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【蒸留日記 vol.109】ニオイヒバの枯れ枝葉を蒸留してみる!
■Introduction
ニオイヒバ(Thuja occidentalis)はこの蒸留マガジン始まった当初、蒸留器を手にしたごくはじめの時期にめっちゃ蒸留してたんですよね。
北海道では都市部(や住宅街)で見渡してみるとトドマツの次にこのニオイヒバが目につくくらい多く植えられてる外国産針葉樹なんですよ。
🌲ニオイヒバの植物学🌲
基本的には針葉樹に分類されるんですが、移入先である北海道ではもっぱら園芸的な目的(家周りの防風樹や目隠し用の生垣)に使われる北アメリカ原産のクロベ属樹木なんですね。
なので人の活動あるところ・あったところにニオイヒバあり、です。
ニオイヒバは通称Eastern white ceder/イースタンホワイトシダーと呼ばれます。
イースタン:東方のと付きますからどちらかといえばニューヨークやシカゴ、トロント寄りの地域が原産地となっています。北アメリカ大陸の東側ですね。
ちなみにで言うとvol.100で扱ったウエスタンレッドシダー(Thuja plicata)と同じクロべ属/Genus Thujaの樹木になります。北米大陸を東西でホワイトシダーおよびレッドシダーの2種が棲み分けているイメージです。
なので和名だと”ヒバ”と呼んでますが日本のヒバ(Thujopsis sp.)やヒノキ(Chamaecyparis)とはかなり遠い血縁の樹木なんですな。
唯一、クロベ(Thuja standishii)が同じ仲間のアジア種になります。
で!!
かれこれ2年ほど蒸留経験を積んでくると、ウッディーで芳醇な精油はだいたい木材や乾燥素材から得られ、揮発速度が遅めの芳香分子主体で構成されていることを知り得ます。
対照的に生花や木の葉っぱなどのフレッシュ素材を蒸留すると爽快でフレッシュなエッセンシャルオイルが得られることが多く、木材や枯れた植物材料などドライ素材を蒸留すると香りが鈍くまろやか・芳醇なエッセンシャルオイルが得られることに気づくんですね。
おそらくフランスの伝統的なラベンダー蒸留法からも察するに、香りにコクや深みを与えるためか収穫後2,3日はシーツの上で天日干しにするそうです。
ちょっと話逸れましたが、過去ニオイヒバ蒸留においてドライ素材(枯れ枝)の蒸留は試したことがなかったんですよ。
生素材のニオイヒバはフレッシュ爽快な香りの精油が採れるので枯れて乾燥した素材状態から精油とるとかなり香り変わってるんじゃね!?そもそも揮発して精油ぜんぜん採れなくなってるんじゃねえか…!?
という大いなる疑問が湧くので、早い話まぁ試してみましょう!という今回の蒸留テーマになりまっす…!
■材料調達!
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車を走らせていると、おそらく去る冬に雪の重みで折れたらしきニオイヒバの枝を発見。
ニオイヒバでこの家を囲っている住人さんに許可をいただき、収穫させてもらいました。ありがたや!
(もーちょい早く春先に声かけてくれればもっともってってよかったのに!とまで言ってくれるありがたさっぷり…)
今回の蒸留ターゲットは茶色く枯れた"枝葉"なので、葉っぱが完全に散り落ちたタダの枝(木材only)だけの蒸留とならぬよう、昨冬に折れたと思しき葉っぱがついた枝のみを収穫します。
(ウエスタンレッドシダーでは木材から精油をとっているので仲間樹木のニオイヒバ木材からも試したさはある)
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ここにも。
枯れ枝も1、2箇所だけではないので、剪定肩代わりの気も組んでできるだけ枯れ枝は収穫します。
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今回枯れ枝を回収していると、今まで見たことがなかったニオイヒバの松ヤニを目撃しました。
あ、ニオイヒバでも松ヤニは一応出るんだ…!という新たな発見。
松ヤニは流動性を持つために精油が溶け込んでいるので精油が回収できる素材部位だったりします。(フランキンセンスやベンゾインと同じく)
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素材の搬出能力をグレードアップしたので
一度の収穫でそれなりの素材量を運び出せるように!
■蒸留準備!
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素材処理時、生素材のニオイヒバより香りが強くは立っていなかった
蒸留器を導入した1年目は完全に庭バサミで枝もろとも素材細切れにしていたので毎回手がぶっ壊れそうになってましたが、電動粉砕機を導入してから随分と体のケアができるようになりました。
おまけに処理にかかる時間が大幅に短縮できてるのでありがたいもんです。
反面、木質の枝もろとも粉砕するので意図せず木質素材の割合が上がってしまうのがネックだったりします。
(葉っぱは硬さがないため迂闊に粉砕機に入れられない)
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バケツから溢れそうなほどの素材物量なんですが、枯れて乾燥しているのでそこまで重量には現れませんでした。
重量のわりに体積が大きいと収油率を落とすことに繋がるので気にかかるポイントではあったり。。。
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今回は枯葉と枝の木質チップがメインの素材なので蒸留時間は長めに3時間としました!
■蒸留結果は…!?
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気温差でセパレータが曇って見えにくいですが、驚いたのが開始早々それなりの量の精油が採れてしまったんですよ!
乾燥素材だったのにもかかわらず、意外と精油がたくさん抽出されているようでした!(枯れても揮発はそこまでしていない…?)
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今回は青々としたフレッシュな葉っぱではなく、茶色く枯れて乾いてしまってる枝葉を蒸留したので、折れて枝が枯れ上がったと同時に精油が揮発離散してしまっていると思っていたので精油抽出量には全く期待していなかったんですが、、、
意外にもめっちゃ採れてしまいましたねぇ!!これには正直驚き…!!
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量が採れてしまったので今回100mLボトルに保存しました。
目測で計測しておよそ25mLの抽出とみました!
この時ピペットを落として割ってて正確な計測ができなかったんですよ…トホホ
乾燥素材から精油を得たんですが、思いのほか黄色味が強くはないんですよね。ニオイヒバの精油は枯れ上がっても割と残り続ける説が浮上。。。
1.収油率 - EO Yield
収油率計算をしはじめてから初のニオイヒバ蒸留となるので過去のフレッシュ素材との比較はできませんが、今後の蒸留に備えて枯れ枝葉で先に収率を計算しておきます。
(というか北海道森林室の資料に4%って収油率載ってたんだよな…)
抽出量[ 25ml ]÷ 素材重量[ 3852g ]100 = 0.649%
まぁなんの比較をしないのもブログとしてアレなんで、、、
ヒノキ生葉っぱの収油率▶︎1.466%
青森ヒバ生葉っぱの収油率▶︎0.746%
となると、素材重量のわりには比較的収率は落ちてるのかもしれません。
いや、本当にフレッシュ素材verと比べてみないと言えたことじゃなんですが…
2.香りとか - EO Scent
フレッシュな生葉から抽出したニオイヒバ精油は強い甘さとウッディな香りが鼻に刺さるほどの強烈な匂い(恐らくβツヨンのハーバル・刺激的なアロマ)があるのですが、今回の枯れ枝葉素材ではツンとくるトップノートな部分はかなり和らいでいる印象のアロマでした。やはり揮発しやすい強い香りを持つ軽い成分は時間経過により先に離散してしまっているようでした。
そして反面、甘さがいくらか減りほろ苦いようなウッディな香りが特徴なアロマになっていました!
個人的には、甘く独特な強い香りがイメージされるニオイヒバ精油ですが、その個性がいくらか引き算されてしまったような印象を持つ精油になりました。
■総評!
本来といいますか通常、生葉っぱの状態で精油を得るニオイヒバ/ホワイトシダー精油ですが、ウッディノートを強めようとして今回枯れた枝葉を試験蒸留してみました!
が、生素材蒸留のときと枯れ枝素材のときとで、香り自体にそこまで大きな変化はありませんでした!
なのでアロマテラピー的視点でみてみると、ニオイヒバ精油の香りを楽しむならば甘さがあって心地よく感じられる生素材から得た精油のほうが利用価値は当然高いと思っています!
蒸留結果としても、枯れ素材と生素材とではそこまで香り・アロマに強い変化を生み出せなかったので、ニオイヒバは大方生素材から精油をGETするに越したことはないんだろうなぁ〜という感想でっす!
まぁさらに切り込んだことを書くと、アロマテラピー以外の利用法としては、着目すべき人体の保湿効果があるだとかないだとかって噂を聞いたりしてます。(論文みっけてない)
あとはまぁこの前にムネアカオオアリを用いた精油各種の殺虫効果を検証しました。
ニオイヒバはある種虫除け香料として活用ができそうなのです。
ではでは、ということでここにて筆を置きます!
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