「頭は「本の読み方」で磨かれる」 茂木健一郎
「つまり「本を読む」ということは、「自分の経験を増やす」ことなのです。」
「頭は「本の読み方」で磨かれる」 茂木健一郎
脳科学から見た「読書」というものはどのようなものなのか?「読書」は脳にどういった影響をあたえるのだろうか?
それを知りたくて、茂木健一郎さんのこの本「頭は「本の読み方」で磨かれる」を手にしました。
脳科学者であり、読書家の茂木さん。
「はじめに」でこう言い切っています。
「本なんて必要ない」と思っている人は、いずれ人生の深みや喜びに差がついて、絶対に後悔することになる。
そこまで言うからには理由(わけ)があるのでしょう。まず、本を読むとどんないいことがあるのかについて。
それは、読んだ本の数だけ、高いところから世界が見える、ということに尽きます。
読んだ本の数だけ、足の下に本が積み重なっていくイメージです。
と茂木さんは語っています。
たとえば100冊読んだら、100冊分の本を重ねた上に立った景色が見えるということです。(あくまでそんなイメージで、今よりも高いところから視界が開けるといった感じかな?)
1000冊だともっと高いところから見ることができる。そのように見える世界が今までとは違って見えて、より遠く、より大きな視点で見渡せるようになるということなんですね。
もちろん横にも広げることができるので、足場を固めることができます。縦にも横にも幅が広がるのです。
つまり「本を読む」ということは、「自分の経験を増やす」ことなのです。
(中略)
すごくないですか?
本を読むということは、太宰治やドストエフスキーと何度も夕食をともにするようなものなのです!
すごいですよね。読書は自分の意識ではなく、無意識の領域で知らず知らずのうちに経験値を重ねていっているのです。気づいたら資産が増えているといった感じでしょうか。
そして、脳に関することについて。
脳は、大人になっても成長するのでしょうか?
と茂木さんはよく聞かれるそうです。
その答えは、「何歳になっても、脳は鍛えることができます」。
と茂木さんは答えています。
脳は「快楽」を基準に成長するそうです。
「やったー!」
「よかったー!」
「うれしい!」
と感じると、脳はまたやりたいと思うようになるんですね。
うれしいことがあると、脳の中に「ドーパミン」という物質が放出されます。これが脳を鍛えるのです。
まして、自分が無理だと思っていたことができたら、さらにドーパミンが放出されるのです。
苦労して、それが報われたとき、人間の脳はいちばんドーパミンを出すのです。
したがって、本を読むことが苦手な人が、1冊本を読み切ったらどうなるでしょうか?
ドーパミンがたくさん、たくさん、放出されます。脳が鍛えられ、本がさらに好きになることでしょう。
読書が苦手だと感じている人は、いきなりページ数の多い分厚い本や難解だと思われる本よりも、読みやすい本を1冊読み切ることからはじめてみるのがいいでしょうね。
本が好きな人は、今まで読んでこなかったジャンルや今よりも難しい本にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
本は1冊が出版されるまでに、大変なエネルギーや時間や人が関わっています。
著者は自らのすべての経験を動員して、本を書いています。編集者や校閲者の細かいチェックを通り、出版社の最終的なチェックを通りこして本は出版されています。
でも
「今はインターネットやSNSがあるじゃないか!」と思われるかもしれません。
しかし、本ほどに何人もの知恵が凝縮され、練り上げられた文章はないのです。
と茂木さんは、本を読む価値を挙げています。それは鍛えられた文章であると。
やはり、本を読む最大のメリットはこれではないでしょうか。
インターネットでゼロから、自分で検索窓にキーワードを入れて勉強するとなると途方に暮れてしまいますが、世界最高峰の知識を持った人が書いた一冊の本であれば、ある意味手軽に、まとまった知識を手に入れることができるのです。
かしこい人の一万時間の経験が、たった一時間の読書に凝縮されているのです。
すごいと思いませんか?
自分では絶対に経験できないことが、本を読んで想像し、映像化し、自ら経験しているような感覚になるのは、とても貴重なことです。
「読書」は自分の血となり肉となる。それに加えてドーパミンも放出され、脳も感情もうれしいと感じるのですから、すごいと思いませんか?
【出典】
「頭は「本の読み方」で磨かれる」 茂木健一郎 三笠書房