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「ONLY PLACE WE CAN CRY」銀色夏生

「ひとつのこらず君を
  悲しませないものを
  君の世界のすべてにすればいい
  そして君は途方に暮れる」



「ONLY PLACE WE CAN CRY」銀色夏生


モノクロームの写真と銀色夏生さんの言葉の旋律が、自分の中に隠してきた淋しさとシンクロして、ため息ばかりついていたグレーの感情を琥珀色に染めてゆく「ONLY PLACE WE CAN CRY」


もう戻ることができない場所
もう出会うことはないきみ
成就しなかった想いは
美しい雨となり 乾いた過去を
湿らせます


あの頃の気持ちが思い出せない

はじめて出会って ときめいて

すこしでも長く すこしでも近くと

あの人のことばかり考えていた

顔を見てるだけだったときは

ひと言でいいから話したいと思った

すこし話せるようになると

友だちでいいからいつもそばにいたいと思った

友だちになれたら 今度は好きになってほしいと思った

好きになってもらえたら もっともっと好きになってほしいと思った


はじめの頃 目と目があった時のときめきに

今はキスさえ追いつかない


消えていくものばかり好きになる


ピントのぼやけたモノクロームの写真から、いつかの哀しさがくっきりと映し出され、零れ落ちる感情が言葉と言葉をつなぎます。


わたしのこころのもつさびしさは
あなたのこころのもつさびしさと
どのように違うでしょうか
そして
どのように同じでしょうか


汲めどつきない流れのように
ひとの想いは果てがなく
どこまでこころが近づけば
安心するのかと思います


ただつよく 抱きしめてくだされば すむことです



たしかに こんな気持ちがあったと記憶しています。


いつまでも どこまでも
進んでいったらどうなるだろう


今よりもよくなっていただろうか?
それとも……


今は 考えるのをやめておこう


やさしさを くださいな
この道が どこまでも


やさしさを くださいな
どこまでも 続くなら


明日が夢であったのに
今はあの頃が夢なんです


あの頃がふたりのバイブルでした


いつか もういちど 
あの瞬間に 出逢えるだろうか



【出典】

「ONLY PLACE WE CAN CRY」 銀色夏生 角川書店


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