【蒸留日記 vol.49】ラバンジン グロスブルーを蒸留してみる!
えーーーーーとまたしても長い期間記事を寝かせていてしまいました。
大変申し訳です。
結果として今回のテーマラベンダーであるグロスブルー(L. x intermedia 'Gros bleu')は、事実わが庭園で最長咲き続けたラベンダーであることは間違いなく、、、
ラベンダー蒸留記事の大団円を飾るにふさわしい品種だと思ってます、ハイ。
なのでまぁつべこべ言わず、
収穫期日から2,3週間間空けてすいませんでした
とだけ述べて今日蒸留やったかのように気にせず書いて行きマッス。笑
■序論。導入の意図とか!
お先に本記事の結論をパパッと書きますと「今回の試験蒸留で個人評価が一気に上がった"ラベンダー"品種」ってところになります。
※ラバンジンとは書かずに、コモン&ラバンジン双方をひっくるめてのラベンダー表記に。
はて、ではどんな部分で良い意味で期待を裏切り、評価が上がったのか?
順を追ってリポートしていきましょ〜う!
まずこの品種の導入意図としては、栽培2年目の品種比較栽培の一環で、
①ラバンジン品種とは?
②ラバンジンとして最も花色の濃い品種とは?
という2つの疑問の解消意図として5株を導入しました。(上のリンクが当時のnote)
結果として、植えた用土の配合がラベンダーの生育的に最悪の組み合わせだったために2020年度では開花に至らず、1年越しの開花となってしまいましたが。。。
コモンラベンダー最濃とされるブルーマウンテン→開花した花びらの色が濃い!というパターンで
ラバンジングロスブルー→ポプリ・蕾の色が濃い!というパターンでした!
ラベンダーは花びらを咲かせて開花となる期間より、紫色の毛むくじゃらな蕾・ポプリでいる期間が明らか長いので、ラベンダーの中でも色の濃い品種グループに属することはあながち間違いなさそうです!
(アメリカ行けばRoyal velvetとかOrinpiaとか色の濃い品種たくさんあるんすけどね…日本にはinportされてないようです)
あれ?名前の英字スペル、ミスってますよ。
この品種の英語表記をググると、ほぼ必ずと言っていいほど、グロスブルー:Gros Blueではなく、Gros Bl"eu"になっている事に気がつきます。
アメリカや英国の苗木ショップやラベンダーオイルについての論文でもです。
アルファベット読みするとグロス"ブレウ"になるやん!
ということです。
なんでブルーじゃなくブレウやねん。としばらく時間かけて調べてみると、、、この先は後述します!笑
などと、色味の比較・鑑賞目的としてみてもぜんぜんおもしろい魅力的な品種であることはわかったのですが、ガチラベンダー農家を目指すわが農園ではさらにもう一歩踏み込んで、、、香りです!肝心なのは香り!アロマオイル!
2021年度ではようやくその花の姿をみることができましたが、蒸留器を導入した22年度、ついにアロマオイルを生産することができるように…!!
ここ最近でやっとフランスにゆかりがある品種であることが判明したので、ならば香りも秀でたポイントがあるのでは!?と無駄に期待(フランス産ブランド)を寄せていざ蒸留実践してみたいと思いますbb
■ラバンジン・グロスブルーのプロフィール!
グロスブルー(L.x. 'Gros bleu')は、ヒロハラベンダー(L.latufolia)とコモンラベンダー(L.angustifolia)のハイブリッド種であるラバンジン系統のラベンダー。
グロッソ(L.x. 'Grosso')やロングホワイト(L.x. 'Long white')やボゴング(L.x. 'Bogong')などと同じく、花や葉っぱがスースーする香りをもつラベンダー系統種です。
…ヒロハと混ざってんだから樟脳量増えるのはそら当然よ!笑
というのはまぁラバンジンみんな共通の解説で、ここからがこの品種の特筆する解説。。。
1.ラバンジンの中ではわりと中柄な部類
ラバンジン系統のラベンダーはみなコモン系統に比べて大柄に育つのですが、なかでもグロスブルーはそこまで大きくはならないようなんです。
といっても、育っている用土がまったく栄養素なしなので最小限のサイズなんですが、同じ用土で育てている強健種グロッソやスーパーなどは明らかに長い花茎を立ち上げるんですよね。
けどけど花穂の形は完全にラバンジン。
ヤングコーンみたいな形してるでしょ?これがラバンジンラベンダーの主な特徴なんどす。
コモンラベンダー(L.angustifolia)の品種の中にも錐状(→▲)に尖る品種もいくらか存在しますが、ここまで立派に大きくはなれません。
2.かなりの遅咲き品種グロスブルー
この平成林業。のラベンダー記事・各写真の撮影期日に注目してもらえるとわかると思うのですが、グロスブルーの開花シーズンはかなり後です。
コモンラベンダーが咲き終わった頃ようやくグロスブルーがちらほら花を咲かせはじめます。
開花期の違いはラバンジン⇆コモンだけでなく、ラバンジン同士で比べても差が明白!!
蕾の先に残っている灰色に萎れた花びらを見てみれば開花期が終わりであることがわかるラバンジン・スーパーと、半分咲き終わったぐらい?ってほどのグロスブルー。
グロスブルーはかなりゆっくりな花の成長をみせるようです。すごい。
さらに開花の仕方も、時期がくると一気に開花するコモンラベンダーとは違って、ラバンジンはポツポツとのんびり花を咲かせるので、雨に打たれて花びらが色褪せてもしばらくすると色味が復活してくる特性を持ってます。
(こればっかりはさすがハイブリッドラベンダー!!)
3.フランス生まれの品種である可能性
アルファベット読みするとグロス"ブレウ"になるやん!
なんでブルーじゃなくブレウやねん。
というひょんな疑問。ここに気づけたおいらSUGEEEE!!って思ってます。
この品種の英語表記名が「Gros Bl'eu'」であることを疑問に持ち、Bl'ue'のスペルミス?と思って時間かけて調べてみると、Bleuはフランス語綴りである事が判明します…!(Blueのフランス語変化)
もしやもしやと思い情報を漁ってみると、そこまで詳しく知られてはいないものの、どうやらラバンジン・グロスブルー(L. x intermedia 'Gros bleu')はフランス産ラバンジンなんじゃないか!?という情報が出てきたのです!
フランス産のラバンジン品種といえばアブリアル(初代)やスーパー(次代)やグロッソ(現代)があり、、、
これらは国策として精油生産に用いられていた栽培品種ですが、グロスブルーはそんな情報ほぼ出てきません。(フランス語圏では調べてませんが…)
どうやらグロスブルーは精油生産目的の栽培品種ではなかったようで、当時の水準でいうと精油の質がそこまでよろしくなかったのかなぁーとかもっぱら園芸品種として拡大したのかなぁーとかいろいろ想像しています。ええあくまで想像の範囲です。
しかし北海道ラベンダー品種の3号濃紫と同じく、花の色が濃いために園芸鑑賞価値が高く、日本ではこの品種の苗木が簡単に手に入るようです。
個人的見解なのですが、日本のラベンダー苗木市場は園芸品種が多いので英国に似ている感じ。
(ちなみにこの3号濃紫も1950年代にフランスから日本へやってきた品種)
■収穫のようす!
わが見本園?研究園では最も開花が遅く、開花期が長いラバンジン品種。
ゆえに収穫の順番も最後にくることになってます。そら当然よね。
なんと収穫当日が前年と1日違いというマグレが起きました。ちょいびびった。
去年の収穫日はどうやら8月25日だったよう。
今年はコモンラベンダーの収穫が比較的早めでしたが、グロスブルーはまだ花が咲き残っています。グロスブルーのお花は長持ちするみたいです。
でお盆時期も過ぎて案の定日の暮れる時間が早まっている事に気づけなかった私はランタンで明かりを焚きながらのローペースな収穫作業を1時間ほどこなしました。。。
今回グロスブルーの収穫では、収穫方法を変えた!
んです。
いつもラベンダーの収穫は花茎の根元から丁寧に摘み取っていたのですが、どうも花穂と葉茎に分ける際の作業がめんどくさい。手間なんです。
ここの作業効率、どうにかカイゼンできぬものかと考えた末、
「ラバンジンは花穂でっかくて摘み取りやすいし、何より花穂さえ摘み取ってしまえば生殖に割かれるエネルギーがストップして株に好都合だよね!」っていうことで、まずは花穂だけ先に摘んでしまう方法を取りました!
これだと収穫後追加でカット作業の手間が省け、そのまま花穂の重量を図ってオイル物質の揮発ロスを防ぎながら蒸留釜に投じることができます!
これがこの際に思いついた、最良の収穫方法ですねbb
やはり収穫適期はやや超過気味だったようで、やや全体的にグレーみがかって色あせ感が出ています。
蒸留に回すならもーちょい早くても良かったんだと思う。
とはいっても8/15~8/20とかの範囲でしょうけど!
ラベンダーの収穫期としてはかなり後期であることには変わりありません。
この状態でもそこまで強いカンファー臭がしてこないのがこのグロスブルーの不思議。とことんコモンラベンダーっぽい。
直接部位を選んで収穫した、グロスブルー花穂オンリーの収穫重量は328グラムとなりました。
5株でこの重量なので、グロッソの291g、ボゴング2株の84≒210gよりは多い結果に。
3年目の収穫量なので、順調っちゃ順調か。もっといい用土で植えてやりたかった!
■いざ蒸留開始!
出だし好調!!
さすがはラバンジン系統というだけあって、蒸留水の滴下開始直後からかなり厚く精油も溜まっていくのがわかります!
蒸留水も多量にリナロールなどを含んでいるのか、白く濁っています。
不思議に思ったというか、これ品種特性だな〜〜〜と感心したのが、ラバンジン・グロスブルーは蒸留していてもそんなに樟脳臭が強く香ってこないんです。
むしろコモンラベンダーを蒸留した時の甘く焼けたような香りが強いんです。これはすごいと思った。
■蒸留結果は…!?
美しいですね…。
しっかり薄オリーブ色のついたラベンダーオイルが抽出されました。
でこんな感じ。コモンラベンダー5株よりは明らかに多い抽出量です。
5ミリを上回っている予感。
だいたい7mL程度かな?と予想しています。
5mLのアンプルに収まるかどうか、かなり際どかったので30mLアンプルにつっこみました。
10mLはなさそう。
それぞれ大元の株数などは違っていますが、こんな感じになりました。
それぞれ大まかな区分でだと同じ「ラバンジンオイル」ですが、香りがぜんっぜん違っているのがおもしろいところ。
あくまで同じ系統種同士なんですけどね。。。
■香りなど、総評!!
1.精油の収量
収穫時間も加味すると、とてもラバンジンらしくない性格をしているラバンジン・グロスブルー。
さてさて、おなじみの収油率の計算やっていってみましょうか。
遅れ気味でも2%を叩き出しました!
コモンより明らかに高水準です!
おぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜
たくさん育てよう・・・
2.精油のアロマ
肝心のアロマなんですが、蒸留後でもはっきりとわかるラバンジン特有の樟脳臭が、ほんのりとしか感じられない薄さなんです!
他のラバンジンオイルだと明らか薬品チックな香りなのに、どちらかといえばこれはコモンラベンダーオイル。
・・・まじか。たくさん育てるべ。
はい、という結果から、こんなおもしろい変わった特徴を持つラバンジン ラベンダーは絶対ラベンダーの聖地フランスが生み出してくれやがったびっくりどっきり品種だろう!ということで、栽培数の拡大を決めたおいらです!
もうありとあらゆる農園さんのグロスブルー苗木にかなりの数の発注をかけました。来年が楽しみですね!!
おいらの考えとして、
北海道はせっかくコモンラベンダー(高級ラベンダーオイルの品種)が育つんだから、その地域特性を最大限発揮するべきと思っています。
暑い・雨の多い地域でも育てることのできるグロッソなんかで目下の生産量をごまかすより、北海道でしか作れないものに特化して地域ブランドを確立させる方がまわりも自分も相乗効果になってメリット大きいよねって思うんですよ。
『グロッソなんて育ててると中国経済に先を越されるぞ』
そんな中でもグロスブルーもコモンラベンダーに香りがかなり近いラバンジン品種なので、簡単に育つし大きくなるし、力入れて栽培してもいいんじゃないかと思っているおいらでした〜〜〜
ではでは!
超長ったらしくラベンダー愛にまみれたオバケ長文記事でしたぁ〜〜〜