【architect】あるものを生かす
10年前の東日本大震災で、宮城県南三陸町の「あさひ幼稚園」の園舎は津波にのみこまれた
昨日のnoteで取り上げた元々サッカー日本代表キャプテンの長谷部誠選手が10年前に執筆して話題になった『心を整える』
長谷部選手はこの著書の印税の全額1億円余りを日本ユニセフ協会へ寄付し、あさひ幼稚園の園舎の再建にあてた。
長谷部選手はただ寄付をするだけでなく、震災後毎年シーズンオフには幼稚園を訪れては園児やスタッフさんとの交流を続けている
あまりメディアで取り上げられていないが長谷部選手らしく、表立って主張するのではなく継続的に愛情をもって取り組んでいるように思う
このあさひ幼稚園の再建を設計したのは、先日私のnoteでも紹介した、ふじようちえんの設計者でもある手塚建築研究所の手塚貴晴氏と手塚由比氏である。
設計にあたって、園長であり大雄寺というお寺の住職さんから、津波に浸かってしまって切り倒すしかなくなった参道の大木を、新しい園舎に何かの形で生かせないかと相談された。聞けば400年前の大津波の後に植えられた杉である。
手塚氏はこの大木を余すことなく使い、園舎を復活させた
この大木を使うには、水で濡れてしまった木材をどのように生かすかなど大変な苦労があったと聞いたことがある
しかし、この大木を使った園舎が津波の記憶を後世に受け継ぐことは間違いない
園舎は仮設園舎として建てられて移築される予定であったが、住民たちの意向で残され、2016年には増築されて今の建物となった
建築は私有物でありながら、土地に存在する以上パブリックな存在でもある
津波という悲惨な出来事を後世に伝えて記憶に残す役割があるはずである
東日本大震災から10年を経て、街は少しずつ変わりつつあると聞くが、津波で流された街は、文字通り綺麗さっぱり元の姿をなくして整地化されているところが多いようだ
詳しいことは分からないので、あまり安易な発言は出来ないが、歴史や記憶といったものをどうにか受け継いでもらいたいと思う
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