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同世代にお薦めのオースター本「ブルックリン・フォリーズ」


ポール・オースター(Paul Auster)
1947.2.3 - 2024.4.30


 この4月末に逝去したアメリカの作家ポール・オースターについての記事です。
 note 内にも多くの追悼記事が投稿され、改めて、ファンの多い作家さんなんだと感じました。

 自分自身としても大好きな作家さんなんで、ちょっとタイミングは逃してますが、私なりのお薦め本を紹介して追悼としたいと思います。


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 以前の記事にも書いたんですが、ポール・オースターを読むようになったきっかけは、村上春樹さん→翻訳家:柴田元幸さん→オースターみたいな流れです。
 以降、ゆるやかにコンプリートを目指して、年に2~3冊ずつ読んできたとこなのです。

 ポール・オースターの長編小説は、次の一覧のように、19作+別名義1作の計20作あります。

(長編小説一覧)
1.「孤独の発明」 (1982)
2.「シティ・オブ・グラス/ガラスの街」 (1985)
3.「幽霊たち」 (1986)
4.「鍵のかかった部屋」 (1986)
(2~4は通称『ニューヨーク三部作』と呼ばれている。)
5.「最後の物たちの国で」 (1987)
6.「ムーン・パレス」 (1989)
7.「偶然の音楽」 (1990)
8.「リヴァイアサン」 (1992)
9.「ミスター・ヴァーティゴ」 (1994) 
10.「ティンブクトゥ」 (1999)
11.「幻影の書」 (2002)
12.「オラクル・ナイト」(2003)
13.「ブルックリン・フォリーズ」(2005)
14.「写字室の旅」 (2007)
15.「闇の中の男」 (2008)
16.「インヴィジブル」(2009)
17.「サンセット・パーク」 (2010)
18.「4 3 2 1」(2017) 未訳
19.「Baumgartner」(2023) 未訳

20.「スクイズプレー」(1984)
※デビュー前にポール・ベンジャミン名義で執筆された推理小説

(その他・短編)
「オーギー・レンのクリスマスストーリー」 (1992)
※映画『スモーク』の原作となった短編(日本では絵本になっています。)

 20作のうち、18作が邦訳されているんですが、私の既読は太字部分の14作です。
 まあまあの読破率だと思うんですが、読んだ中で、皆さんにお薦めする本となると、少し悩むんですよね。
 というのも、オースターの作品には、実験的なものも多かったりするからなんです。

 実験的な作品には "入れ子構造" や "メタ表現" など、複雑な構成が施されていて、知的なエンタメがあって面白いんですが、初めてオースターを読む人にとっては少々 "小難しく" 感じてしまうのではと思うのです。
 その一方で、ポール・オースターは優れたストーリーテラーでもあり、 "ザ・物語" 的な作品もあるんです。

 オースターの代表作と言われる初期の『ニューヨーク三部作』が実験的な作品だとすれば、もうひとつの代表作である「ムーンパレス」は物語性の強い作品です。

 多分、文学的には実験的な作品たちの方が重要なのかもしれませんが、初めて読む際は

実験性低めの物語的な作品をお薦めします!


 もちろん、どちらもポール・オースターらしさであるし、実験的な作品にも物語的な部分があったり、物語的な作品に実験的な部分があったりもするのですが、初オースターとしては物語性の強い作品をお薦めします。
 自分が読んだ作品でいうと、「ムーン・パレス」「偶然の音楽」「リヴァイアサン」「ブルックリン・フォリーズ」「サンセット・パーク」あたりが(4象限のグラフでいえば)"実験性低め" で "物語性高め" に位置してると思います。

 中でも、私と同世代の50代の方々にお薦めしたいのは、2005年にリリースされた「ブルックリン・フォリーズ」という作品です。


「ブルックリン・フォリーズ」

(内容紹介)
 六十歳を前に、離婚して静かに人生の結末を迎えようとブルックリンに帰ってきた主人公ネイサン。
 わが身を振り返り「人間愚行(フォリーズ)の書」を書く事を思いついたが、街の古本屋で甥のトムと再会してから思いもかけない冒険と幸福な出来事が起こり始める。
 そして一人の女性と出会って…

 物語の名手がニューヨークに生きる人間の悲喜劇を温かくウィットに富んだ文章で描いた家族再生の物語。

 オースター作品の中では、トーンも明るく、もっとも読みやすい部類だと思ってるんですが、大好きな本でもあります。
 主人公は人生の晩年に差し掛かっているのですが、それでも人生は変えられるし、人は成長できる… そんなことを感じさせてくれる本なのです。

 いわば、我々世代の青春小説と称すべき本なんですよね。

 20代や30代の方なら「ムーン・パレス」や「偶然の音楽」をお薦めしますが、同世代の皆さんには、断然、「ブルックリン・フォリーズ」なんで、ぜひ、手に取ってもらえればと思います。


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 ポール・オースターの作品については、これまでも、ちょこちょこ記事にしてきてるのですが、代表作の「ムーン・パレス」も含め、あまり紹介していない実験的な作品についても、いずれ記事にできるといいなって思っています。


(2作の未訳作品)


「4 3 2 1」(2017)

 オースター作品としては異例の長さを持つ大作なんですが、それもそのはずで、主人公の4つのバージョンの人生が語られる構成になってるそうです。(4冊の中編による合本みたいな感じですかね?)
 そういう意味では、物語性と実験性が同居した作品みたいで、ずっと楽しみに待ってる作品なのです。


「Baumgartner」(2023)

 最愛の妻を亡くし、孤独と向き合いながら70代に差し掛かろうとしている主人公:バウムガードナーを描いた作品で、オースター最後の作品です。
 オースター作品では、第1作の「孤独の発明」から、度々、孤独と対峙する人々が描かれてきたのですが、その掉尾を飾る作品なのです。

 オースターの新作が読めなくなってしまったのは、とても残念なのですが、残った未訳作品の刊行を待ちながら、偲んでいきたいと思ってます。(できれば柴田元幸先生の訳で読めることを待望しています!)


(オースター関連 note )

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