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【本の紹介】豊潤なチベット仏教の世界
こんにちは!シルクロード文庫の渡邉俊です。
この記事では、シルクロード文庫の1万冊ある膨大な蔵書の中から、埋もれた遺跡を掘り出すように発掘した本を紹介していきます!
訪問の際のご参考になればと思います。
いつも特に何も考えずに本棚の間を通りながらnote記事で取り上げる本を探しているのですが、今回なんとなく手に取ったのがこちら『チベット仏教美術: 藤田弘基写真集』(白水社)です。
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表紙を見てまず思ったのが「『仏ゾーン』じゃん!」です笑
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同世代の漫画ファンで知っている人も多いと思いますが、
『シャーマンキング』で知られる武井 宏之先生のデビュー作です。
仏教バトル漫画ともいえる特異な設定の漫画で、子供の頃、大好きでした。
主人公である千手観音菩薩・センジュくんと雰囲気が似ていると思い、ページをめくったのですが、そこに広がっていたのは表紙の金色に輝く美しい仏像とはベクトルが違う神秘的な宗教絵画の世界でした。
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原色で描かれる奇想とも言える宗教絵画の数々。
なんというケレン味!派手さ!
この異様な迫力は、江戸の奇想画家・曾我蕭白に通じるように思いました。
天空の都のなかで生まれた特異な美術に息をのみます。
巻末には各絵画の説明もされているので、図像の意味も知ることができるのも嬉しい。
チベット仏教の歴代の高僧たちのエピソードが紹介されています。
本書は、冒頭にダライ・ラマ法王の推薦の言葉も掲載されてます。
私は今回の刊行を全面的に支持し、チベットに伝わる芸術の数々を惜しみなく氏のカメラにゆだねました。氏もまた私の心にそって、チベット密教の精華である数多くの「タンカ」はもちろん、チベットの大自然、そこに繰りひろげられる人々の生活、祭り、儀式など、現在に生きる密教文化の世界を活写され、みごとな構成で私の愛するヒマラヤのチベット文化圏の姿をこの一巻にまとめられました。
と、法王も大絶賛している写真集という意味でも、チベット仏教の世界観を知るうえでうってつけの一冊ではないでしょうか。
また、写真家・藤田 弘基氏は、撮影の際の冒険譚を紹介していますが、
ある少年との出会いがチベットならではの神秘的なエピソードで、読んでいて印象に残りました。
十四歳だというリンポチェは、それまで私の会ったラマのなかではいちばん年若く、私は、奇蹟の人でも見るように、リンポチェを見た。シェルパの話では、少年はドルジェと同じ峠の向こうのベディン村の生まれで、三歳の頃、母親に向かって、自分はターメ・ゴンパのリンポチェだと告げたという。母親が少年を寺につれてきて、数年前に亡くなったリンポチェが生前使用していた数珠や茶碗などをたくさんの同じものの中から選ばせると、少年はひとつの間違いもなく、リンポチェのものを取りだした。まわりにいた僧侶たちは、この子こそ亡くなったリンポチェの生まれかわりにちがいないと、少年を寺にひきとったという。
なんとも不思議な話です。
少年の魂が輪廻転生したということでしょうか。
チベット密教の聖地では、東京のような都市においてはにわかに信じがたい話が、もしかしたら日常茶飯事として語られるているのかもしれないと思いました。
それでは、本日はこのへんで!
最後まで読んで頂きありがとうございます。
紹介した本はシルクロード文庫内に置かれていますので、ご興味ありましたらお立ち寄りください。
宝探しみたいに、紹介した本を"発掘"してみるのも一興です!
text by 渡邉俊