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【ディスクレビュー】KANA-BOON『Honey &Daring』メロディメーカー谷口鮪がリリカルに描き出す、個々の人生を切り取った普遍的なテーマ性が浮き上がる一枚

コロナによる不自由や谷口鮪の休養といった数々の試練を経て、4年半ぶりに届けられたフルアルバム。行き場のない喪失感を祈りに昇華した「Re:Pray」のリミックスver.がオープナーとなり、その他従来よりもダイレクトかつ鮮明に谷口鮪(Vo/Gt)の深層心理が表層化した楽曲が粒揃いな印象。そうした中で《悩める日々に来たる解放》と燦然としたアンセム感を放つ「Torch of Liberty」、至極キャッチーな「天国地獄」など、バンド初期を彷彿とさせる自由奔放さが気持ちの良い楽曲を乱れ打つ様は、初心を忘れまいとするKANA-BOONらしさとも言える。誰でもノれるメロディーを主とした解放的でファンシーなバンド像を維持しつつも、コロナ禍で紆余曲折ある人生の目まぐるしさを「メリーゴーランド」に乗せ、《光れ 光れ》と希望に繋ぐフレーズとその遠心力で、現代に蔓延するネガティブな感情すらも光指す方向に連れていってしまう。そんな頼もしさこそが、幾度となく試練を乗り越えてきた彼らの真骨頂といったところか。

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