「わかりやすさの罠」 池上彰
「「罠」とはつまり、「わかったつもり」になってしまうということです。」
「わかりやすさの罠」 池上彰
池上彰さんは、この本を書こうとしたきっかけがありました。
テレビ等で、できるだけニュースをわかりやすく解説してきたわけでありますが、手応えがあった一方で説明を聞いて納得、それで終わりという人が結構多くいたからなんだそうです。
ニュースの解説を見た人たちが、そこから深く掘ってゆき、もっとニュースについて知ろうとか、勉強しようとか、行動するきっかけには至っていないということなんですね。「わかりやすかった、良かった」で終わっている。
「これでいいのかなぁ?」と思い悩みはじめたことが、この本を書くきっかけになったと語っています。
もっというと、「わかりやすさ」が思考停止にもなり得るということなんです。
アメリカ・トランプ大統領のことを例に挙げています。
世の権力者や政治家は、世論を自分たちの思う方向に向けるために、あらゆる手法を用いようとします。
「わかりやすさ」もその一つ。
そういう意味で、新聞の重要性・正確性は共感するところでありました。
とくに
インターネットだけを見ていることの怖さも感じていたところでした。もちろん情報の速さや、手軽に検索できたり良い利点もたくさんあります。
ただネットの情報だけを見ていると、池上さんも書かれているように、自分の知りたいこと、心地いい情報だけが集まってきて、視点が偏る危険性があるということ。
情報の手軽さや速さとは反対に、新聞や書籍には校閲という情報の正確さを担保する作業があります。
校閲は誤字脱字のチェック、文章の不備がないか事実関係や意味に間違いがないかどうかの綿密な確認を経て世に出てきています。
驚いたのは、新聞では100人、200人といった人数で記事をチェックしているのだそうです。
新聞も最近は立場の違いが二極化しているようです。できることなら新聞も2紙以上読み比べることを薦めています。
要するにバランスが大切です。バランスをとりながら知る力をつけていくと、「罠」に陥ることを回避できるでしょう。
池上さんは、書店に行かない日はないというほど書店に行かれているそうです。
新聞だけではなく、書籍からの情報もかなり入れられているのでしょうね。
池上さんは、新書を薦めています。
新書は「気軽に学べるカルチャーセンター」のようなものであると語って
います。
カルチャーセンターでの5回分の情報量が、800円から1200円ほどで得られます。お得である上に、校閲を経て世に出ているので安心感もあります。池上さんは新書を大量に購入しているそうですよ。
池上さんにとっての「新聞」「本」「書店」は
あと
「罠」に落ちないためには、自分で考えること。
お風呂に入っていて、良いアイデアが思いついたなんて話をよく聞きます。池上さんは、それも考える段階があったことが前提だと語っています。
いろんな視点から知る力を鍛え、それについてよく考えて「知識」にすることが、わかりやすさの「罠」に陥らない「術」なのでしょうね。
【出典】
「わかりやすさの罠」 池上彰 集英社