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「読書進化論」 勝間和代
「読書とは、イメージトレーニングに近いもので、私は「本を読むことは著者の体験を、読者が疑似体験すること」としつこく言っていますが、たくさん本を読むほど、それが自然にできるようになります。」
「読書進化論」 勝間和代
この本は2008年に初版が出ています。10年以上前の本ですが、ウェブの出現によって「何が変わったのか?」という視点で読んでみて、おもしろい本でした。
レコードがCDに変わり、レコードが衰退してしまったように、ネット書店や電子書籍によって、町の書店や紙の本が衰退につながったか?
一時期は町の本屋は減りましたし、電子書籍が勢いを増しました。今現在はネット書店も町の書店も進化しているように思えます。
また、紙の本を好む人は依然多いですし、町の本屋の魅力も年を追うごとに上がっているのではないでしょうか?
何よりも本に情緒を感じられるのは、紙の本だと思います。紙の質感、手触り、頁をめくる音、本の匂い。
勝間和代さんはウェブで記事を読みますが、本の読書推奨派でもあり、本は欠かせないと語っています。
また
ウェブというテクノロジーが現れたことによって、読書の仕方が抜本的に変わったのだと、勝間さんは言います。
どう変わったのか?
ウェブができる前の本は、「本」というものだけの閉じられたコンテンツで完結していましたが、今は、ウェブやSNSやメール、いろんなケースで書評をとったり、無料コンテンツで情報をとったりするようになったんですね。
「ウェブと読書は、相互補完的なものだ」と語っています。要はうまく使い分けるといいそうです。ウェブによって、「読者と著者の距離がどんどん近づいてきた」とも勝間さんは語っています。
そして
ウェブで情報を取る場合と本から情報を取る場合について、本を読むことの方が「人を進化させる力がある」ことを、勝間さんはこの本の中で掘り下げています。
ウェブよりも本が優れているのは、本は編集されているということです。
一方
ウェブコンテンツは、書き手以外の編集者の手を経ていません。
したがって
ウェブサーフィンするのと書店サーフィンするのでは、書店サーフィンする方がはるかに情報収集の効率がいいのだそうです。本の方が深みや質の高さを得られると。
そこから、読書の普遍的な魅力と効用を勝間さんは語っています。
読書とは、イメージトレーニングに近いもので、私は「本を読むことは著者の体験を、読者が疑似体験すること」としつこく言っていますが、たくさん本を読むほど、それが自然にできるようになります。
また、本のいいところに、「自分の抱えている課題をあぶり出してくれる」ということがあります。
たとえばこれまで本を読んでこなかった人でも、書店に行って、自分のもやもやした気持ちは「何なんだろう」と思って書棚を眺めてみると「あ、こういうことなのか」、とことばにしてもらってスッキリ、という経験があるのではないでしょうか。
自分でいろんな経験をすることが一番いいのですが、人間が生きている間に経験することには限界があります。
それがどうでしょう。勝間さんが述べているように、著者の体験を疑似体験できるとしたら?
たとえば100冊読んだとすれば、100人分の「著者の体験」を疑似体験できるのです。
実際の著者の体験そのものではありませんが、その体験をリアルに想像でき、あたかも体験したかのような感覚になれるのです。
亡くなった人や、外国の人や、異性の気持ちや、歴史上の人物の哲学や、俳優、作家、スポーツ選手、政治家、医者、教師、さまざまな人たちの経験や知識に出会えるんですね。
僕が本を読んでいて楽しいのは、この感覚なんです。自分の想像する人物を設定でき、その人物の服装や声や容姿、風景や色彩や匂いまでも自分の感覚で想像できる。そうして、著者の体験に迫れるのです。
これら「読書の本質」については、ウェブが出現してからも「依然変わっていないのではないか?」との読後感を持ちました。環境やツールや使い方は変わっていくかもしれませんが、本質は変わらないということ。
ただ、多くの人が読書よりも、ウェブ、スマホだけを見ている率が高いという現実もあります。
この本にあった「本のキー・アイデア」
「本のキー・アイデア」というのは、一冊の中に少ししかなくて、凝縮されたアイデアのこと。読書はその凝縮されたアイデアさえつかめばいいと勝間さんは言うのです。
僕にとって、この本のキー・アイデア(「読書の真髄」)は、本をうまく利用する「読書他力本願」です。
私は決して、読書が人生のすべてだとは思っていませんし、読書が人生の何もかもの問題を解決する魔法の杖だとは思っていません。
自分の人生を切り開くのはあくまで自分が中心です。
ただ、自分だけではすべてのことはできないので、他者の力を上手に借りないといけないと思っています。
そんなときに、直接会うことはできないけれども、間接的に知り合って、アドバイスをくれるのが著者たちです。
こんなにいろんなことを考えさせてくれたり、疑似体験できたり、手軽に深く没頭できるツールは「本」が最強であると僕は考えています。
そして
「人生を豊かにしてくれる」ということにおいても、最強のツールであると思っています。
ぜひ、本を読めば読むほど「人生が豊かになるぞ!」と想像しながら、読書を楽しんでみてくださいね。
では・では・では~
【出典】
「読書進化論」 勝間和代 小学館新書