【蒸留日記vol.15-1】ストローブマツの松ぼっくり"のみ"からエッセンシャルオイルを得てみる定量実験!
さてさてさてこんちは!!
昨日投稿したニオイヒバ落ち葉(Thuja occidentalis - Fallen Leaves)回からヒントを得て、今回はいよいよ研究実験・検証メインの回へと切り込んでいきます!
まずはこちら写真をご覧ください。。。
こびりついてますね、ついてます、、、
ほらほら、たくさんついてますね。
松ぼっくりの開いた鱗片の先っちょにわんさか松ヤニがこびりついてます。
●Introduction
-松ぼっくりに付着する松ヤニからの精油回収-
昨日というか前回記事は雪の上に落ちている葉っぱからオイルを採りましたが、今回の狙いは松かさにこびりついた松ヤニ、こいつらです!
エフゲニーマエダは10回目である初回のストローブマツ蒸留にて、松ぼっくりがヤニまみれであることに感づいていました!
しかし、1月に行ったストローブマツ蒸留回では葉っぱ(Leaf)と松ぼっくり(Pinecone)をごちゃまぜに蒸留していました。
なので、葉っぱから出たオイルなんだか松ぼっくりから出たオイルなのかがわかっていませんでした!
今までの針葉樹蒸留で得られた知識では、葉っぱからオイルが採れるというのが常識だったので、松ぼっくり単体からどれだけのエッセンシャルオイルが採れるのかは未知数でした!!
対して、精油を得る方法として松かさを蒸留する方法はまったく聞かない手法。
なおかつ、ストローブマツ(Pinus strobus)自体が外国産樹であり、歴史的に北海道でしか植栽されていないので、なかなか日本語でのアレコレいじくりまわした資料が出てきません。
ならば早い話、"案ずるより産むが易し"ってことで松ぼっくり集めてきてちゃちゃっと蒸留しちゃいましょう!
-雪解けの進む早春が素材採集に適したシーズン-
北海道の12〜3月まではマイナス気温で積雪期シーズン。
雪が減ることなく上に向かってどんどん積もる時期なので、松ぼっくりや落ち葉の回収には向きませんよね。
風に吹かれ、雪の上に落ちてもすぐ埋まって見えなくなってしまいます。
また雪が固まっておらずズボズボ埋まるので、回収するにも大きな労力が要ります。なおさら回収には向きませんね。。。
この作業イメージは次の章で実際の作業風景をお見せいたします〜!
●素材集め、1時間あまりで袋いっぱいの大収穫!
3月に入り、いよいよ雪解けが訪れました。
暖かな日差しは目には見えずとも積雪の高さを下げているようで、茶色の松ぼっくりはより日光を受けて雪面に顔を出してきます。
風に吹かれて飛んでいく落ち葉と違い、松ぼっくりは落ちたその場所に留まり続けるので拾い集めやすいのです!
松ぼっくりは一般的に樹木の上の方の枝につきます。
進化の過程で、下の方にタネを付けてもさほど遠くへ飛ばず、上についたタネの方が親木より離れた遠くへ飛び生き残れたためでしょう。
そして松ぼっくりが大量についた枝が雪に埋もれてました。
樹上に溜まった雪の重みに耐えきれず、折れたんだと思います。
ですがこのまま放っておけば、夏には土壌へ仲間入り。
もったいないので今のうちに資源回収しちゃいましょう!
作業風景のワンショット。
いや〜記録に残さねば!と気付いた時に撮影するよう心がけた!
火鉢(炭とか掴む長いトング)を使うと腰をかがめずラクに作業できます!
これも昨日ニオイヒバの落ち葉を拾っている時思いついた"カイゼン"です。
今日の天気はみぞれ交じりの雨だったので、もしかすると松ぼっくりたちが雪を被ってカモフラージュとなり、ぜんぜん拾えないんじゃないかと億劫になっていた。。。
が、30分もあれば大袋ひとつを満杯にできるくらい大量の松ぼっくりが拾えました!
ほんの図鑑要素ですが、日本の松類と比べて明らかに大きい大陸生まれの針葉樹(の松ぼっくり)。
大陸育ちの植物はスケールの大柄なものが多い気がします。
-1時間しないほどの作業で得られた材料-
ここを強調して解説しておきますが、雪を掘ることはせず雪面に落ちていた松ぼっくりだけを拾い集めた量がコチラです!
こうみるとかなり落っこちてるものなんですね、ストローブマツの松ぼっくりって。。。
袋いっぱいだったストローブマツの松ぼっくりを25L蒸留釜に収めましたが、それでも有り余る松ぼっくりたち。
得られる精油の量がかなり期待できそうです!!
と詳しくレポートしてみます。
いつもなら蒸留材料が袋のどれだけの量入ったよ!なんて全く書いてないんですけどね。。。
ご覧のとおり、今回の実験趣旨である”松ぼっくりのみ”で満たされた蒸留釜!
松ぼっくりは乾燥した素材なので釜が葉っぱ素材を詰め込むより重くなりません。これは体に優しいですね!
採油素材としてのポテンシャル・可能性を探るのが目的なので、葉っぱなど精油を含む別部位は徹底的に取り除いてます。
さて、いよいよコンロにかけ蒸留開始です。。。
◆どれだけの精油が得られたか!?
大きな発見なのは、葉っぱから精油を採るより、松ぼっくりにこびりついた松ヤニから精油を回収するほうが圧倒的に早いということです!
外界に露出しているので、その分析出が早いことが想像つきます。
(柑橘系の早さまでは行かずとも)
開始直後の抽出速度といいますか、抽出量がトドマツ蒸留1回で得られる精油量を凌駕する溜まり具合、、、!!
きっかし2時間回した結果です!!
ホントおぞましさ感じるくらいのほぼ透明な精油が蒸留できました…
抽出率が8%とされるトドマツのさらにそれ以上をいく、非破壊的な方法でのこの抽出率には驚きを隠せません。。。
この精油を回収したあと、同じ蒸留済み松ぼっくりをさらに1時間半蒸留したところ、わずかですが黄色く色付いた精油が得られました。
色がつくということはおそらくセスキテルペン(C15)やトリテルペン(C30)メインの、質量重めの精油に変化したのだと思います。
●鼻で感じる、香りの違いは?
次号を見越して、先にここに[松かさ抽出オイル]と[葉っぱ抽出オイル]を用意しました!(精油どちらともうっすら色がついています)
まず松かさ抽出オイルから感じる匂いの味わいは、ぜんぜんしつこくないパイン精油!といった感じ!
モミ属精油のようなカンフェン的スースー感や、葉っぱ系でありがちな青臭さがぜんぜん無いんです。(←アカマツ葉っぱ精油と嗅ぎ比べ)
これぞウッディ系!と思わせてくれるような、パインベースの落ち着いた香りがします。
おそらくはミドルノート&ヘビーノートに類される香りでしょう…!
落ち着いたログコテージでリラックスしながらくつろぐイメージが想像できる香りですbb
●総評・議論!
北海道でよくみられる針葉樹をばらっと並べると
1.トドマツ 2.アカエゾマツ 3.クロエゾマツ 4.ドイツトウヒ
5.プンゲンストウヒ 6.アカマツ 7.クロマツ 8.ハイマツ
9.ストローブマツ 10.ゴヨウマツ 11.カラマツ 12.ニオイヒバ
などがすぐに思いつきます。
そしてそのうち松ぼっくりを落とすものは
2.アカエゾマツ 3.クロエゾマツ 4.ドイツトウヒ
5.プンゲンストウヒ 6.アカマツ 7.クロマツ 8.ハイマツ
9.ストローブマツ 10.ゴヨウマツ 11.カラマツ
がこれにあたります。
北海道にて精油生産が盛んな1.トドマツに至っては、松ぼっくりが成熟すると樹上で風に吹かれて分解してしまい、松ぼっくりをGETできないんですね。
これはモミ属の特徴だったりします。
ニオイヒバも一応"松かさ"なるものは付けるのですが、小さすぎて集めるのに苦労します。。。
なので主にトウヒ属、マツ属なんかが立派な松ぼっくりを拾えるマツになります。
このうちで、松ぼっくりがヤニまみれである樹種が、本記事と同じ要領でエッセンシャルオイルが抽出できるといったワケですbb
木を伐倒したり枝を落としたり資源消費しなくても、落ちてるものをホイホイ拾い集めて蒸しあげるだけでかなり省力的にアロマオイルが得られてしまうんですね…!!
しかし、ストローブマツに限ると懸念も浮上します。
葉っぱと松ぼっくり、別々の部位から得たオイルの匂い品質はおそらく異なるだろう予想が浮かびます。。。
では次号にて、松ぼっくりとともに落ちていた葉っぱからも単体で分けて精油を抽出し、実際に香りの嗅ぎ分け・官能試験をしてみたいと思います!
ではでは!
ストローブマツの松ぼっくりからは軽作業でトドマツを凌ぐ量のエッセンシャルオイルが得られましたよ!
という実験レポート回でした!
【前回記事】
【水蒸気蒸留マガジン】