朝令暮改は悪いことなのか?
「上司から出された方針がもう変わってしまった!」誰もがこんな経験をしたことがあるでしょう。1ヶ月前に指示を受けたとおりに事前にしっかり調査をして上司に報告したら「こんなの違う!」とか、「それはもう必要なくなった!」とか「やっぱり違うやり方で実施してほしい」など、せっかく苦労したことが水の泡になって振出しに戻るばかりではなく、逆に怒られてしまうことがあるかもしれません。この「朝令暮改」、どうして発生するのか、そして部下はどのように対応すればいいのかを考えてみました。
朝令暮改とは?
朝令暮改の意味は、「朝に出した方針を夕方にはもう改めること」です。この四字熟語は『漢書』に起源があり、政策が変更し続け一定せずにあてにならないような事態を戒めたようです。現代でも、「方針が絶えず変わって定まらないこと」「あてにならない、迷惑なこと」という文脈で使われることが多い熟語です。
日々の仕事の中でも、上司から出された方針がそんなに時間が経たないうちに別の方針に覆ることがあり、そのような際にこの言葉を使いたくなる時があるでしょう。
朝令暮改になる2つの背景
さて、上司が朝令暮改に陥るケースには大きく分けて2つのケースがあります。
能力不足な場合
1つ目は、あまりあっては欲しくないケースですが、「何か」がうまくいっていない状態です。
いろいろなことが「ありすぎて」整合性が取れなくなった
方針を作ったことを単純に「忘れた」
その時の「思いつき」で方針を作った
既知の「すべての要素」を考えた方針になっていなかった
上司の上司が言うことにただ「流されている」
つまり、どこかで考えが足りなかった、能力が足りなかったという、上司の能力不足、オーバーキャパシティに起因しています。通常の多くの組織では、この手のことが得意な人が上司の座につくと信じたいですが、組織によってはそうでないこともあるのかもしれません。もし、そのような組織に自分が在籍していたら、巡り合せを悔やむしかないかもしれません。
最後まで風を読む場合
もう1つのケースは、一旦前もって方針を決めるものの、方針が影響を受ける大きな事象の風を直前まで読んで方針を決め直すパターンです。
現代の世の中は、さまざまな情報が生成されてやり取りされる時代です。ビジネスとして見える情報は、現場、中間管理職、経営者で見えるものが大きく違います。
たとえば東京の銀座で屋外イベントを開催することを考えた場合、現場目線では以下のように晴れた昼下がりに様々な人が道路を行き交っている姿が見られます。いわゆる「地表」の目線です。
一方、中間管理職は50mくらい上空から物事を見ています。街の広範囲を見渡して問題がないかチェックします。そうすると、現場目線では見ることができない、バスの上の「行ってきまーす!」の文字など、新しい発見もあります。
そして経営者はと言うと、もっともっと上空、宇宙から銀座を見下ろすような目線で見ることになります。そうすると「もうすぐ東京は雨が降りそうだな」といった大局的判断ができるわけですが、銀座に雨が降るのか降らないのか、直前まで「風を読む」こともあり得ます。その上で最終的にイベントをやるのかやらないのかを決定します。
このように、上司には、部下が見えない事象を最後まで観察して方針を突然変更することがあり得ます。
アジャイルな意思決定における「朝令暮改」
『漢書』が編纂された約2000年前には、情報伝達の手段は限られており、平時には伝令の早馬が情報伝達の最速手段であったため、現場で見えていること以外の情報を元に的確に判断を行える上司は少なかったものと思われます。また、事象に関する正確な知識や情報も少なかったため、「情報」の代わりに「占い」「祈祷」等の非科学的な手段が多く使われていたようです。
しかし、現代においては、ビジネスで必要な様々なデータを比較的容易に取得することができるようになり、取得したデータを分析したり整理するための手段も豊富に用意されるようになりました。そのため、特に「戦局が不安定な状況」において、最新のデータを元にアジャイルに戦術の意思決定をしていくことができるようになっています。
ちなみに、売上を伸ばしたり利益を確保する必要がない、または毎年ビジネスをしているだけで右肩上がりに成長していく、という状況でない限り、大抵のビジネス環境では「戦局が不安定」な状態が常に続いています。そのため、「戦術」のレベル (※戦略ではないことに注意) で朝令暮改を行うことは、指揮官が最新の風を読んで行っている限りは必ずしも悪いことではありません。
朝令暮改に対応するには?
とはいえ、命令を受ける部下の立場からすると、能力不足なのか、最後まで風を読むのか、いずれの場合も自分たちがやってきたことが無駄になってしまうため、迷惑だと感じることになります。特に戦術のレベルではなく戦略が揺らいでいる場合は、場合によっては下剋上を仕掛ける必要が出てくるかもしれません😪。(しかし、その場合は落とし所をきちんと計算しておきましょう)
朝令暮改を行うかどうかは上司の方針であり性格でもあります。大抵の場合は朝令暮改の上司に対しても部下はうまく対応する必要があるわけですが、その場合のおすすめの対応方法は「あらかじめ朝令暮改が起こることを想定してスケジュールを組んでおく」です。
時間が1ヶ月あったとしても、最終方針が決まるのが最後の3日であるならば、最初は仮決めの作業にしておいて最後の3日で突貫作業を行うようにあらかじめチームにも期待値を設定しておけば、いざ方針が最後の3日で変わったとしてもうまく対応できるでしょう。部下の側にも「風を読む」ことが求められるわけです。
また、同時に最後で変わった原因や背景の説明を上司に求めてみましょう。前述のように、上司には自分たちには見えていないことが見えているので、それを理解することで作業をやり直す側にも納得感が生まれます。
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では、また!
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