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シルクロード文庫の本の紹介を始めます

はじめまして。シルクロード文庫の渡辺俊と申します。
今回からシルクロード文庫noteを担当することになりました。

僕は社会人歴がだいたい10年くらいの36歳になります。
子供の頃からの漫画好きが高じて、大学を卒業後はずっと漫画業界で編集者として働いていました。
「好き」を仕事にしたこともあって、ずっと「あの企画やりたい! これも!」とがむしゃらに働いていましたが、どんどん
「あれ? 自分ってこのままずっと死ぬまでこんな感じで働くの?」という気持ちに出始めました。

それはコロナ禍でのフルリモート生活の中で、自分を見つめ直す時間が増え、人生の優先順位が大きく変わったことが、大きな要因になったと思います。
それで、自分を大事にする時間(それまで出来なかった勉強や料理)を増やしていこうと思い、正社員として働いていた会社を辞め、人生を再始動(リスタート)することにしました!

いろいろな縁の巡り合わせに恵まれ(ほんと不思議な縁でした)、いまはシルクロード文庫でアルバイトとして働いています。
主にSNS運営(現在はinstagramとnote)を担当していますので、ぜひフォローをお願いします!

シルクロード文庫は、シルクロードの宗教、美術、経済などにまつわる蔵書を保管し、一般に公開している専門図書館です。
その数、なんと約1万冊…!
当文庫について詳しく知りたい方は、下記の東京新聞を参照ください。

この記事では、そんな膨大な蔵書の中から、埋もれた遺跡を掘り出すように発掘した本を紹介していきたいと思います!

洞窟のように入り組んだ館内に本が並んでいる

題して「シルクロード文庫発掘記」!

当館、ほんと〜に多くの本があるので、おそらく初めて来訪された方は、どこを見れば良いか途方に暮れると思います。
この記事では、そんな来訪者の方が当館を探索するヒントになってくれればと思い始めました。
宝探しみたいに、紹介した本がどこにあるか探し出してみるのも一興かと。

とはいえ、シルクロードについての僕の知識といえば、
「砂漠」「ラクダ」「絹」くらいしかイメージがない完全なる初心者ですので、残念ながら専門的なことはこの記事で紹介することはできません。

当文庫に出入りするようになって初めて知ったことなのですが、シルクロードって本当に多種多様な文化で彩られており、僕のイメージなんてそれこそ砂漠の一粒くらいでしかないくらい奥深いです。

この記事の目的は、初心者目線ならではシルクロード文庫の楽しみ方を紹介・発信していければと思っています。
専門的な記事は現在、準備を進めていますのでお楽しみにしていて下さい!

それでは、栄えある発掘本の第1冊目は……
『シルクロード文明誌図鑑』!

ジャン・ピエール・ドレージュ(著)陳舜臣(日本語版監修)中村公則(翻訳)、原書房、1989年

タイトルの通り、シルクロードの様々な文明を知るのにうってつけの一冊です。

絹の道は、
商品の流通する経路であったのみならず、また思想や技術や諸宗教の伝播経路であった
それは東西を結ぶ絆の象徴である中国からイタリアに至るまで魅惑的な旅を通じて、ここに我々は、文物の複雑な交流と多様な文化や風景を発見する。

『シルクロード文明誌図鑑』P5より抜粋
中国仏教の一大霊地だった敦煌の仏像群。『シルクロード文明誌図鑑』P68より
タシュケントで開かれる絨毯市。『シルクロード文明誌図鑑』P68より

仏像、宮殿、風景、信仰、遊牧民の生活、繭市、信仰と多様な人間の営みを、特大サイズの写真で掲載されているため、臨場感をもってシルクロードの空気を感じることができることです。

個人的に一番面白く読んだのは、土地の人々を多く載せているところです。

河西回廊の少数民族。『シルクロード文明誌図鑑』P52より
トルコ系の女性たち。『シルクロード文明誌図鑑』P233より

東京で、満員電車に揺られながら通勤し、会社でPCをカタカタと叩き、帰りはスーパーで弁当を買って、家でyoutubeを見ながら食べるといった日々を送っていると、「人間の暮らしとはこれしかない」とつい思い込んでしまうところがあると思います。
だけど、この本に登場する人々を見ていると、それが錯覚だったことに気が付きます。

イスタンブールのバザールで品物を物色している人々、
ぼんやりとナルギーレ(水管式喫煙機)を吸うシリアの壮年の男性、
イタリアで自転車に乗った屈託ない笑顔の子供達、
コンスタンチノープルの聖ソフィア寺院で真剣な眼差しを向ける老年の男性、
ヤギを放牧するカシュガーイー族の女性。

それぞれまるで異なる文化を持つ人々。それがシルクロードという枠組みだと一冊の本の中に収まり、悠久の歴史の中にある種の一貫線を持って立ち現れてくるように自分には感じました。

最後に豆知識をひとつ。ラクダが砂漠で重宝された理由について。
コスパが良く使い勝手が良いようです笑

駱駝は図体が大きく、よく働くわりには食が少なく、荒野に自生するもので満足する。特に刺草を探し求めるが、これが好物である。野営すべき場所に到着するや、同一の飼主に属している騒駝は、みな自分で集まってきて輪になり、膝を折って座り込む。荷物を結びつけている綱をほどけるように彼らは三々五々砂の上にそっと身を沈めるのである。再び荷を積まねばならぬときになると、その同じ駱駝が荷物の間に座り込み、荷物がゆわえつけられると静かに身を起こす。その間わずかの時間しか要せず、何の苦労もいらず、騒がしく物音を立てることもない。
タヴェルニエ『土耳古・波斯旅行記』

『シルクロード文明誌図鑑』P224
休憩するラクダ。『シルクロード文明誌図鑑』P88

それでは本日はこのへんで!

最後まで読んで頂きありがとうございます!
本書はシルクロード文庫内に置かれていますので、ご興味ありましたらお立ち寄りください。

text by 渡辺俊

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