【企業インタビュー】陶磁器の老舗が副業プロ人材からDXの知見を吸収
岐阜県土岐市に根を下ろし、100年を超える歴史を持つ美濃焼の老舗窯元「カネコ小兵製陶所」。時代の流れに即応し、B to BからB to Cへ、そしてネット販売の活用と、新たなビジネスモデルへの挑戦を続けています。この変革期に、副業人材からマーケティングの新たな知見を取り入れる重要性を痛感したそうです。代表取締役社長・伊藤克紀さんに、副業人材採用の経緯や効果についてお話を伺いました。
―主な事業内容を教えてください。
1921年に創業し、20人ほどの社員とともに美濃焼の窯元として事業を営んでおります。かつては熱燗用の徳利製造を主軸に事業を展開していましたが、時代の変遷に伴う酒類や嗜好の多様化により、その需要は減少しました。現在では、一般向け食器およびホテルやレストラン向けの業務用食器を中心に製造し、その約2割を海外市場に向けて販売しております。ヨーロッパの高級ファッションブランドでの取り扱いもあります。コロナ禍の影響で業務用市場は一時的に落ち込みましたが、現在は徐々に回復している状況です。
―歴史と知見を積み重ねてきた老舗が、副業人材を活用しようとした背景について教えてください。
最大の動機は経営課題の解決にあります。私たち自身の手だけでは追いつかないスピードで時代は移り変わっており、新たなスキルを持った人材が必要だと感じていました。加えて昨今求められているデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応や、デジタル関連の知識を学びたい意欲も強かったのです。ちょうど地元の商工会議所や信用金庫が連携し、Skill Shiftとともに副業人材活用事業に乗り出していました。うまくマッチングする人材がいれば良い結果につながると考え、このチャンスを活かすべく副業人材の採用に踏み切りました。
―具体的にどのような経営課題に対応する人材を求めましたか。
最優先で求めたのは顧客データの分析能力を持つ人材です。10年ほど前からB to C向け事業やネット販売も始め、顧客データの蓄積はありましたが、その分析や活用は十分ではありませんでした。購買行動の正確な分析を通じて、今後のビジネス展開に役立てたいと考えました。顧客目線のマーケティングやデータ管理が得意な人材を求めました。
―選考過程を教えてください。
募集を出したら14人も応募がありました。とてもうれしかったですね。書類選考では顧客の購買分析能力を重視して5人を選び、全員と面接する予定でした。5人に優先順位をつけ面接を開始しましたが、一人目の面接でその人を採用することに決めました。30歳でコンサルティング会社の共同経営者の一人です。社員全員一致で即決しました。
―一人目で決めた根拠はなんですか。
面接でのやりとりが決め手になりました。私が面接で挙げた課題や希望に対し、即座に理解し提案してくれたからです。こちらの思いをきちんと理解してくれていると実感しました。技術的なスキルもさることながら、意見が合い、ともに楽しく仕事ができそうだなと感じたことが大きな理由です。相性が良かったということです。
―具体的な依頼内容を教えてください。
2023年10月から業務を開始しました。こちらからDXに関する課題を伝え、顧客データの分析をお願いする中で、マーケティング戦略やデータの活用などさまざまなアドバイスをいただきました。一度私たちの会社まで来てもらいましたが、基本は月に1〜2度、毎回1時間から1時間半オンラインでミーティング。副業人材から具体的なプランを数多く提案してもらいました。
私から見れば息子のような世代で、副業人材からも「お父さんとしゃべっている感覚」と言われました。だからこそ思っていることを何でも言ってくれたと思います。デジタル関係はどうしてもカタカナ用語が多く、それを覚えるのも勉強とは思っていましたが、英語の発音などは厳しく指摘されました(笑い)。ずいぶん刺激を受けましたよ。
―副業人材を採用してみて成果を感じたことはありますか。
売り上げ増加などまだ直接的な成果は見えていませんが、新しいマーケティングの手法に関し多くの知見を得ることができました。たとえて言うなら「魚の釣り方」を教えてもらった印象です。多くの種類の竿と糸を用意してもらい、餌はこれがいいよ、釣る池はここがいいよとノウハウを指南していただきました。取り組む材料はそろったので、これから実際に顧客へアプローチして活用する段階に入ります。
若手社員が副業人材の資料の作り方を真似たことがありました。組織全体での学習効果も見られます。
―逆に、何か課題点があれば教えてください。
副業人材から提案されたアイデアが多岐にわたり、すべてを消化しきれなかったことです。私たちとしては一つ取り組んだらPDCAサイクルを回し、結果を踏まえて次のプランへ進む流れを作りたかったのですが時間がかかります。PDCAを効率的に回すためにも、一度いただいたアイデアやプラン全体を整理して社内で優先順位をつけ、段階的に取り組むことに決めました。副業人材との契約は半年間で一度終了しましたが、非常に良好な関係を築けたため、今後も協力していけることを期待しています。
なじみがなかった副業人材の募集や採用に関しては、正直戸惑いがありました。対面で行ってきた採用面接をオンラインで実施したり、会議自体もオンラインで進めたり。これまで経験することがなかったことばかりでしたが、信用金庫の方が熱心にサポートしてくれました。
―今後の展望についてお聞かせください。
今回、副業人材を採用することで新しい風を会社の中に取り入れることができました。副業人材から得た示唆を社内で共有し、会社全体で時代に即した変革を推進していきます。顧客とのwin-winの関係を深めながら美濃焼の伝統を守りつつ、新しい価値を創造していくことが目標です。
カネコ小兵製陶所はSkill Shiftを通じて副業人材と出会い、なかなか進められなかったDX化やデータ分析に関する知見を蓄積することができました。副業人材との協働が自分たちで次のステップへ踏み出す契機になったことは間違いありません。今後大きな成果につながることが期待されます。
COMPANY PROFILE
株式会社カネコ小兵製陶所
〒509-5202 岐阜県土岐市下石町292−1
→副業人材の活用の方法が分かる!ハンドブックのダウンロードはこちらからどうぞ(無料)
→地方での副業マッチングプラットフォームを運営するSkill Shiftの登録はこちらから。登録は1分で完了!