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あの頃の自分に贈りたい、温かく滋味深いスープのような本。

これが「読後感」っていうもなんですね。

今まさに、大切にじっくりと、読後感を味わっています。

心に刻んで、ずっとこの気持ちを忘れないよう。


* * *

「さよならの夜食カフェ
   古内一絵 (中央公論新社)」

ドラァグクイーンのシャールさんが営む
《マカン・マラン》というカフェに、
傷つき悩みを抱えた人々が引き寄せられるように
たどり着いていきます。

そこでシャールさんのやさしい料理に癒され、
力強く温かい言葉に励まされ、
自分の気持ちに向き合い、そして気づき、
自分らしい道に歩みだす温かいお話です。

どんな人にも真摯に向き合い、広い心で受け止め励ますシャールさん。



暗くて地味な学生時代の私が、
もしもシャールさんに出会えていたら、
今とは違った人生を歩んでいたのかもしれない。


記憶から消し去っていた学生時代を思い出しました。


ひとりぼっちには慣れっ子なくせに、
人の目ばかり気にして怖がっていたあの頃。


他人も自分も信用せず、すべての感情に
蓋をして仮面をかぶっていました。




取り柄がないなりに親には褒められたくて、
朝から晩まで勉強していた、優等生気取りの少女に。

聞かせてあげたい。

シャールさんの言葉を。

本当の自分を取り戻したければ、身体と精神を鍛えろ。
何かを食べたら、「美味しかった」
朝起きたら、「よく寝た」
スポーツをしたり、風呂に入ったりしたときには「気持ちよかった」
そう声に出して呟くのだ。実際にはそれほどでなくても、実感を込めて呟くことで気分は変わる。


自分の機嫌は自分でとる。

そんなことばが、ふと思い浮かびました。


目の前の世界に嘆いてばかりいないで、
幸せに目を向けて力強く進んでいこう。

世界はもっと広くて、いろんな人がいる。

心と身体を鍛え、自分に向き合う勇気をもてば、
夢中になれることに出会えるよ。

あの頃の自分に、そう言ってあげたい。


気分が凹んでいることを、イライラすることを
誰かのせいにする前に、声に出して「美味しかった!」って呟こう。

きっと閉ざした心に光がさしてくる。

自分を変えることができるのは、自分だけなんだから。


決断が周囲からどう受け止められたとしても、生きていく限り、人は己の人生の王様だ。
すべての采配と責任を一身に引き受けていかなければならない。

少し重いように感じることばも、
シャールさんから放たれるとスッと心になじむから不思議。

親のせいにするのでもなく、
仕事が多忙で時間がないことを言い訳にするのでもない。

どう決断し、なにをするかはすべて自分次第なんですよね。

すべての采配と責任を一身に引き受けていく。
その覚悟は、人として大切な心構えなのかもしれません。


行き先の分からない道を、己の足だけを頼りに歩いていくことはつらく、寂しい。
されど、寛大にして、誇り高き王女であれ。
なにかを得るたびに、なにかを失いながら、明確な答えのない毎日を懸命に生きている我々は、それだけで勇敢だ。

「寛大にして、誇り高き王女であれ。」

なんと心強いことばなんでしょう。

そう。
日々懸命に生き抜いている私たちは、それだけで勇敢なんです。


これからどんな未来が待ち受けていようとも
広い心で自信をもって歩いていこう。


* * *


いつも笑顔を絶やさない人も、
おどけて周囲を笑わせている人も。

お母さんも、お父さんも、
学生も会社員も、経営者も。

どんな人も日々迷い、そして悩みを乗り越えてきた過去がある。



いろんな立場の人を、理解したいと思ったし、
できるならじっくり話を聞いて、
美味しい料理で癒してあげたい。

もしも、なにもできないとしても、
優しく見守ってあげられたなら…。


そんなふうに。心の底から温かいきもちが
湧き上がってきました。

物語のなかでシャールさんが作る
滋味深い薬膳スープのように、温かいきもちが。

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