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『レインツリーの国』という温かい物語を読んでみて
つい先日レインツリーの国という本を読みました。
きっかけは少し前にレインツリーの国の作者、有川浩さんの
「明日の子供たち」を読み興味を持ったことがきっかけ。
明日の子供たちでは人間に寄り添った人間模様が特徴で
すっかり有川浩さんの書く物語が大好きに。
今回読んだ本はずっと昔からタイトルに覚えがあり
いつか読んでみたいと思っていたので
「この夏!読むしかない!」と、勢いで本を開きました。
凄く考えさせられる内容だったので順に感想を並べます✍️
メールから始まる出会い
きっかけは一冊の本。
かつて読んだ、忘れられない小説の感想を検索した伸行は、「レインツリーの国」というブログにたどり着く。
管理人は「ひとみ」。思わず送ったメールに返事があり
ふたりの交流が始まった。
この一冊の本から全てが始まる、という出会いはとてもロマンチックでそこから吸い込まれるように読み進めました。
1の直接会うのが駄目やったらせめて電話だけでもどうかな。
この章は会うこともなくひたすら数日を空け、メールのキャッチボールをします。
出会うきっかけとなった一冊の本についてや時にはぶつかりあって言いたいことを言う姿。
学生時代に感想を語り合うことのできなかった「伸」と「ひとみ」が昔のようにやり取りする様子を見ていて
気がついたら私は口角を上げていたり…(笑)
甘酸っぱい章だった…。
耳のこと
2の「……重量オーバーだったんですね」では初めてとなる二人との外出が描かれます。
そこで伸は精一杯ひとみに振る舞うが何かが噛み合わない。
この章ではひとみが聴覚障害者と判明。
一番ぞっとしたことは外出の様子を本で今読んでいたにも関わらず自分も伸と同じように全く気が付かなかったこと。
耳が聞こえない人がいるということを知識としては知っていたものの、それは実感されてはいなかった。
自分の心情がそのまま小説に表されていました。
噛み合わない会話や映画を字幕で要求していた様子。
読んでいる側も絶対に気が付いたのに
何故その考えが浮かんで来なかったか…。
それは確実に自分が、「聴覚障害」について分かりきっていると勘違いをしていたから。
これほどに本でぞっとしたことは何時ぶりだか…
ぶつかり合い
4の「ごめん、君が泣いてくれて気持ちええわ」。
題からして何か起こると予想していたものの辛い展開。
なんとか仲を取り戻した二人だったが、再び糸が切れる。
それは二人が街で歩いていた時。伸とひとみが横並びで歩いているところに派手なカップルと見られる
二人組がひとみに衝突する。
その事に対して伸は強い怒りを吐き出すが
当の本人、ひとみは「大勢の人が注目してる前で、私の耳のことなんか言いふらさないで」と言う。
言い合いの中泣き出すひとみを見て限界に向かった伸は
“ごめんな、君が泣いてくれて気持ちええわ”と吐き出す。
前章でひとみがメールで綴っていた。
耳のハンデもなくて、自由に文章を綴って、それが縁で伸さんと仲良くなれるような、青春菌の応酬ができるような、ちょっと気の利いた女性になれるのに。
私がなりたいような女の人になれるのに。
言葉が出ない。
ひとみは伸に少しでも普通の女の子らしく振る舞ってみようと
努力している。
それに対して伸はひとみに「すべて話してほしい」と
思っている。
このすれ違いの結果、このような事態になってしまった。
大好きな言葉
伸は何だかんだ職場の女性に話を聞きながら改めて気がつく。
どうしてひとみの言葉がこれほど好きなのか分かった。
彼女は_彼女たちは、耳が不自由な分だけ、言葉をとても大切にしているのだ。
(中略)
自分と似ていて少し違う心地よさ__それは、ひとみが言葉の限りある愛おしさを知っているからだ。
その言葉で大切な思い出の本を語られたら、魅れない奴は
いないだろう。
「魅れない奴はいないだろう。」
この言葉に「レインツリーの国」全てがまとまっている。
伸がひとみの言葉を愛おしく思うように
私は伸の心の声、作者の言葉選びに愛おしさを感じた。
負けですと言わんばかりに、言うその言葉は
人間の温かさが浮かび上がっているように。
本を寝る前に読む習慣があるのでこの章も寝る前に読んでいたのですが、言葉のお陰でいつもよりぐっすり寝られました💭
名前の驚きと二人のその後
最終章の歓喜の国。
この話ではひとみが何故「レインツリーの国」という名前のブログにしたのかが明かれました。
“レインツリー”はアメリアネムノキの別名。
そしてこの木の花言葉は、「歓喜」「胸のときめき」。
ひとみは伸と将来的に出会うと全く予想もつかずにこの名前をつけた。
まるで伸さんと出会うためのような名前を知らずにつけてたみたいだね。
そう言ったら、青春菌合戦はきっとひとみの一人勝ちだ。
ここで、青春菌の話が来るか……。
有川さん、これには圧倒です。参りました。
そしてこの物語はこのような言葉で幕を閉じる。
帰りの電車の中で、髪をかき上げてやりました。
伸はきっと誰にとは訊かずに「したたかになったなぁ」と
笑ってくれるはずだった。
聴覚障害の事を周りから隠そうとしていた昔のひとみと違って
今は堂々と自分は自分だ!と示している。
確実に伸の手があったからこその、変化。
私は同時にひとみだけで無く、伸も成長していく。
ひとみが過去に向き合い立ち直る姿を見て
自分も父親の事と真正面から向き合うことを選択する。
年を取って人生を振り返った時。
二人は二人に出会った事が互いにとって人生で一番大きな事に
なっているのかもしれない。
最後に
長々とした文章をここまで読んで下さり、
ありがとうございました🙏
「明日の子供たち」から「レインツリーの国」といい、
人間の尖った所も全て受け止め優しいラストへ導いていく
有川さんの物語の良さをずっしり感じました。
有川浩さんの持ち合わせる言葉の数が多い…!!
また一人お気に入りの作家さんが増えた💭
ぬくもりのある物語をありがとう。
↑書籍はこちらから。
………初めて文字数2500を超えました💪