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池田真紀子さんへの信頼感(ケイティ・グティエレスの『死が三人を分かつまで』)
More Than You'll Ever Know
大好きな海外ミステリーや海外SFを読んでいると、よく出会う翻訳家さんがいたりします。
それが、あまりにもお馴染みになってくるとですね、”翻訳家さん読み” なんかしちゃう時があるんです。
「全然知らない作家さんだけど、この翻訳家さんだから読んでみよう!」となっちゃうわけなんですね。
私にとって、池田真紀子さんは、そんなお馴染みの翻訳家さんの一人なんです。
そう思うのは私だけではないようで、ちょっと前に、note友の ”みとんさん” の記事の中に本好きの同僚さんが出てきて、その彼が「池田真紀子さんは信頼できる」と話したエピソードがありました。
実は、私もまったく同じ意見で
池田真紀子さんは信頼できる!
のです。
翻訳家:池田真紀子さんといえば、ジェフリー・ディーヴァーの諸作品が有名なんです。
『ボーン・コレクター』など、四肢麻痺の科学捜査官リンカーン・ライムシリーズを初めてして、その後のディーヴァー作品のほとんどが池田真紀子さんの訳です。
![](https://assets.st-note.com/img/1668942269761-Npaun4wcox.jpg)
特に、2022年はディーヴァーの新訳が4冊もリリース(短篇集が2冊に、<コルター・ショウ>シリーズと<リンカーン・ライム>シリーズの新刊)と… )されたんで、今年は池田真紀子さんにお世話になったな~、と、思っていたら、もう1冊見つけちゃったんです。
その本というのが
『死が三人を分かつまで』ケイティ・グティエレス
![](https://assets.st-note.com/img/1668942490372-f2vdpIGzri.jpg)
ケイティ・グティエレスという作家さんは聞いたことがなかったのですが、本書が長編デビューのアメリカの作家さんということでした。
今年の6月に原書がリリースされて10月には日本でもリリースされてるなんて、しかも、訳者が池田真紀子さんなんて、ちょっと期待しちゃいますよね。
それで、読んでみたのですが、正直に言うと
期待以上に面白かった!…です。
ミステリーやサスペンスといったカテゴリーになるかもしれませんが、私個人としては ”読んでるとミステリーであることを忘れさせる本” でした。
『ザリガニが鳴くところ』や『われら闇より天を見る』なんかもそうなんですが、ミステリー部分よりも人間ドラマとして読んでしまう本。
私にとっては、この本もそんな一冊でした。
発行元の ”あらすじ” はこんな感じ
2017年7月、売れない犯罪実話ライターのキャシーはひとつの記事に目をとめた。
テキサス州南部の地方紙が、1986年8月に起きたアルゼンチン人男性銃殺事件の背景を探っていた。二人の男と重婚した女性ローレ、彼女の夫によるもう一人の夫の殺人。
全ての原因となったローレは取材を拒否していた。もし彼女の視点で事件を書けたら?
キャシーはローレに接近し、事件当時のことは話さない条件で取材権を得た。共に秘密を抱えた二人の女性の対決はやがて……
フーダニットを巡って手に汗握る実録系サスペンスの怪作!
主人公となるのは犯罪実話ライターのキャシー
このキャシーが興味を覚えて取材を始めた事件の中心人物が、二人の男性と重婚していたローレ(ドロレス)という女性なんです。
物語は、2017年の”キャシーの章”と”ローレの章”、そして、事件の背景となる過去(1983~1986年)の”ローレの章”が繰り返されていく構成です。
2017年の取材の様子と、過去の事件が並行に語られながらクライマックスに向かって行くんですが、序盤は、ゆっくり進んでいくんですよね〜。
2段組の458頁というけっこうな分量なんで、読むのに苦労するかもと思ったんですが、ここが池田真紀子さんの訳のおかげか、とても読みやすいんです。
読み進めていくうちに、過去の事件の真相も気になるんですが、主人公のキャシーの方もいろいろ家庭に問題を抱えているのが分かっていくんで、そっちの方も気になっちゃうんです。
しかも、取材を進めていくうちに、なんか、キャシー自身、ローレに影響されてきたりして… もしや、サラ・ウォーターズの『半身』的な展開なのか!と心配しながら、ぐいぐいと読んじゃいました。
ここで、もう1度、正直に言うと
終盤、いろんな謎が明らかになっていくんですが、読んでる私自身は「もう真相はどうでもいいじゃん!」って気持ちになっちゃいました!
そういう意味では、ミステリーとしてはどうなん?って思われるかもしれませんが、濃密な物語を読んでいくと、ほんと、そんな気持ちになるんです。(ぜひ、皆さんも同じ気持ちになるかお試しください!)
個人的には、事件の真相より、”なぜ、ローレはキャシーの取材を受けたのか?”ということが気になってたのですが、終盤、明かされる事実のひとつで、自分なりに得心がいったので満足でした。
さて、取材を通じてキャシーがどんな本を書き上げたのか… それはエピローグで明かされることになるのですが、原著のタイトルが『More Than You'll Ever Know』であることを踏まえると、なんか感慨深くて、ほんと、いい読書でした。
(興味を持たれた方はこちらのページをどうぞ!)
この本、発行元があの「U-NEXT」さんだったりするんですよね。
海外ミステリーも出版してるんだ!って、ちょっと驚きました。
まあ、「U-NEXT」さんだからというわけではないんですが、この『死が三人を分かつまで』は、ドラマ化に向いてるんじゃないかと思いました。
というのも、過去パートでは1983~1986年のメキシコの姿が描かれています。
1985年のメキシコ地震や、翌1986年のワールドカップも出てくるので、あの頃のメキシコの地震前の情景と復興の様子を描くのは意味のあることだと感じるんです。
映画ではちょっと尺が足りないと思いますので、ぜひ、ドラマの方でお願いしたいところなのです!(熱望)
+ + +
◎その他の池田真紀子翻訳作品
さて、今回、紹介した『死が三人を分かつまで』や、ジェフリー・ディーヴァー作品以外にも、池田真紀子さんにはお世話になっているので、その他の翻訳作品も紹介していきますよ!
『トレインスポッティング』アーヴィン・ウェルシュ
『ファイト・クラブ』チャック・パラニューク
ディーヴァー作品で出会う以前に読んでいた池田真紀子さんの翻訳本です。リリースが映画公開の前だったのか後だったのか憶えてませんが、私自身は公開後に読みました。
二つとも大好きな映画だったんですが、原作も面白かったのです。
(「ファイト・クラブ」の方は、今では読み切れないかもしれませんが…笑
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』E・L・ジェイムズ
お、新しいミステリー本かと思ってパラパラめくってみたら… ちょっと購入できなかった一冊です。
こういう本も訳すんだと思った本です。
『ゲームウォーズ』アーネスト・クライン
あれ、池田真紀子さん訳のSF?みたいな感じで読んだのですが、後にスピルバーグが『レディ・プレーヤー1』として映画化した作品です。
映画観てる人は分かると思うのですが、80年代のアニメや特撮のガジェットが頻出する”オタクちっく”な作品なんですよね。
でも、この本読むと、池田真紀子さんはそっちもいけるんですよ、うんうん。
『<マンチェスター市警エイダン・ウェイツ>シリーズ』 ジョセフ・ノックス
『堕落刑事』『笑う死体』『スリープウォーカー』と、三部作となってるんですが、この作品も、池田真紀子さん訳なんで手に取ったシリーズです。
堕落した刑事が主人公のノワールっぽい作品なんですが、ミステリーの部分には”本格”の部分もあって、すこぶる面白さなんです。
また、池田さんの訳で新作が読めるといいなって思っています。
『パチンコ』ミン・ジン・リー
実は、積んだままになってる本なんですが、そのうち読みたいと思ってる一冊です。
ということで、読んでない本も含めて並べてるんですが、これだけでも、池田真紀子さんがカテゴリーに寄らず、”面白い本”を訳してるのが分かると思うんですよね。
だからこそ、池田真紀子さんは信頼できるのです。
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