山中鹿の助

信州の山の中で平和に暮らしています。本を読まないと生きていけません。好きな作家は村上春樹さん、夏目漱石先生。COTEN CREW。noteは読書感想ノートを書きます。たまにオンライン読書会をやってます。

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信州の山の中で平和に暮らしています。本を読まないと生きていけません。好きな作家は村上春樹さん、夏目漱石先生。COTEN CREW。noteは読書感想ノートを書きます。たまにオンライン読書会をやってます。

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#001 『1%読書術』 本には人を変える力がある

『1%読書術』 この本を読むことになったきっかけは、著者のマグさんのTwitterを見たことでした。 マグさんの8年越しの夢がかなった初出版の作品であること。 そして、マグさんが読書コミュニティ・Lectioを立ち上げることも知りました。 本を読むのは楽しい! 自分にとって本を読むことは学生時代から好きなことでした。 その都度、自分の悩みや課題を解決するために本を読み、また興味のあるテーマが頭に浮かぶたびに本を読んでいました。 特にコロナ禍が始まってからは徐々に生活の中

    • #020 「詩を書く少年」/三島由紀夫 読書ノート〜

      2023年9月のLectioの純文学読書会にて、三島由紀夫の『詩を書く少年』という短編小説を読みました。 今回、自分が読んだ時の感想について書いておきたいと思います。 読んでから感想を書くまで大分時間がかかったなと思います。忙しかったのもありますが、色々考えることが出てきて中々言葉にするのが難しかった…。 この前月には、同じく三島由紀夫の『海と夕焼』を読みました。そこでは、信仰や奇跡の待望とその現実による挫折が描かれていました。作品の語りはその挫折を「不思議」と表現してい

      • #019 世阿弥の「離見の見」の深み

        世阿弥の「花鏡」(舞声為根)を読んでみた。 世阿弥は「離見の見」を教えていた。 自分の肉眼では、見ている自分を見ることはできない。 観客席の客が見ているように、同じ心になって、心眼で自分を見ようとする。 「見所同心」 「見所同見」 僕は、世阿弥の言っていることをつかむために、虚空を見つめながら考えた。 言葉だけで理解しようとしても、上滑りするだけのように思えたから。 想像をしてみる。 舞台に自分が立っている。 それを観客席から見つめている。 自分とはあそこにいながら

        • #018 『Remember記憶の科学』/リサ・ジェノヴァ (著) 〜「記憶」の本質とその不完全性と、美しさ。

          『Remember記憶の科学』リサ・ジェノヴァ (著)   こちらの本を読み終えました。 すごく興味深く読み通すことができた。 「記憶」に関する科学的な視点で書かれた一般書としては、かなり優れた内容だと思います。 なぜ「記憶」に関するこの本を読もうと思ったか。 それは、僕が所属する読書コミュニティLectioの純文学の読書会にて、村上春樹さんの『ノルウェイの森』を読んだのがきっかけです。 『ノルウェイの森』の冒頭は、主人公のワタナベ君による語りによって物語が始まります

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        #001 『1%読書術』 本には人を変える力がある

          藤井風の「花」って曲いいな。 別に老いて枯れていってもいいか、って気分になる。 しわしわに萎れた花束くらいに思ってりゃいいか、と。

          藤井風の「花」って曲いいな。 別に老いて枯れていってもいいか、って気分になる。 しわしわに萎れた花束くらいに思ってりゃいいか、と。

          #017 映画「ニュー・シネマ・パラダイス」感想ノート〜映画の魅力は「言葉じゃない」んだな

          映画について感想ノートを書いてみようと思います. 作品は『ニュー・シネマ・パラダイス』です. 何故,この作品かというとたまたま,Spotifyの「超相対性理論」というコンテンツを聴いていて「ニュー・シネマ・パラダイス」についてパーソナリティの深井龍之介さん,荒木博行さん,渡邉康太郎さんがそれぞれ感想を述べる回を聴いていたからです. この回ですね.↓ 僕は深井龍之介さんのCOTENラジオのファンで,そこからの流れで超相対性理論というコンテンツも知ることになり,過去から遡っ

          #017 映画「ニュー・シネマ・パラダイス」感想ノート〜映画の魅力は「言葉じゃない」んだな

          #016 「海と夕焼」/三島由紀夫 読書ノート〜「夕闇」=「無常」に対峙する文学

          Lectioの純文学の読書会のために,今回初めて三島由紀夫の短編小説『海と夕焼』を選書しました. 忘備録的な感想ノートを書いておきたいと思います. 『海と夕焼』は三島由紀夫の自薦短編集『花ざかりの森・憂国』(新潮文庫)に収められているものを読みました. 僕にとっての三島由紀夫って,正直言って,かなり難しい作家だという印象になります.学生時代に『金閣寺』を読んで,これはすごい作品だと思いました.何というか比類なき完成度とテーマの異様さが感じられ,これは紛れもない「芸術」だと

          #016 「海と夕焼」/三島由紀夫 読書ノート〜「夕闇」=「無常」に対峙する文学

          『オブジェクト指向UIデザイン』という本を読んでいる. 「オブジェクト指向」って概念に興味があって読み始めたけど,すげえ面白い. 別にプログラミングとかデザイン開発とか関係なく発見あるな

          『オブジェクト指向UIデザイン』という本を読んでいる. 「オブジェクト指向」って概念に興味があって読み始めたけど,すげえ面白い. 別にプログラミングとかデザイン開発とか関係なく発見あるな

          #015 『詩の教室』/松下育男 読書ノート〜「言葉以下の世界」の手触りを求めて

          『詩の教室』松下育男 この「詩」についての本をどうして読むかというと,今,三島由紀夫の「詩を書く少年」という短編小説を読み考えていて,「詩」とは何かという自問に初めて相対しているからなんです. 「詩」…,奥深いものです.そして幅が広い.「詩」について考えることは言葉の根本について考えることになっちゃうからなんだと,段々気づいてきました. この『詩の教室』は詩人である松下育男さんが詩を読むことや書くことについて平易に教えてくれる本です.松下さんは子供の頃から詩を書いていたけ

          #015 『詩の教室』/松下育男 読書ノート〜「言葉以下の世界」の手触りを求めて

          #014 『今を生きるための現代詩』/渡邊十絲子 読書ノート〜やばいくらい…「詩」は面白い.

          『今を生きるための現代詩』(渡邊十絲子 著)を読んだのは,ふと「詩」について知りたいと思ったからです. きっかけは,Lectioの純文学読書会で三島由紀夫を扱っていて「詩を書く少年」という短編を課題作品として読むことになったからです. 昔,三島由紀夫の文学についてイメージしていた時には全く考えもしなかった点について,今ひっかりを見出すようになっている.その一点として「詩」ということがあります. 三島由紀夫の文学表現,創作活動にとって「詩」という要素が決定的に大事な部分な

          #014 『今を生きるための現代詩』/渡邊十絲子 読書ノート〜やばいくらい…「詩」は面白い.

          #013 『バタイユ入門』/酒井健 読書ノート〜文学作品を読むことの祝祭性へ

          何故今,ジョルジュ・バタイユの入門書を読もうと思ったか. その理由は三島由紀夫からの繋がりだ. Lectioの純文学読書会で三島の「海と夕焼」を読んだり,東大全共闘の学生との討論のドキュメンタリーを動画で見たりして,三島由紀夫のあの割腹自殺はどういう思いで選ばれていった行動なのかをずっと考えている そんな中,『太陽と鉄・私の遍歴時代』(三島由紀夫)を読んでいると,バタイユの名前が出てきた.そうか,バタイユかあ…と思った.そのような流れで何となくこの『バタイユ入門』を読んで

          #013 『バタイユ入門』/酒井健 読書ノート〜文学作品を読むことの祝祭性へ

          #012-4 「駈込み訴え」/太宰治 読書ノート④〜文学はユダ的なものに,深く寄り添う

          Lectioの純文学の読書会にて先日,太宰治の「駈込み訴え」を読みました.読書ノートとして感想や考えたことを備忘録的に書きたいと思います. 前回③では,イエスもユダも「寂しさ」を根底に抱えて生きているという点で「同じ」存在ですが,信仰によって「寂しさ」を乗り越えようとするイエスの在り方は,ユダの他者依存的に寂しさを慰めようとする在り方とは根本的に違う,ということを読みました. 前回③の読書ノートの最後に僕は「もう一つ,引っかかる点がある」と書きました.それがまだモヤモヤし

          #012-4 「駈込み訴え」/太宰治 読書ノート④〜文学はユダ的なものに,深く寄り添う

          #012-3 「駈込み訴え」/太宰治 読書ノート③〜人と人は「同じ」だけど「同じ」ではない.

          Lectioの純文学の読書会にて先日,太宰治の「駈込み訴え」を読みました.読書ノートとして感想や考えたことを備忘録的に書きたいと思います. 前回②の記事では,「駈込み訴え」を読む前に聖書についての予習のために読んだ教科書の『NHK 100分 de 名著 新約聖書 福音書 2023年 4月』(若松英輔.著)も参考にしながら,聖書にも文学作品にも共通する言葉の隠喩(メタファー)表現について考えました. どちらも言葉から実体的な意味だけではなく,見えないものを見ようとする言語感

          #012-3 「駈込み訴え」/太宰治 読書ノート③〜人と人は「同じ」だけど「同じ」ではない.

          #012-2 「駈込み訴え」/太宰治 読書ノート②〜聖書は文学作品に似ている!(いや逆か?)

          Lectioのゆるい純文学・古典・教養書の読書会にて先日,太宰治の「駈込み訴え」を読みました.読書ノートとして感想や考えたことを備忘録的に書きたいと思います. 前回①の記事では,「駈込み訴え」を読む前に聖書について予習をしたこと.一神教の神との対話と,日本的な世間の空気を読む文化との根本的な違いについての発見を書きました. 他にも聖書の予習のために読んだ本があります. 『NHK 100分 de 名著 新約聖書 福音書 2023年 4月』で,講師の若松英輔さんによる解説がめ

          #012-2 「駈込み訴え」/太宰治 読書ノート②〜聖書は文学作品に似ている!(いや逆か?)

          #012-1 「駈込み訴え」/太宰治 読書ノート①〜大人になると,「宗教」もやっぱり知りたい

          Lectioのゆるい純文学・古典・教養書の読書会にて先日,太宰治の「駈込み訴え」を読みました.読書ノートとして感想や考えたことを備忘録的に書きたいと思います. この短編小説を選書したのは,その前の読書会で読んだ「ヴィヨンの妻」の作中の「神」という言葉を考えているうちに,太宰治にとっての「神」とか信仰ってどういうものなのか,考えたくなったからです.そこで思い出したのが,学生時代に読んだ記憶のある短編小説「駈込み訴え」でした. 「駈込み訴え」は新約聖書を題材にしています.イエ

          #012-1 「駈込み訴え」/太宰治 読書ノート①〜大人になると,「宗教」もやっぱり知りたい

          #011 『スマホ時代の哲学』 読書ノート

          はじめにLectioの読書会にて「哲学」なる分野に触れてみようと思いました. 選んだ本は,『スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険』谷川嘉浩 著 です. 本好きな人が多く参加している読書コミュニティLectioの中でも「哲学」を読み慣れている人は少ないだろうと想像していましたが,色々聞いてみると「哲学」はやはり簡単には手が出せないジャンルのようです. 今回は『スマホ時代』という現代的なキーワードにも興味を抱いたこともあり,たとえば,よくある『西洋哲学入門』などよりもこ

          #011 『スマホ時代の哲学』 読書ノート