤独の発明」から、度々、孤独と対峙する人々が描かれてきたのですが、その掉尾を飾る作品なのです。
オースターの新作が読めなくなってしまったのは、とても残念なのですが、残った未訳作品の刊行を待ちながら、偲んでいきたいと思ってます。(できれば柴田元幸先生の訳で読めることを待望しています!)
(オースター関連 note )
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